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移動平均線を深く考える

相場のトレンドを判断する方法として、これまでトレンドラインを検討してきました。今回は、よりポピュラーなトレンド判断方法として、移動平均線を考えてみます。

ポピュラーな移動平均線

移動平均線だけで取引する人は多くないかもしれません。しかし、移動平均線を見ている人はたくさんいます。そのため、移動平均線が「当たってる、当たってない」という議論とは別に、移動平均線が市場参加者の心理に一定の影響を与えていることは確かです。そのため、移動平均線のチェックは大事です。

そして、移動平均線がポピュラーである理由は、その作り方が簡単だからです。また、現在では、インターネットなどでもすぐに確認することができます。

さらに、移動平均線はだれが作っても同じものができることも利点でしょう。これまでご説明したトレンドラインは、作る人の直観で考えられている部分が大きく、主観的なものでした。一方、移動平均線は、作り手の主観に頼る部分がないだけに、作成に悩む必要がありません。これも、移動平均線がよく使われる理由の一つです。

移動平均線の作り方

移動平均線の作り方を確認しましょう。まず、日々の移動平均を求めます。例えば、5日移動平均ならば、今日を含む5日間(5取引日)の終値をすべて加えて、これを5で割ることで求められます。

図1:5日移動平均線

例えば、7月5日の移動平均は、図1の通り、6月29日~7月5日までの終値を足して、5で割ることにより、20085円となります。前日の7月4日の移動平均線は、6月28日~7月4日までの5日間の終値で同様に求めて20094円となります。ここでは、PCソフトのエクセルを使って、「average」という関数で移動平均を求めています。

そして、この日々の移動平均をつなぎ合わせた折れ線グラフが移動平均線です。この例のように過去5日のデータを使った移動平均によるグラフは、5日移動平均線と言われます。過去10日間のデータを使えば10日移動平均線、また25日間のデータを使えば25日移動平均線になります。

移動平均の目的

移動平均はそもそも、株式相場のために考えられたものではなく、統計的な目的のためのものです。すなわち、日々のデータや毎月のデータなどの時系列のデータによって、どのような「傾向(トレンド)」があるのかを見つけようとするものです。

図2は、東京の日々の気温の線グラフです。日々の気温を見ると大きく上下していますが、移動平均はスムーズに動いています。これは、移動平均が、日々の動きの中からトレンドを引きだしているということです。

図2:東京の気温

日々の気温は、その日の特別な事情により高くなったり低くなったりします。季節が夏ならば、晴れの日は猛暑でしょうが、雨の日はやや涼しくなります。そこで、その平均をとることで、その時期の気温がどの程度なのか、すなわち傾向を知ることができます。

株式市場で、移動平均線が使われるのも、株価の動きの背後にある傾向(トレンド)を見つけるためです。株価の動きは、トレンドとノイズに分けることができます。株価は景気動向や金融政策などに合わせて、一つの流れ(トレンド)を形成します。ただ、日々の相場では、大口の売りが出といった特殊な事情でも株価は動きます。これは、相場にとってはいわば雑音であり、ノイズと言われます。ただ、この動きは一時的であり、株価のトレンドに影響を与えるものではありません。

このノイズを消す方法が移動平均です。移動平均は、過去の一定期間のデータを平均化することで、日々のノイズを消し、トレンドを浮かびあがらせることができるというわけです。

移動平均線を使った売買

さて、ここからは、移動平均線の使い方を考えます。これまで説明した通り、移動平均線はトレンドをつかまえる技術です。そこで、相場のトレンドも、移動平均線で捕まえられるかもしれません。

図3は、日経平均株価(実線)と、その50日移動平均線(点線)です。足下(7月初旬)の株価は下落していますが、50日移動平均線は上昇しています。これは、目先的には売り圧力が強まっているものの、移動平均線で示されるより長い期間では、上昇トレンドが維持されていると解釈できます。

