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日本株投資をするのに、なぜ米国経済を見るのか?

日本株投資をするのに、なぜ米国経済を見るのか?

今回は、日本株や日本円を見る際に、米国経済の確認がますます大事になってきたということについてご説明します。その際に、投資判断や投資戦略に役立つ統計知識についても解説いたします。

米国経済を見る必要

日本の株式を考える際には、当たり前のことですが、日本の経済統計を見る必要があります。以前のコラムで、中長期では国内総生産(GDP)、そして中短期では景気ウォッチャー調査(街角景気)などを見ることにより、相場がどのような経済状況を反映しているのかが推測できると述べました。

ただ、日本株への投資については、これだけでは不十分です。市場の先行きについて一定の予想を立て、そのうえで、どこで買うのか、そしていつ売るのかというシナリオ(投資戦略)をつくるためには、他にも大事な要素があります。その筆頭が、米国経済です。

もっとも、米国経済が日本経済に影響を与えていることに、異論をはさむ人はいないでしょう。ただ、どれくらい影響を与えているのかについては、ほとんどの人が、漠然としたイメージしか持っていないのではないでしょうか。ところが、多くの人が考える以上に、その影響度は大きいのです。正確に言えば、時とともにその影響度が大きくなっているのです。

投資で使う相関係数とは

(図1)相関係数の見方

そのことを確かめるために、ここでは相関係数という統計手法を使います。

相関係数は、二つの銘柄や市場などについて、その動きの関係を表す指標です。例えば、日本株とドル円がどれくらい似た動きをしているのか(あるいは、似た動きはしないのか)、また日本株と米国株はどの程度連動して動いているのかを考える際に使います。すなわち、相関係数は、二つの銘柄や市場について、その類似度を計る指標と言えます。

なお、相関係数は、エクセル(Excel)ファイル上で計算することができます。このコラムでも、この方法で相関係数を求めています。

さて、相関係数は+1.0~-1.0、すなわち+1.0から0をはさんで-1.0までの間の数字で表されます。詳しくは図1の通りですが、+1.0に近ければ、二つの銘柄の価格はほぼ連動しているということです。銘柄Aの価格と同じように銘柄Bの価格も上がるということです。この性質は、「極めて強い相関がある」と言われます。逆に、-1.0に近ければ、二つの銘柄の価格は反対方向に動くということです。銘柄Aの価格が上がるのに逆行して、銘柄Bの価格が下がるという性質は、「極めて強い負の相関がある」とか「極めて強い逆相関」と言われます。

私見ですが、投資戦術や投資判断で相関係数を使うとき、相関係数が0.4以上なら、一応AとBは連動しやすいと見ます。そして、0.7以上ならかなり連動すると見ます。そして、0.9以上なら、ほとんど連動していると見ます。一方、0.4未満なら、連動性はあまりなさそうだと判断します。さらに、0.2以下ならば、両者の動きは無関係(連動していない)と見ます。

なお逆相関は、正相関をひっくり返した形で見ます。株価と金利は、逆相関になりやすい例です。相関係数のイメージをつかむために、例を二つ挙げます。

(図2)円とカナダドル
(図3)円とポンド

ドル/円と米ドル/カナダドルの相関係数は0.02でした(過去2年の週次データによる)。相関係数からは、相関がほぼないと判定さらます。実際、グラフを(図2参照)みても、両者の連動性が低い様子がうかがえます。

一方、円とポンドの相関係数は0.7に近い水準で、統計的にはやや強い相関があると言えます。グラフ(図3参照)でも、連動している部分が多く見られます。

日本株・ドル円と米国市場の相関性

つぎに、日経平均株価やドル円相場に関して、長期のデータを使って、相関係数を確認してみます。

次の表(図4参照)は、日経平均株価とドル円相場、米国株式(S&P500)と米国国債利回り(満期まで2年と、満期まで10年の米国債の利回り)との相関係数を示しています。データは、2000年の初めから2017年4月までの月次データです。

(図4)各種市場との相関係数

日経平均株価とドル円相場の相関係数は0.48ですから、一応の相関があると言えます。ドル円相場の値が大きくなる時(=円安になる時)、日経平均株価が上昇する場合が多いことを示します。
次に、日経平均株価と米国株式の相関係数は0.78ですから、両者には強い相関があります。両者は、おおむね似た動きをしていたと言えます。

しかし、日経平均株価は、米国国債とはほとんど連動性がありませんでした。相関係数によれば、米2年債利回りとは弱い相関、また10年国債とは相関なしでした。

一方、ドル円相場は、米国株式の動きとはほとんど似ていませんが、米国債とはひとまず相関ありでした。米国の金利が上がれば、円相場が安くなる場面がそれなりにあったということです。ただし、全般的に見れば、日経平均株価と米国株式の動きはかなり似ているほかは、それほど目立った連動性はなかったと言えます(なお、米国の2年債と10年債の相関は高水準でした)。

