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やられたらやり返す、倍返し!

やられたらやり返す、倍返し!

今週は、テクニカル分析を使って目標値を求める方法を検討します。

目標値計算

少し古くなりましたが、テレビドラマ主人公の半沢直樹のセリフ、「やられたらやり返す、倍返しだ!」が有名になりました。「倍返し」という言葉が、一般の人には新鮮に聞こえたからでしょう。

しかし、相場の世界では、古典的で、もっともポピュラーな株価目標の計算方法です。倍返しは、「やられた分だけやり返す」です。相場でいえば、下げた分だけ上げるということになります。

(図1)倍返し

図1は、倍返しを示した図です。①まで上昇してきた相場が反落し、②まで下げます。これが「やられた分」です。その後株価が反発しますが、①の株価水準に戻しただけなら、“ただの戻し。倍返しは、やられた分の(a)の値幅を①に加えた分だけ上げなければなりません。すなわち、③の株価が倍返しです。

なお、この倍返しは、一目均衡表というテクニカル手法では、V計算値と呼ばれています。価格が①-②-③という動きが、アルファベットの「v」の形に似ているから、この名称がついたのでしょう。V計算値は、次の式で求めます。

V計算値=①+(①-②)

そこで現実の相場に当たってみます。

(図2)日経平均株価

まず、日経平均株価は図2のように倍返しをほぼ達成しました。17613円(16年4月25日高値)から14864円(同年6月24日安値)まで、2749円下落しました。これが「やられた分」です。その後、株価は上昇に転じます。その倍返しは、先ほどの天井にやられた分(下落幅)を足すことで得られます。

17613円+(17613円-15471円)=20362円

したがって、昨年の前半の急落を基準とした株価の目標値は20362円でした。

実際に、今年の6月20日に20318円(同日高値)をつけ、ほぼ倍返しを達成しました。

また、この高値を付けた6月20日は、昨年の最安値をつけた日(16年6月24日)から、ほぼ1年後でした。テクニカル分析では、「アニバーサリー・デート」と言われます。アニバーサリー(anniversary)は記念日のこと。アニバーサリー・デートは、むかし、米国の著名なテクニカルアナリストW.D.ギャンが提唱した考え方で、重要な高値・安値をつけた1年後に、相場の変化日が訪れるという考え方です。

実は、昨年の年間の安値は6月24日でした。一昨年(2015年)の年間の高値も同じ6月24日でした。ということでみると、今年の6月20日の高値は、倍返しであり、アニバーサリー・デート(変化日)の候補です。

このようなテクニカル分析を背景に、利益の確定売りが出やすいことは、日経平均株価が20000円を超えたあたりでのもみ合いになっている要因の一つでしょう。

(図3)米S&P500

なお、米国株式でも、倍返しが見られます。米国株式相場の主力銘柄の動きを示すS&P500指数をみると(図3参照)、2134ポイント(15年5月20日)でいったん天井を打ち、その後は1810ポイントまで下落します。

この間の下落幅は324ポイントでした。このやられた分を倍返しすると、

2134+(2134-1810)=2458ポイント

したがって、倍返しとしての株価の目標値は2458ポイントです。

現実の米国株式を見ると、S&P500は6月2日に2440ポイント(高値)まで上昇し、この倍返しにあとわずかに迫ったあとは、7月11日ころまで一進一退の動きでした。しかし、7月12日以降は、倍返しを試す動きになり、S&P500は、2017年7月14日に2463ポイント(同日高値)をつけて、倍返しを達成しました。現在は、この倍返しで戻り売りに上値を押さえられるのか、あるいは本格的に超えるのかを試す動きになっています。

N計算値

(図4)N計算値

先述の一目均衡表における目標株価の求め方には、V計算値(倍返し)のほかに、N計算値とE計算値という考え方があります。

まず、N計算値は、図4のように、株価が①から②まで上昇したあと、いったんは③まで下落し、その後に改めて上昇した場合に、どこが目標になるかを計算する方法です。

株価の動き、すなわち①-②-③から次の目標値にかけての動きが、アルファベットの「N」の形をしているから、このような名称が付いたと見られます。

目標株価の計算方法は、最初の①から②までの上昇分の値幅を、次の底値となった③に足して求めます。すなわち、

N計算値=③+(②-①)

です。

(図5)WTI原油先物

実際の相場で見ましょう(図5参照)。①が26.21ドル(16年2月11日)で、②が41.45ドル(16年3月22日)でした。この値幅を次の底値の③35.70ドルに加えて目標値を求めます。

N計算値=35.7ドル+(41.45ドル-26.21ドル)=50.94ドル

現実には、51.23ドル(16年6月8日)まで上昇し、N計算値の目標値に届きました。なお、その後は下落に転じ、次の底値は39.51ドル(16年8月2日)でした。

E計算値

最後に、E計算値があります。株価が最初の底値①から②まで上昇し、その後③まで下落します。ここから、①から②までの上昇分の値幅を③に加えて目標値を求めれば、N計算値になります。また、最初の天井②から底値③までの下落分の値幅、すなわち「やられた分」を②に加えれば、V計算値(倍返し)の目標値が計算できます。

これに対して、E計算値は、①から②までの上昇幅を、最初の天井である②に加えることで求めます。

E計算値=②+(②-①)

(図6)E計算値

図6の通り、この計算概念図が、アルファベットの「E」の形をしていることから、E計算値と呼ばれるのでしょう。

(図7)ユーロドル

現実の相場で見ます。図7はユーロドル相場(日足)です。図6は上昇中の株価目標を立てる例でしたが、相場が下向きでも、目標(下値目標)が計算できます。

図6の①に当たる2016年8月18日1.1354ドルを起点にドルが下落し、16年10月24日には1.0882ドルまで下落しました。これが、図6の②に当たります。この①から②までに、ユーロは0.047ドル下落しました。その後、ユーロは③で底入れし、再び上昇に転じると、③に当たる1.1141ドルで天井を付けました。そして、改めて下落に転じます。

