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そもそもテクニカル分析は何だろう?

そもそもテクニカル分析は何だろう?

これまで、企業分析、そしてマクロ経済分析に関する基礎知識をお話してきました。そこで目を転じて、テクニカル分析を考えます。今回はまず、私自身の体験から、この分析方法の考え方を述べてみます。

不遇の時代

実は、テクニカル分析には、長らく不遇の時代がありました。

戦後の証券市場の復興期には、テクニカル手法は怪しい存在とみられていたようです。というのも、むかし、証券業界の大先輩から聞いた話では、東京証券取引所がある日本橋兜町の橋のたもとに「罫線屋」という商売の人がいて、通りがかる人を呼び止めていたのだそうです。罫線屋は、立ち寄った人に、罫線でみて値上がりすると判断した銘柄を教え、お金をいただくのです。ということで、投資家から見ても、罫線(チャート)は怪しい印象があったようです。

時が移って1980年代になっても、その状況は大きく変わりませんでした。そのころでも、日本では、テクニカル分析はマイナーな存在でした。

それどころか、テクニカル分析は、証券ビジネスのなかでは禁句でさえありました。例えば大手金融機関のファンドマネージャーにテクニカル分析の話をすると、「申し訳ないですが、テクニカル分析で、ファンドを運用できるわけがないじゃないですか」とか、「テクニカル分析で売り買いするということは委託者に説明できない」などと言われて、追い返される始末でした。 そのころのテクニカル分析のイメージは、星占いや手相などに近いものだったのです。

投資が科学になる裏で

投資が科学になる裏で

その背景には、「現代ポートフォリオ理論」があります。のちにノーベル賞を受賞したマーコビッツ氏が提唱したこの理論により、資金運用が職人芸ではなくて、科学になりました。一方、同受賞者のファーマ氏による「効率的市場仮説」により、チャート分析は無意味なものとみなされ始めていました。

さらに、1973年に、経済学者のブラック氏とショールズ氏が、オプションの理論式を導き出しました。これにより、投資が工学に近づきました。このように、資金運用(投資)は、科学や工学に裏付けられたことで、客観化します。客観化は、20世紀の世界の経済発展を推進した最大の功労者です。個人の職人技であり、師匠から弟子に受け継がれていた技術が、客観化することで、誰もがその業務を行うことが可能となりました。その結果、大量生産が可能になったのです。言い換えれば、科学の裏付けによる客観化が、世界的な工業化の原動力になりました。

同様に、投資も理論づけられて、客観化されます。その結果、個人のスキルに頼ることなく、会社という組織がそれをビジネスとして扱うことができるようになります。実際に、1980年代から、世界中で金融ビジネスが急拡大し、先進国の主要なビジネスにのし上がっていきました。

そうなると、チャートがゴールデンクロスしたから買うとか、グランビルの法則によれば売りだ、といった話が疎まれるのは仕方ないこと。理論で証明できないような非科学的な方法は、ビジネスには使えないということになってしまいました。

特に、その当時の日本は、経済大国として世界のなかでの存在感が高まり、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた時代です。経常黒字が積み上がり、さらにバブルでもあり、マネーが膨張。この巨額の資金の運用には、科学的な最先端の技術を導入しようとする機運が高まっていました。金融機関は、米国の大学院や投資銀行に若手社員を派遣し、そのような知識を吸収しようとしていました。

テクニカル分析のプロ

テクニカル分析のプロ

わたしも、そのような状況の中にいました。しかし、テクニカル分析について、違った見方をする機会に出会いました。

1987年に米国に行くと、証券会社で、テクニカルアナリストというタイトルの人に出会いました。その方は、業界でも超有名人とのこと。驚いたことに、執務室に入ると、四方向の壁のすべてに、大きなチャート(株や商品のグラフ)が張ってあったのです(それは、ポイント・アンド・フィギュア「P&F」のグラフでした)。このような光景は、日本の証券会社でも、運用会社でも見たことはありませんでした。

