儲かっている人が6割?「比較可能な共通KPI」で見るネット証券4社のリターンとは
顧客本位の営業(フィデューシャリー・デューティー)への取り組みを進める金融庁は、2017年3月に「顧客本位の業務運営に関する原則」を策定・公表しました。これを受けてさまざまな指標や方針が公表・実施されていますが、大手インターネット専業証券(ネット証券)4社は、共同で共通の評価指標(KPI)に基づく投資信託の運用評価を発表しました。
共通KPIとはどのような仕組みであり、発表された内容がどのようなものだったのかを見てみましょう。
比較可能な共通KPIの開発に至る背景
フィデューシャリー・デューティーの取組方針にしたがって、多くの金融機関が独自の指針を策定・公表し、金融機関によっては顧客本位の業務運営を客観的に評価するため自主的な成果指標(KPI)を開発・公表してきました。しかし、自主的なKPIの評価基準は統一されておらず、金融機関を選ぶ参考指標としては使いにくいものでした。
「比較可能な共通KPI」の内容
金融庁が主導して比較可能な共通KPIとして開発されたのが、リスクとリターンの「見える化」を軸に、「運用損益」と「預かり残高上位20銘柄のリスク」、「預かり残高上位20銘柄のリターン」の3つで評価するKPIです。
運用損益別顧客比率
投資信託を保有している顧客について、基準日時点の保有投資信託に係る購入時以降の累積の運用損益(手数料控除後)を算出し、運用損益別に顧客比率を示した指標です。投資家が保有する投資信託について、購入してからどれだけリターンが生じたかを確認できる指標として採用されました。
ただし、現時点では金融事業者のデータ管理に係るシステム上の制約があるため、将来的により優れた指標に改善することが望まれています。
投資信託預かり残高上位20銘柄のコスト
投資信託預かり残高上位20銘柄のコストは、設定後5年以上の投資信託の預かり残高上位20銘柄について、銘柄毎および預かり残高加重平均のコストの関係を示した指標です。中長期的に、金融事業者がどのようなコスト負担がある商品を提供してきたかを見ることができます。
投資信託預かり残高上位20銘柄のリターン
投資信託預かり残高上位20銘柄のリターンは、設定後5年以上の投資信託の預かり残高上位20銘柄について、銘柄毎および預かり残高加重平均のリターンの関係を示した指標です。金融事業者がどのようなリターンを持つ商品を顧客に多く提供してきたかを見ることができます。
主要ネット証券が共同で発表した共通KPIによる投資信託のリターン
株式会社SBI証券、カブドットコム証券株式会社、マネックス証券株式会社および楽天証券株式会社(主要ネット証券)の4社は、共通KPIに基づくネット証券4社をあわせた運用損益顧客比率を発表しました。
2018年3月末時点の投資信託残高に対するトータルリターンは、63.8%が運用損益でプラスとなります。なお、投資信託には上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)、マネーリザーブドファンド(MRF)やマネーマネジメントファンド(MMF)などの公社債投信、私募投信、確定拠出年金・財形・ミリオンで買い付けた投資信託は含みません。
ネット証券4社のKPI算出の基準
SBI証券 | 2009年12月1日以降、SBI証券で保有している銘柄を対象としています。入庫した銘柄は、入庫日の基準価額または自己申告の取得価額で計算しています。 |
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カブドットコム証券 | 2013年6月28日以降、カブドットコム証券で新規買付かつ基準日まで継続保有している投資信託を対象としています。 |
マネックス証券 | 2013年7月1日以降、マネックス証券で新たに買い付けた(もしくは新たに入庫した)投資信託のみが対象となります。 |
楽天証券 | 楽天証券で投資信託の取り扱いを開始した、1999年8月30日以降の全期間に関して、楽天証券で保有している銘柄すべてを含みます。 |
まとめ
日本銀行(日銀)が発表する「資金循環統計」の見直しにより個人の株式投資が大きく減額されるなど、貯蓄から投資への流れが定着しているとは言えません。そのような流れの中でも、低コストのネット証券で投資信託を持ちつづけた人は半分以上の確率で利益を得られていることが明らかになりました。
金融庁では顧客本位の営業(フィデューシャリー・デューティー)を各金融機関に対して求めていますが、今回の調査結果はその努力を後押しすることが期待されます。
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