この時に目標株価は、E計算値を使い次の通り求められます。

E計算値=1.0882+(1.0882-1.1354)=1.041ドル

実際のユーロの底値は1.0388ですから、E計算値に到達しています。

目標値の使い方

実は、テクニカル分析で求めた株価目標は、現実の相場において、常に機能するわけではありません。それでも、この目標をチェックした方が良い理由としては、次の2点があげられます。

  • (その1)投資のシナリオを作る材料となる。
  • (その2)目標株価に到達したとき、利益を確定するかどうかを再考する機会を与えてくれる。

理由その1は、目標株価を計算しておけば、投資をする前に、いくらで買っていくらで売るのか。そして、いくらまで下がればロスカットをするのかというシナリオを作ることができるということです。

例えば、いま株価が1000円の株式を買うべきかどうかを考えます。仮に、先ほどの目標株価の算定で、1200円が目標値になるとすれば、ロスカットは900円で行うべきだとのシナリオが作れます。これは、利益と損失の比が2対1になるということです。目標株価に到達すれば、200円の利益(=1200円-1000円)であるのに対して、ロスカットすれば100円の損(=900円-1000円)だからです。

この取引をくりかえせば、勝率が5割(=投資で利益が出た回数÷投資の回数×100)に満たなくても、長期的には、利益が積み上がるか、あるいは投資資金を守ることができる可能性が高まります。

後者の理由その2の意味は、株価が目標値に到達することが、ポジションを維持するのか、全部売却するのか、あるいは一部売却するのかをあらためて検討するきっかけになるといことです。

実際、このような目標値では、利益の確定売りが出やすくなります。先ほどの倍返しの例で、日経平均株価はその水準をなかなか超えられないことを見ました。一方、S&P500は、倍返しの水準でいったんは立ち止まりましたが、足もとではこの水準を突破する動きも見られます。

両者の違いは、国の政策や経済状況、政局、為替相場の動向などが影響しています。目標株価の到達は、これらの要因を点検して、ポジションをどうするのかを一度考え直す機会を与えてくれます。

 

相場の徒然-楽天家は好機を見いだす

相場には季節性があると言われています。論理的な説明はできないけれども相場に影響を与えている事象、すなわち「アノマリー」の一種です。

この相場の季節性を表す最も有名な格言が、「5月に売れ(セル・イン・メイ ”Sell in May”)」です。相場は5月にピークを打つことが多いという意味と、夏から秋にかけて相場は下落する場合が多いという経験則を表す格言です。

そこで、日経平均株価について、過去20年の月足データを使って、月ごとの平均的な騰落率を示したのが、図8です。たしかに、5月以降、月間騰落率はマイナス(月間では下落)が多くなっています。とりわけ、7月から10月まで4カ月連続でマイナスです。この意味では、セル・イン・メイは正しかったことになり、夏場から秋にかけて、投資はお休みにした方が良さそうに見えます。

しかし、3カ月と6カ月の騰落率からは、違った結果が得られます。

(図8)1カ月騰落率
(図9)3カ月騰落率
(図10)6カ月騰落率

3カ月騰落率は、3カ月間の騰落率です。例えば、図8にある7月の棒グラフは、7月末に日経平均株価を買って、3カ月後の10月末に売った場合に、どれだけのパフォーマンスがあがったかを示します。過去20年のデータで見ると、7月の3カ月騰落率は、平均して-4.3%(4.3%の下落)でした。

また、6カ月騰落率(図10参照)の7月の棒グラフは、7月末に日経平均株価を買って、6カ月後の翌年1月末に売ったら、どれだけのパフォーマンス(騰落率)だったかを示します。過去20年のデータの平均では、-0.7%でした。

これを見ると、3月騰落率と6月騰落率のいずれも5月から7月までの3カ月はマイナスになっていますが、8月はプラスになり、さらに9月、10月と月を追ってパフォーマンスが良くなっています。さらに、6カ月騰落率では、10月が最もパフォーマンスが良い月です。

夏から秋にかけての3カ月と6カ月の騰落率の良さは、1カ月騰落率の低迷の裏返しです。この時期の1カ月の騰落率が悪いから、すなわち下落することが多い季節だからこそ、その時に買って中期で持ち続ければ、パフォーマンスが良くなるということです。

第2次世界大戦で、ナチスドイツに敗北間近だった英国を勝利に導いた当時の英首相、ウィンストン・チャーチルの言葉が残されています。それは、「楽天家は困難に好機を見いだし、悲観主義者は好機に困難を見る」。セル・イン・メイという困難は、楽天家には好機になりそうです。

むさし証券チーフストラテジスト、北海道大学新渡戸カレッジ・フェロー。北海道大学を卒業後、山種証券(現SMBCフレンド証券)に入社。エクイティ・デリバティブ取引のディーラーとなり、その後、世界最大の穀物商社カーギルでの日本株運用部長、みずほ証券エクイティ部のトレーディング担当部長などを歴任。一時、ベンチャー企業の立ち上げに参画し、上場を果たした。さらに、アジア中心に海外勤務を経て現職。北大でもグローバル人材の育成を行っている。法政大学経済学修士、日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会正会員。著書に、「デイトレード入門」「株式先物入門」「FX入門」「初めての海外個人投資」(いずれも日本経済新聞出版社刊の日経文庫)など。
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