洗練された米国の証券会社に、テクニカルアナリストという仕事があり、その人がチャートを手で描いて、さらにそれを使って機関投資家の運用をアドバイスしていることに対して、私はショックを受けました。

その後、私は帰国して、株式先物のディーリング(証券会社の自己売買)に従事することになったのですが、テクニカル分析を重視した取引を行いました。米国での経験が、そうさせたのです。もちろん、最初は、ポイント・アンド・フィギュアでした。

私の経験では、このポイント・アンド・フィギュアは、トレンドが出やすいマーケット環境ならば、かなり有効でした。1980年代後半から1990年代前半は、バブルの生成から崩壊に至る過程でしたが、そこはまさに大きなトレンドが出やすい時代。このテクニカル手法は、実際に利益を生み出しました。

テクニカル分析が続いていた市場

一方、そのころでも、テクニカル分析が根強く存在している市場がありました。それは、外国為替市場です。証券市場に比較して、均衡価格に関する議論が錯綜(さくそう)している外為市場では、その時分でも、個人の能力や職人的な技術が重要視されていたからです。

マーケット・プロファイルという手法が人気でした。売買の累積分布に近いものですが、もみあい相場やトレンド相場を探る手法です。先物市場のフロアトレーダー(取引所で売買を執行しているプロ、場立ち)が、メモ代わりにつけていたチャートが発祥と聞きました。わたしは、少し研究はしましたが、実践ではあまり使わなかったと記憶しています。

そして、次に脚光を浴びたのが一目均衡表です。これも、外国為替市場でした。実は、このテクニカル手法の価値を見いだしたのは、外国のトレーダーだったそうです。

先行スパン、基準線、転換線、遅行線など怪しい(?)線が入り乱れたチャートは、漢字の「一目」という言葉とも相まって、日本人にとっては、昔の「罫線」の亡霊に見えたことでしょう。しかし、そのようなしがらみのない外国人の目には、このユニークな(他に類を見ない)チャートは、新鮮に映ったようです。もちろん、実際にこれが取引で有効だということこそが、外国のトレーダーに評価された最大の要因でしょう。

テクニカル分析の復権

その後は、テクニカル分析が復権してきます。それには、次のような背景がありました。

  1. ① 市場の効率性に対する疑問の広がり。
  2. ② PC、インターネットなど情報技術の革新により、チャートが容易に見られるようになったこと。
  3. ③ システム運用の発達。

まず、①のように考えられるようになった一つの要因は、効率的市場仮説に疑問を抱かせるような、市場平均を上回る成績をあげ続けたトレーダーが少なからずいたことです。これは、テクニカル分析の見直しにつながりました。

また、②については、誰でも、簡単にチャートが作れるようになったということを意味しています。それ以前は、チャートを描くのは大変な作業でした。そもそも過去の株価データを集めることも難しく、仮にそれが得られても、自分で作るということになれば、膨大な時間がかかりました。しかし、ネット環境が飛躍的に発展することで、1分足チャートさえも簡単に見ることができるようになりました。これは、必然的に、チャートへの関心を高めます。

そして③ついてですが、システム運用は当初、テクニカル的な売買のサインを使うものが主流でした。それだけに、テクニカル分析の研究が進みました。

テクニカルは実践が大事

テクニカルは実践が大事
ただ、いくつかの問題も指摘できます。

  • ○a テクニカル分析の大衆化・画一化は、テクニカル分析の精度を低下させないか。
  • ○b不十分な知識でテクニカル分析を利用することは、損失につながりやすいのではないか。

まず、○aについては、業者が提供するチャートをみんなが見れば、売買のタイミングが同じになるために、他人に先んじて売買し、利益を確保することができなくなるということです。それは、テクニカル分析がうまく機能しないということになります。

また、○bについては、チャートの安易な利用で、損をしてしまう懸念があるということです。かつては、チャートは手で書いていましたが、その過程で、チャートの意味や解釈の仕方を考えることができました。しかし、そのようなプロセスを抜きにして、出来合いのチャートを見れば、深い考察のないままに取引をしてしまうことが懸念されます。