相関性が高まる

ところが、過去5年に絞ると、相関度合いはかなり変わってきます(図5参照)。

(図5)各種市場との相関係数

日経平均株価とドル円相場の相関係数は0.96ですから、両者はほぼ連動しています(図6参照)。過去17年のデータでは0.48でしたから、様変わりです。

(図6)日経平均株価とドル円相場

また、日経平均株価は、米国株式とも極めて高い相関性を示しています(相関係数は0.92)。これも、過去17年のデータである0.78に比べて、相関度が高まっています。加えて、日本株は米国の2年国債利回りとも強い相関性(相関係数は0.74)があります。

また、ドル円相場と米国市場の相関係数も全般に上昇し、米国株式や米国2年国債と類似した動きを示しています。これを見ると、日本株や円相場は、以前よりも米国株式や米国債で表現される米国経済の影響を相当に受けやすくなっているという見方ができるでしょう。

連動性が強まる背景

日本市場と米国市場の連動性が高まっている背景には、米国と日本の経済規模の「格差拡大」がありそうです。

(図7)日米のGDPの推移

グラフ(図7参照)は、米国と日本の名目GDPの推移を示しています(グラフは、国際通貨基金(IMF)のデータによる)。2016年のGDPは、日本の4.94兆ドルに対して、米国は18.57兆ドルとなっています。米国は日本の3.8倍です。

実は、2000年の時点では、両国のGDPは、日本の4.89兆ドルに対して、米国は10.29兆ドル。米国の経済規模は日本の2.1倍でした。その後、この経済規模の格差が3.8倍(2016年)にまで拡大したことで、米国の経済状況や政策が、以前よりも日本市場に強く影響するようになったはずです。そうであれば、日本市場が米国市場に一段と連動するようになったことは容易に想像がつきます。

さらに、IMFの予測では、2022年のGDPは、米国が23.76兆ドルであるのに対して、日本は5.37兆ドルです。今後の5年間で、両国の経済規模の格差は4.4倍にまで拡大すると見られています(2017年~2022年の成長率について、IMFが、米国は年平均2.0%であるのに対して、日本は同0.7%にとどまると予想しているため)。そうだとすると、今後についても、日本市場は、米国市場の影響を一段と受けやすくなることが想定されます。

だからこそ、日本の株式相場やドル円相場を見るときには、米国市場そしてその背景である米国経済の動きから、目を離すことができないのです。

<相場の徒然> ISM製造業には注目

それでは、現在の米国の景気をどのように考えるのか。参考になる指標に、ISM製造業景況指数があります。これは、米国の製造業の購買担当者に対するアンケートを基にして作成された指数です。この調査を実施しているのが、ISM(米国供給管理協会”Institute for Supply Management”)です。

購買担当者は、メーカーの中で、製品を作るための原材料や資材を調達する責任者です。購買担当者が原材料をどれだけ仕入れるのかは、その企業がどれだけ注文を受けているかによります。

また、担当者は、今後どのくらい注文を取れるかも予想しながら、原材料を購入するはずです。そうでなければ、買い過ぎてしまって原材料が在庫として積み上がりますし、逆に足りなければ製造が遅延します。さらに不足分を買おうとした時に、その原材料が値上がりしていれば、コストが上がって、損害を受けることもあります。

したがって、購買担当者は、適切な量を買うためには、受注量や資材価格を見るだけにとどまらず、将来の受注や資材価格の動きを想定するために、景気動向を予想することが必要となります。

そこで、このような製造業のプロの意見を集約すれば、有力な景気予想ができるはずです。ISM製造業景況指数は、この発想のもとにつくられた景気指標です。だからこそ注目に値するのです。

(図8)製造業指数と米国株式

グラフ(図8参照)は、2015年1月~2017年4月までのISM製造景況指数と、米国株価(S&P500)指数の動きを示しています。一見して連動していますが、実際に両社の相関係数は0.75であり、強い相関があります。

なお、株価と製造指数の相関性が強まっているということからみると、米国株価の動きの裏には、景気の動きがあると言えます。すなわち、現在の米国株式相場は、いわゆる「業績相場」に当たります。したがって、米国株価の行方を考えるならば、いまは、連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策よりも、景気動向に注目すべきでしょう。

むさし証券チーフストラテジスト、北海道大学新渡戸カレッジ・フェロー。北海道大学を卒業後、山種証券(現SMBCフレンド証券)に入社。エクイティ・デリバティブ取引のディーラーとなり、その後、世界最大の穀物商社カーギルでの日本株運用部長、みずほ証券エクイティ部のトレーディング担当部長などを歴任。一時、ベンチャー企業の立ち上げに参画し、上場を果たした。さらに、アジア中心に海外勤務を経て現職。北大でもグローバル人材の育成を行っている。法政大学経済学修士、日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会正会員。著書に、「デイトレード入門」「株式先物入門」「FX入門」「初めての海外個人投資」(いずれも日本経済新聞出版社刊の日経文庫)など。
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