図3日経平均株価

このような見方をもとに、次のような投資が考えられます。すなわち、50日で示される比較的長い期間の上昇トレンドを前提に、株式が短期的に下落する局面で、押し目買いを狙うというものです。
もちろん、具体的に、どの株に投資をするかということについては、このコラム・シリーズの初めの方でお話したような株価指標などを参考に選ぶ必要があります。また、いつ、あるいはどの価格で買うのかについては、前回までにお話したトレンドラインなどを使いながら検討することになるでしょう。さらに、トレンドが維持できない場合に備えて、ロスカットの水準を決めておくことも大事です。それでも、移動平均線が上昇トレンドを示しているという見方に立てば、少なくとも売りのタイミングを探る場面ではないでしょう。

移動平均線のクロス

次に、移動平均線のクロスを使った取引手法をご説明します。これは、株価が移動平均線の下から上に動いた(クロスした)時に、株式を買うという考え方です。前日の終値は移動平均よりも安かったが、今日の終値は移動平均よりも高くなったケースです(図4参照)。

図4:移動平均のクロス

株価がトレンド(移動平均線)を下回っていた局面は、株価が一時的にトレンドよりも弱かった場面と言えます。

しかし、そのような株価が、トレンドの上側にまで動けば、今度は株式の上昇基調が強まったと見ることができます。すなわち、この動きは、買いを入れるためのサインになります。

一方、株価が移動平均線を上から下に通った(クロスした)ときは、売りのサインになります。前日の終値は移動平均よりも高かったが、今日の終値が移動平均よりも安くなったケースです。これは、株価の動きが弱まったとして、売りのサインと見ます。

このような移動平均線の考え方は、理屈の上では妥当らしく見えます。ただ、現実に有効な戦術でしょうか。そこで、これを検証してみました。

まず、25日移動平均線を使って調べてみました。日本の株式市場では、25日という日数が注目されているからです。25日は、約1カ月の取引日数を表します。もっとも、これはむかし、1週間の取引が6日(月曜日~土曜日)だった時の1カ月ですが、いまでもそのまま使われています。

次の取引のシミュレーションを考えます。

  • 株価(終値)が移動平均線を下から上に抜けたら、翌日の寄り付きで株式を買う。
  • 株価(終値)が移動平均線の上から下に抜けたら、翌日の寄り付きで株式を売ると同時に、空売りを行う。
  • 株価(終値)が移動平均線の下から上に抜けたら、翌日の寄り付きで空売りを買い戻すと同時に、新たに株式を買う。

この取引を、日経平均株価の過去7年(2010年6月30日~2017年6月30日)のデータで検証しました。

結果は、195回の売買が実施されました。利益となったケースは50回、損失となったケースは145回でした。勝率[=利益のケース(50回)÷売買回数(145回)]は25.6%にとどまり、また当初元本に対して26.8%の損失が発生しました。ここでは、うまく機能しませんでした。

しかし、この移動平均のクロス戦略が完全に的外れとまでは言えません。ポイントは移動平均の期間の長さにあります。そこで、69日の移動平均線で同様のシミュレーションを行いました(図5参照)。

図5:日経平均株価

結果は、売買回数が87回で、勝率は31.0%にとどまりました。しかし、7年で32.9%の利益となりました。シミュレーションでは、過去7年のデータでは、70日前後の移動平均線が有効でした(利益が出ました)。さらに、過去25年のデータでみても、70日前後の移動平均線は有効でした。ちなみに、過去25年のデータでは、90日前後の移動平均線がもっとも有効でした。

もっとも、この取引手法だけでは、リスクに見合った十分な利益が得られそうもありません。それでも、検証では利益が得られた70日前後の移動平均線は、相場を見るうえで参考になりそうです。
70日は、取引日数でいえば約3カ月です。このシミュレーションは、3カ月の移動平均線(トレンド)が、株式相場を見るのには有効ではないかとの示唆を与えてくれます。

