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季節性を利用する – 新・相場道五十三次

季節性を利用する – 新・相場道五十三次

廣重勝彦
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2017年もいよいよ師走に入ります。この時期には毎年、年末相場という言葉が使われます。それはいったい何をさしているのか、そしてそれをどのように投資のパフォーマンスにつなげていくかを検討します。

アノマリーと癖

今回は、中短期の取引を考えてみます。中短期投資の場合、何を買うかも大事ですが、いつ買うかも重要です。すなわち、売買のタイミングをしっかり考えなければなりません。

長期投資なら、投資のタイミングは大きな意味を持ちません。長期間なら、その株式を発行している企業の実力が投資の成果として現れるからです。これに対して中期や短期の取引では、実力のある企業の株でも、景気のピークで買えば値下がりする可能性が高いでしょう。中短期投資ではロスカットをせざるを得なくなり、損失が確定することになります。

これが、中短期投資の難しさです。良い銘柄を選んでも、全体相場の流れが逆方向ならば、期待したような成果をあげることが難しくなります。したがって、投資のタイミングが重要になります。

この投資のタイミングを測るための方法がテクニカル分析ですが、これ以外でもタイミングを測る方法はあります。それは、アノマリーや癖(バイアス)を活用することです。無視しがちなこのような相場の傾向ですが、うまく利用すれば、パフォーマンスの向上につながります。

「1月効果」より「年末ラリー」

株式市場では、「1月の株高(1月効果)」や「セル・インメイ(5月は売れ)」といった季節がらみの相場格言があります。これらはアノマリー(Anomaly)と呼ばれます。アノマリーは合理的な理由には乏しいものの、投資に有効な経験則の意です。

かつて、効率的市場仮説では、すべての情報は生成されると即座にかつ完全に価格形成に反映されるので、アノマリーのような情報で儲けることはできないという説明がなされました。しかし、最近は、現実に継続して利益をあげる方法があるという反論もあります。

市場の効率性に関する実証研究で、効率的市場仮説に反するアノマリーがさまざまに報告されています。その一つの例として、「1月効果」が取り上げられました。1月の収益率は、他の月よりも高いというものです。

ただ、日経平均株価などでは現在、「1月効果」は期待しにくいのではないでしょうか。むしろ、「年末ラリー」ないしは「クリスマスラリー(サンタクロースラリー)」と言われる動きの方が、実際の売買には使えそうです。

クリスマスラリーを確認する

株価の年末年始の動きを直感的にとらえるために、日経平均株価などのパターンをグラフに表しました。

年末の日経平均株価

このグラフは次のように作成しました。

  • 1991年から2017年までの25年間の日足データを使用。
  • 各年の年末の価格を100として、各年の年末年始の動きを指数化した。
  • そのうえで、各年のデータを使って日々の平均値を求めた。
  • グラフには、11月15日から翌年の1月末までの平均値を示した。
  • なお、グラフの縦棒は年末を示している(この時の値が100)。

そこで各グラフ(図1)を見ます。まず、日経平均株価については、11月15日の値は97.4です。そこから約20日にわたり上昇し、12月9日に99.7を付けています。一旦は反落するものの、その後あらため上昇し年末が100です。さらに1月6日には100.5を付けます。

ただ、ここがピークとなり、その後は軟調な展開に転じました。なお、ここでの日付は、特定の日を指しているのではなく、おおむねその日の周辺と考えてください(年によっては大納会の日などが異なるからです)。

このグラフを見ると、たしかにクリスマスラリーが起きています。一方、「一月効果」と言われる光景はみられず、むしろ1月はいったん下値模索になっています。

つぎに、米国株式を見ます。NYダウのデータを使い、先述の日経平均株価と同じ方法でグラフ(図2参照)を作成しました。データも1991年以降の日足です。

年末のNYダウ

11月15日は97.0ですが、その後上昇して12月2日には99.2を付けます。一旦軟化するものの、12月13日の98.5を底に上昇し、年末は100、1月3日には100.6を付けます。しかし、1月の半ばに向け下落。1月末になっても100(=12月末水準)には戻っていません。

