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【新・相場道五十三次 第8回】バリュー投資の第一歩です

【新・相場道五十三次 第8回】バリュー投資の第一歩です

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廣重勝彦
廣重勝彦

この連載ではこれまで、株式投資のために知っておきたい投資指標として、一株当たり純利益(EPS)や株価収益率(PER)、株主資本利益率(ROE)を見てきました。これらは、会社の収益(もうけ)をもとに、投資の判断をする指標でした。

今回は、会社の資産(財産)をもとに、株価を評価する「PBR」をご説明します。バリュー投資の基礎であり、有名なバフェット氏に近づく第一歩です。

バリュー投資が資産をつくる

株式投資で世界有数の富豪になったウォーレン・バフェットは、若かりし頃、ニューヨークにあるコロンビア大学の教授であり、同時に「バリュー投資の父」とも呼ばれる著名投資家のベンジャミン・グレアムに師事していました。

バリュー投資とは、株式の本来的な価値、すなわち保有資産や収益力などからみて、割安株(バリュー株)に投資をしようという考え方です。グレアムの手法は至ってシンプルなものであり、会社の利益、資産、そして将来の業績などから適正な株価を判断して、それがマーケットの株価と比較して安ければ、その株式は買いであるというものでした。これを「割安株(バリュー株)」と呼ぶならグレアムの方法論ではバリュー株を見つけることこそが、投資の要点ということになります。

グレアムに学んだバフェットも、投資の基本は会社分析です。彼は、上場会社が公表する財務諸表を、愛読書のように読み込んだようです。グレアムは、公表されている材料で、企業の本当の価値を知ることができると教えたからです。バフェット氏は、このような数値的なデータに加えて、会社の将来性など質的な面も重視しています。

そのうえで、マーケットの株価が、分析の結果として見いだした会社の価値を下回っていれば、割安株として買うという考え方です。ただし、割安株が常に正当な株価に修正されるという保証はありません。割安株のまま放置されたり、一段と売られたりする可能性はあります。

しかし、この点についてグレアムは、株価の修正には長い時間が必要になる場合があることは認めていました。そのうえで、市場で取引されている株価と企業の価値に「十分な価格差」があれば、一段と売り込まれるリスクは緩和されると指摘しています。少し割安という程度ではなく、十分に割安株であれば、下落し続ける可能性は低くなるということです。したがって、十分に割安株を、価格の修正に必要な長期に持てば、その投資が成功する可能性は高まるということになります。

実際、バフェット氏は2016年3月の米CNBCのインタビューで、良い会社ならゆっくり買い続けなさいと言っています。そうすれば、10年、20年、30年たてば報われると述べました。ここで言う良い会社は、もちろん価値が高いのに株価が安い会社でしょう。裏を返せば、バリュー株投資は忍耐が必要ということになります。これまで長らく見捨てられてきた割安株が、やがて日の目を見るようになり、さらにはスター株になる。それには、相当な時間は覚悟する必要があります。しかしそれができるのならば、株式で資産を形成することはできるでしょう。

割安を見いだす株価純資産倍率(PBR)

とはいえ、グレアムやバフェットのように、会社の財務諸表を読み込むことは、容易ではありません。高度の会計知識が必要だからです。ただ、そこまでしなくても、割安株であるということがわかる有力な指標があります。それが株価純資産倍率(PBR)です。

株価と純資産の関係を示すPBRを算出する式は、次の通りです。

PBR = 株価 / 一株当たり純資産

純資産は、資産から負債を除いた部分を言います。会社が借入金を全部返済したら残る財産です。純資産は、会社財産のうち株主に属する部分ですから、自己資本や株主資本と読み替えることもできます。

そして、一株当たり純資産(BPS)は、純資産を発行済み株式数で割ったもの。仮に、投資家がある会社の株式を100株買えば、実質的に100株分のBPSを持つことになります。BPSが1,000円の会社であれば、会社財産のうち10万円(=1,000円×100株)だけ、その投資家が保有しているということです。

なお、PBRはつぎの式のように、株式時価総額を純資産で割ることでも求められます。

PBR=株価/一株当たり純資産=株価/(純資産÷発行済み株式数)=(株価×発行済み株式数)/純資産=株式時価総額/純資産

ただし、厳密PBRを求める際には、純資産から現在の株主に帰属しない分(自己株式、新株予約権や非支配株主持ち分など)を取り除いてBPSを計算します。会社四季報や会社情報、またヤフーファイナンスなどのホームページに記載されているPBRは、このような処理がされています。そのため、上記の式で求めたPBRとは若干のずれが出るケースもあります(なお、以下では、自己株式等は考慮しないでご説明します)。

PBRと割高・割安

このように、PBRは株主に帰属する純資産と、株価の関係を見るものです。純資産は、銀行融資などの借り入れ(負債)によらない部分ですから、「純資産=資産-負債」と書けます。言い換えれば、純資産は、借り入れなどを返済した場合に、会社に残る財産です。これは、会社の「解散価値」とも言われます。解散価値は、会社を解散して、銀行や債権者や従業員などの利害関係者に、借りているお金を返済した後に残る会社の価値です。そして、この正味の価値(財産)と株価の関係を示すのがPBRです。

したがって、「PBR=1」が重要な基準となります。PBR=1は、一株当たり純資産と株価が一致していること、すなわち会社の純資産額と株式の時価総額が一致していることを示しています。

PBRが1を超えていれば(PBR>1)、株式の時価総額が、純資産額よりも大きい状態です。すなわち、株式は会社の解散価値よりも高く買われています。その背景には、株式が人気によって割高に買われているか、あるいは将来にわたり利益が増加して純資産が増加するとの期待が強いなどの事情があります。