ゴールデンクロス&デッドクロス

もう一つの移動平均線を使った有名な投資法をご紹介します。それはゴールデンクロスとデッドクロスです。

ゴールデンクロスは、2本の移動平均線を観察し、短い期間の移動平均線が、長い期間の移動平均線を上抜けたことを言います。逆に、短い期間の移動平均線が長い期間の移動平均線を上から下に割り込んだことがデッドクロスです。

これを使って、次の通りシミュレーションを行います。

  • 終値でゴールデンクロスとなれば、翌日の始値で株式を買う。
  • 終値でデッドクロスになれば、買い持ちの株式を売却し、同時に空売りを行う。
  • 終値でゴールデンクロスとなれば、空売りを買い戻し、改めて株式を買う。

ここでは、4日と12日の移動平均線でシミュレーションを行いました。日経平均株価の過去7年(2010年6月30日~2017年6月30日)のデータを使いました(図6参照)。

図6:ゴールデンクロス・デッドクロス

結果は、163回の売買が実施され、勝率は39.9%、また7年間の利益率は56.4%(年換算では8.1%の利益)でした。また、過去20年のデータを使ったシミュレーションでも、収益率は何とかプラスでした(20年間で+20.2%)。

利益は出ましたが、リスクに見合うだけの十分なものとは言い切れません。それでも、4日と12日の移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスは、相場のトレンドを判断する際の参考にはなりそうです。

ただ、先述の通り勝率は4割程度ですから、6割はダマシとなります。他の取引手法を合わせて考えましょう。

相場の徒然‐逆張りゴールデンクロス

ためしに、ゴールデンクロス・デッドクロス(以下では、GS&DSと言います)の逆の売買を考えてみます。すなわち、ゴールデンクロスになれば売り、デッドクロスになれば買うというシミュレーションです。

10日移動平均線と38日移動平均線により、過去7年のデータで検証しました(図7参照)。その結果は、66回の売買があり、勝率は78.8%と高水準でした。そして、7年間の収益率は159.3%(年換算で22.8%の利益)と高率です。

図7:逆張りGS&DS

ところで、GS&DSはトレンドに乗るための手段です。これは「順張り(じゅんばり)」と言われる取引です。しかし、そもそも相場にトレンドが出るケースは多くありません。相場の多くの時間帯は、保ち合い(もみあい)です。そのため、ゴールデンクロスやデッドクロスのサインが現れていても、株価にトレンドが出ないことの方が多いのです。その結果、GS&DSを使った取引の勝率は低くなります。それでも、勝った時には利益が大きく出ます。すなわち、トレンドに乗ったということですから、利益幅が大きくなります。

その結果、先ほどの例(4日と12日のGS&DS)では、勝率こそ4割にすぎませんが、トータルでは利益が出ていました。過去7年の例では、1回の取引での最大利益は113.7%である一方、最大損失は17.5%にとどまりました。売買をして損失となるケースは多いのですが、一回の損失は、一回の利益に対して大きくないのです。その結果、トータルでは利益が出ています。

これに対して、GS&DSの逆の売買は、「逆張り(ぎゃくばり)」と言われる取引です。いわばトレンドに逆らう取引です。取引時間の多くは保ち合いですから、株価は一定の範囲を往来します。ですので、株価がある程度上がったら売る一方、株価がある程度下がったら買った方が、取引の勝率が上がります。

実際、GS&DSの逆の売買シミュレーション(10日と38日の移動平均)では、勝率が8割近くに跳ね上がりました。また、1回の取引の最大利益は200.6%でした。しかし、最大損失も39.9%と相当大きくなっています。逆張りは、勝率は高いのですが、負けるときは大きな損失を被る可能性が高いのです。トレンドに逆らう結果です。

このように、それぞれの取引手法には一長一短があります。取引手法を選ぶ際には、リターン(利益)の大きさや勝率だけでなく、リスク(最大損失)もしっかり考えることが大事です。

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