これらのチャートを見る限り、1月の相場は平均的には停滞です。むしろ、目立つのは、NYダウのクリスマスラリーです。

ドル円相場も同じ方法で確認してみます。データも同じ期間です。このグラフ(図3)では、値が大きくなればドル高・円安です(値が小さくなればドル安・円高)。また、100は100円の意味ではなく、年末が指数で100という意味です。

年末のドル円相場

グラフを見ますと、11月15日は99.1ですが、その後はじわじわとドル高・円安の方向に動きます。年末が100ですが、1月6日には100.3までドル高・円安になります。しかし、その後はドル安・円高の方向に動いています。

以上の通り、過去25年のデータを見ると、米国株相場と日本株相場、そしてドル相場のいずれもクリスマスラリーの傾向が見られます。

クリスマスラリーの背景

米国株、日本株、ドルの動きは、年末にかけて調子を合わせています。この動きを主導しているのはやはり米国株式市場でしょう。米国株の上昇に合わせて日本株が上昇し、また米国の好調はドルの買いにつながるからです。

あるいは、米国株の上昇で、リスクが低下したとして(リスクオフとして)円売り(ドル買い)になり、これが日本株の買いにつながるからです。

その米国市場では、年末に特有なイベントがあります。それは年末商戦であり、ファンドの決算や家計の節税対策です。

まず、年末商戦ですが、これは米国の感謝祭(例年11月の第4木曜日、今年は11月23日)からクリスマス(12月25日)に向けて活発化します。一年で最も消費が盛り上がる時期ですが、米国のGDPの7割は個人消費が占めるだけに、米国景気の行方を左右するイベントとして株式市場でも大いに注目されています。

とりわけ、感謝祭明けの2日間が重要です。感謝祭翌日のブラックフライデー(小売店が一斉に黒字になる金曜日の意、今年は24日)と、サイバーマンデー(インターネットでの小売りが活発化する日、感謝祭翌週の月曜日であり今年は27日)です。ここから始まる年末商戦の動向を見極めながら、来年の景気動向を探り、株式市場にも資金が入り始めることで、株価が切り上がっていきます。

グラフ(図4)は、過去10年(2007-2016年)のNYダウの日足データを使い、感謝祭翌週の月曜日(サイバーマンデー)の株価を100と指数化し、その日々の数値の平均値をグラフ化したものです。先述の過去25年のグラフと同様に、過去10年に絞ってもクリスマスラリーが見られます。

年末商戦期間の米国株動向

過去10年の例では、サイバーマンデーからクリスマス(イブ)までに、NYダウは平均で3.1%上昇しています。また、勝率は9割(10年中9年が上昇)でした。なお、下落した年は2015年(1.7%の下落)でした。

このグラフで特徴的なことは、12月の前半は一進一退になることです(価格は横ばいとなっています)。これは、需給に関するイベントが影響していると見られます。

実は、年末は売りが出やすい時期です。ヘッジ・ファンドなどが年度(暦年)の決算のために利益の確定売りを実施します。また、個人投資家から「タックス・ロス・セリング」も出ます。

「タックス・ロス・セリング」とは、「株式投資の損失を年内に確定すれば、給与やキャピタル・ゲインと相殺できる」という税制を活用した、節税目的の株式売却です。

しかし、これらの売りは通常12月の半ばまでが山場とされています。それが、12月前半に株価の上値を抑えると見ることもできます。逆に、この時期を過ぎれば、ニューイヤーマネー(翌年の上昇期待による新規資金)の流入や、節税売り分の再投資などの買いが活発化すると見られます。

このような見方をもとに、先ほどのグラフ(図4)は次のように解釈できそうです。すなわち、米国株式は年末商戦期待で買われるものの、12月になるとタックス・ロス・セリングなどによりしばらくは上値を抑えられる。だが、12月の半ばになればこの売りも峠を越す。そこからは、ニューイヤーマネーの流入により改めて上値を試す動きになるということです。