いずれにしても、PBR≧1であれば、PBRの観点からは「割安株ではない」と言えます。

一方、PBR が1倍を下回っていれば(PBR<1)、時価総額が会社の解散価値を下回っていることになります。したがって、その会社の株式を全部買えば、その買い付け金額以上の財産を得ることができるということです。そう考えれば、PBRが1を下回っている株式は、割安であるという見方ができます。

割安株になる要因

例えば、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)のPBRは、2017年2月20日現在0.70であり、1を割り込んでいます。2016年末のBPSは、非支配株主持ち分等を控除した後に1091.92円であるのに対して、この日の株価は767.8円でしたから、PBR=767.8円÷1091.92円=0.70となります。

なぜ、株価がBPSを下回るのか? まず、純粋に、株式が割安に放置されているケースがあります。その典型的なケースは次の通りです。

  • 相場全体が下落する
  • 業種(セクター)が下落する

日経平均株価が下落トレンドに入るような、相場全体が下落基調になるケースでは、個々の株式の事情に関係なく、PBRが1を割り込むまで売られることがあります。景気の大きな循環のなかで、景気が下降する局面では、株式市場全体が下落することがあります。また、テロや大災害など、社会の不安が高まる際にも、相場全体が下がり、PBRの水準に関係なく株式の売りが続きます。

さらに、同業種の下げに引きずられて、割安になることがあります。政府による規制や、円高の見通しなどが、特定のセクターのPBRを引き下げる場合もあります。

ただ、このような理由で割安になったのならば、その株式は魅力的に移ります。その株式の固有の理由によるものではないからです。先述の通り、その株式が見直されるのには時間がかかるかもしれませんが、割安株として投資してみる価値はあります。

投資には慎重になるべき割安株

ところで、解散価値が高いと言っても、現実にその株式を全部買ったうえで、その財産を売り切るといった行動は現実的ではありません。ましてや、その資産を額面どおり売却できるという保証はありません。そのため、株価が割安であっても、あえて買われないまま放置されているケースもあるでしょう。

また、会社の財務諸表に記載されている会社の財産に対して、投資家が慎重に見ているケースもあります。例えば、会社が価額を見積もった財産について、アナリストなどが保守的に見積もりなおすこともあります。その結果、企業価値が株価ほど大きくないとして割安株になる場合もあります。PBRの計算式(株価÷BPS)のBPSを、投資家が財務諸表の数字を離れて独自に低く見積もることで、株価が低迷するケースです。

さらに、投資家が将来的な損失の可能性を考えた結果として、株価が割安になる場合もあります。純資産が減少して今よりもBPSが低下する可能性を考慮するケースです。

PERはあくまで目安。絶対的な指標ではない

あるいは、将来的なファイナンス(増資など)の可能性があれば、これも割安株になる要因でしょう。将来、BPSを下回る価格で増資がされるならば、BPSは低下します。投資家がそのようなファイナンスの可能性を想定していれば、株式は割安に放置されることもありえます。したがって、「PBRが1を下回っているのが異常だから、いずれはPBRが1の方向に戻る」とは言い切れません。すなわち、PBR1が1を下回っているから、直ちに「割安だ」とは言えないということです。

それでも、PBRが1を下回る企業について、投資家はその株式を慎重に、保守的に評価していることは確かです。言い換えれば、PBRが1を下回っているのは、その会社について、投資家がリスクを相当考慮していることが背景にあります。この観点からは、楽観的に評価されている株式に比べて、PBRが1を下回っている株式は、割安であるといえるでしょう。

そうであれば、PBRでみて割安な銘柄は、すでにある程度のリスクを織り込んでいるために、相場全体でリスクが意識されるときには、その影響を受けにくいともいえるでしょう。さらに、慎重すぎる見方で割安に放置されていた分だけ、上昇余地が大きい会社も出てくるはずです。

投資の徒然:技術進歩が相場模様を変える?

2000年以降の週足を見ていて気付きました。日経平均株価が19000円台ならば、ほとんどの人は勝ち組であるはずだと。また、この水準では、多くの人が利益の確定売りを出したいはずだということです。

日経平均株価の週足終値の分布 (2000年以降)

グラフは、2000年の初めから今年2月17日までの17年に、日経平均株価の週の終値が、どの水準に何個あったかを示しています。例えば、表の右端から2番目の棒グラフは18と書いていますが、これは過去17年で、20000円から20500円の間に18個の終値(週ベース)があったことを示しています。

全体では、886個(886週)の終値があるのですが、19500円以上に限れば46個だけ。これは、全体の5%にすぎません。統計学でいう2シグマに近く、発生確率が相当低い状況と言えます。ということならば、19500円に近づけば売りたい人が多いでしょうね。逆にみれば、この水準で売った人が、過去16年間では勝ち組でしたし、勝った人は報われませんでした。そのような経験則の長期にわたる積み上げが、足元での株式に売りにつながっている面は大いにあるでしょう。

実際、2月21日現在、NYダウは年初から5.0%上昇しています。中国株の代表的な指数である上海総合指数は4.8%上昇しているのに対して、日経平均株価は年初から1.4%しか上昇していません。やはり、日本株は売り物に上値を抑えられています。これはやはり、過去16年の経験則による部分が大きいのではないでしょうか。

しかし、経済や社会、そして科学技術の状況は、過去16年に比べて、相当変わってきている可能性があります。世界的な景気の回復期待、また 人工知能(AI)や IoTなどの技術進歩は、いずれ経験則のワナを抜け出して、相場を新たなステージに導く可能性があることに、しっかり注目していきましょう。

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