したがって、簡単にチャートが手に入る時代だからこそ、あえて時間をかけて、その内容を勉強することが大事でしょう。

もちろん、このような環境の良い面もたくさんあります。例えば、さまざまな証券や商品について、すぐにチャートができることは、たくさんのチャートを見ることができることです。これは、投資家にとって大きなアドバンテージです。

私見では、テクニカル分析は、理論的な研究をある程度した後は、実践をともなった繰り返しが大事です。チャートは、たくさん見て、たくさん感じて、たくさん実践(あるいはシミュレーション)をしてみること、すなわち技術として使いこなすことが大切です。

テクニカルは自由で主観的・感情的なもの

さて、結局のところ、テクニカル分析とはなんでしょうか?

一般に、テクニカル分析は、過去の価格や出来高等などを観察し、特定のパターンを見つけて、将来の価格の動きを予想するものと考えられています。証券の本源的な価値の評価や、背景となる経済状況の分析により将来の価格を予想するファンダメンタルズ分析と区別されます。

しかし、私は、このような一般的な認識よりも、テクニカル分析は広い概念だと考えています。投資家が信じる手法は、ファンダメンタルズ分析でない限り、あまねくテクニカル分析だということです。

例えば、テクニカル手法に、フィボナッチ数を使った目標値の計算があります。その中で使われる0.618や1.618などの数値は「黄金比」とも言われ、エジプトのピラミッドや、ギリシャのパルテノン神殿のデザインに使われているとの説明がなされます。

さらに、人間の姿や、植物の葉の付き方にもこの比率が見られることから、黄金比(フィボナッチ数)が森羅万象を支配している。だからこそ、自然の一部であるマーケットの動きも、フィボナッチ数に従うのだという解説がなされます。

これに対して、話が飛躍しすぎだとの批判もあるでしょう。しかし、この論理を信じる人にとっては、信頼できるテクニカル分析手法の一つであり、取引のための重要なツールになっています。だとすれば、ある人にとって役に立つツールについて、科学的に妥当かどうかを議論しても意味がありません。

このように、テクニカル分析は、見方を変えれば、科学からさえも解き放たれて、極めて自由な存在です。そして、投資家それぞれが独自に、その有用性を感じるものです。すなわち、テクニカル分析は、自由であり、主観的なものであり、感情的なものなのです。

相場の徒然:役立たないがわかることも役に立つこと

むかし、先物ディーラーとして駆け出しのころ、仲間とテクニカル分析の勉強会をしていたことがあります。月に一度、土曜日の午後に、区民会館などリーズナブルな部屋に集まって、缶コーヒーを飲みながら話をします。メンバーは6~7人でしたが、それぞれが自分の得意とするチャートや、気になるチャートを持ち寄って、みんなでそれを批評し合うのです。

そこでは、一目均衡表の話もありましたし、P&Fの話もありました。また、インターネットがそれほど普及していな時代に、すでにシステム運用を始めている人もいました(もちろん、プロのファンドマネージャーでしたが)。

その中で一番盛り上がったテーマは、占星術(アストトロジー)を使った相場分析です。木星の位置がここにあるから株価は上がるとか、火星が逆行するから相場は不安定になるとか、真剣に議論をしていました。

基本的には、テクニカル分析が好きな人は、ロマンティストが多いという面もあります。理論を超えたところに真理があるのではないかと空想するのは楽しみでもあります。ただ、それ以上に、相場で勝ちたいという気持ちが強かったですね。そのために使える手法を徹底的に調べていくなかで、あらゆるものにチャレンジしました。アストトロジーだって、勉強してみました。

そんな努力をしても、すぐに良い結果が出るわけではりません。それでも、あとあとになって、それが役立つことは結構あります(例えば、取引に役立たない手法がすぐに分かる、とか)。ということで、投資についても、熱意もって努力すれば、どこかでそれが生きてきます。

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