2年前の教訓

とはいえ、クリスマスラリーが毎年ありますということではありません。たとえば、過去10年では2015年が例外で、クリスマスまでに1.7%下落しました。

2015年を振り返ると、米国では2015年12月15-16日に開催のFOMC(連邦公開市場委員会)で、「利上げ」が決まりました。FRB(連邦準備制度理事会)は2008年12月に、政策金利であるフェデラルファンド(FF)レートの誘導レンジを0.00%~0.25%まで引き下げましたが、それ以来の金利の変更でした。とりわけ利上げは2006年6月以来でした。

この9年半ぶりの利上げそのものは、市場参加者が予想した通りでした。問題だったのは、FOMCメンバーの政策金利予測です。すなわち翌年2016年の予測として、年4回、合計1%程度の「利上げ」が示されました。これは、市場参加者が想定していた利上げ回数(FF先物市場から見た利上げ回数)である年2回程度を大きく超えていました。市場参加者にとってはネガティブ・サプライズ(想定外の悪材料)となり、その後の世界的な株価下落の要因になりました。

しかし、このときは、イエレン議長が利上げペースに急ブレーキをかけました。結局、2016年の利上げは12月の1度だけとなり、当初のFOMCメンバーの予想(年4回)よりもはるかに慎重なものとなりました。米国株式はこの動きを反映するように、2016年2月を底値に長期の上昇トレンドに転じたのです。

今年も、12月12-13日にFOMCが開催されます。市場では、0.25%の利上げは確実視されています。ここにリスクがあるとすれば、2年前と同様にFOMCメンバーが示す来年の利上げ回数予測(「ドット・チャート」とも言われる)です。現在、市場(FF金利先物市場)では、来年の利上げは2回程度とみています。

ただ、ゴールドマンサックスは、ここにきて来年の利上げ回数を4回と予想するなど、この議論は錯綜し始めました。加えて、イエレン議長は来年の2月に退任します(FRB理事としても残らない)。 

したがって、今年もクリスマスラリーを想定しながらも、12月のFOMCの結果(来年の利上げ予測)と、パウエル次期議長の発言などには注意する必要があるでしょう。

相場の徒然-17か月連続月初高も使えるバイアス

本文では、株価の傾向(季節性)と、その動きに対する説明を試みました。しかし、科学的に検証されたものではないために、この株価の傾向はやはりアノマリーと言えます。 

アノマリーであるということは、いつかその傾向は消える可能性があります。だとすれば、そのようなあやふやなものを信じて投資はできないと言う人もいるでしょう。これは正論です。しかし、実務的な対応とすれば、このような株価の傾向を無視してしまうのはもったいない。

アノマリーであっても、それも含めて相場です。合理的に説明できることだけで相場が成り立っているわけではありません。このような動きを無視することは、相場の手掛かりを捨てることになりかねません。これはアノマリーを信じるよりもリスクが高いのではないでしょうか。

季節性のほかにも、相場には癖のようなものがあります。たとえば、日経平均株価は、2016年7月から2017年11月まで月初高です。月の初日は17か月連続で前日比プラスとなっています。17か月の平均で0.7%の上昇、最大は2.5%(2017年1月)、最少は0.1%(2016年11月、2017年7月)です。

この理由を需給面から推測することはできます。ただ、いまのところ客観的なデータで明確な理由を指摘することはできません。しかし、このような傾向を完全に無視するのはやはりもったいない。これで儲けようとする必要はありませんが、どこで買うのかというタイミングを考える上で参考になります。

このような相場の癖は、「バイアス」とも言われます。長期で見れば、そのような癖は消えていくでしょう。しかし、中短期の投資では、このようなバイアスや季節性、あるいはアノマリーを丹念に調べれば、投資のタイミングを測る参考になります。

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