株の教科書.com

0

同じようなことは起こるが同じことは起きない

同じようなことは起こるが同じことは起きない

今週は、あらためてテクニカル指標に戻ります。引き続きRSIのお話ですが、よく質問されるパラメーターについても考えてみます。

モメンタムの再考

テクニカル分析には、トレンド分析とモメンタム分析の2種類があります。前者は、価格が一定方向に継続して動く傾向をとらえようとするものです。例えば、相場が上昇していれば、それがどこまで続くのか、あるいは相場が下落していれば、それがどこまで続くのかを見極めるための分析方法です。移動平均線分析や、トレンドライン分析がその典型です。

一方、モメンタム分析は、相場の方向ではなく、相場の勢いを測る方法です。モメンタム(Momentum)は、「勢い、推進力」の意味です。株価のモメンタムを測定することで、株価の動きが反転するタイミングを探ります。モメンタムを計る指標は、オシレーターとも言われます。オシレーター(Oscillator)は、音波や振動を感知する装置のイメージで、相場の勢いの大小を感知するテクニカル指標の総称です。

モメンタム分析には、相場の動きが弱くなったことを反転のサインとする方法があります。また、今の相場の動きが通常よりも強すぎる(上昇圧力が強すぎる、あるいは下落圧力が強すぎる)ことから、反転の時期が近いと見る方法があります。例えば、RSIは、モメンタム分析であり、強すぎる相場の動きを、反転のサインとしてとらえようとする方法です。

RSIの特徴

モメンタム指標のうち、RSIの優れている点は次の二つです。

  • 1.ゼロから100の数値で表すことで、客観的な判断ができる。
  • 2.移動平均を使っていることで、ノイズの影響を受けにくい。

まず、①については、RSIは、0~100までの値をとるように標準化されています。その結果、市場のモメンタムが今どの状況なのかを客観的に計ることができます。

次に、②については、RSIを計算するなかで、過去のデータの平均値(単純平均や平滑平均)を使います。これにより、ノイズと言われる意味のない株価の動きや、突発的かつ一時的な要因によって引き起こされた、株価の動きの影響を排除して、相場の本来の勢いを計ることができます。

日経平均株価のパラメーター

ここでRSIの一般的な利用方法をあらためてご説明します。RSIが70を超えると、相場は過熱している(買われ過ぎている)と見ます。逆に、RSIが30を下回ると、相場は売られ過ぎと見ます。パラメーターとして14日が使われます。パラメーター(Parameter)は、コンピューターのプログラムなどで使われる用語ですが、相場のテクニカル分析では、RSIなどオシレーターの分析に使うデータの長さや、移動平均線の日数などを言います。投資家が、RSIの数値を計算するとき、過去何日間のデータを使うのかを、パラメーターはいくつにするかと表現します。例えば、パラメーターが14であれば、過去14日のデータで計算したRSIということです。過去9日のデータで計算する場合、パラメーターは9という言い方をします。

(図1)日経平均株価のRSI(14)
(図2)日経平均株価のRSI(11)

実は、日経平均株価については、過去1年間だけで見れば、パラメーターを11とした方が、相場の動きが比較的うまくとらえられているように見えます。図1と図2は、過去1年間の株価とRSIの動きを示しています。異なるのは、図1のRSIはパラメーターが14であり、図2のRSIはパラメーターが11ということです。

図1では、株価は、①、②の局面で大きく反発しています。また、直近の③でも小さな反発が見られます。しかし、過去1年では、RSIが30を下回った場面はありませんでした。したがって、RSIが30を下回って売られ過ぎというルールを厳守するならば、RSIでは相場の反発をとらえることができなかったことになります。

一方、図2は、過去11日の株価データ(パラメーターは11)によるRSIです。この図を見ると、④、⑤、⑥ではいずれもRSIは30を割り込みました。そして、その局面で、株価は反発に転じています。
これを見ると、過去1年は、日経平均株価のパラメーターとしては11が機能していたと言えます。

中長期のRSI

今度は、長期投資の関連から、RSIを考えてみましょう。通常、RSIは日次(にちじ)データを使って計算されます。しかし、週次のデータをつかえば、中長期の相場のモメンタムが計れます。そこで、ここでは、6週のRSIを取り上げました。図3には、週足の株価と、パラメーター6(過去6週間の終値)を使ったRSIを載せています。

(図3)日経平均株価(週足)とRSI(6週)

図中、⑦、⑧、⑨は、いずれも30を下回った局面です。日経平均株価は、その局面で中長期の底値を形成し、あらためて上値を追う動きに転じました。

なお、日足のRSIである図2に戻ると、直近でRSIが30を下回る場面がありました(8月14日の日足RSIは28.6でした)。これは短期的な売られ過ぎを示し、現実に8月15日には株価は反発に転じました。その一方で、週足のRSI(パラメーターは6週)は、この時点では30を下回っていません。直近の8月11日(金)の週足RSIは40.21です。

これはどう解釈すべきでしょうか?素直に解釈すれば、株価は8月の半ばにかけて、短期的には売られ過ぎの状況になりました。しかし、中期ないしは長期の観点からは、まだ売られすぎとは言えません。したがって、投資態度とすれば、足元での反発を見極めるところでしょう。ただし、上値追いは慎みたいところです。そのうえで、今後、週足のRSIが一段と低下することになれば、本格的な押し目買いを検討すべきと考えます。

パラメーターの考え方

さて、セミナーでお話しすると、投資家の方から、「パラメーターはいくつにしたらよいですか?」といった質問の受けることがあります。こういう場合の一般的な返答は、「パラメーターは、あまりいじらない方が良いですね」となります。定番となっている14というパラメーターを、基本的には維持しようというのが答えになります。その理由は、パラメーターを動かすのは、いわゆる「カーブ・フィッティング」の危険性があるためです。

カーブ・フィッティング(Curve Fitting)は、曲線の当てはめてであり、主にシステム運用(コンピューターを使った自動売買)などで使われる用語です。ここでのカーブ・フィッティングは、特定のチャートが過去の相場をうまく説明できるように、パラメーターを調整することです。ありていにいえば、そのチャートが過去の相場で当たっていたように、パラメーターをいじることがカーブ・フィッティングです。

これをすれば、そのチャートが、過去の相場で極めて優秀だったように見えます。しかし、過去のチャートが説明できたからと言って、将来もそのチャートが有効とは断言できません。とりわけ、過去の相場にピンポイントで合わせたことで、将来の相場には使えなくなる可能性もあるのです。

というのも、仮にRSIが過去の相場にぴったりとあてはまって、売られ過ぎ・買われ過ぎを的確に示したとします。ただ、その中には、過去に1回だけあった特別な理由によってRSIが売られ過ぎを示した場合もあったはずです。例えば、何十年ぶりの大雪の影響を受けて、株価が下がったなどです。

このような特殊な事象が相場への影響までRSIがぴったりと当てたとして、それがこれからの相場を当てる根拠になるでしょうか。RSIのパラメーターを調整して、めったにない事象までを当てたとしても、それがこれからの相場の高値・安値を示すとは言い切れないでしょう。

過去に起きたことと同じようなことは将来も起こるでしょうが、同じことは起こりません。したがって、過去の相場にぴったりと合うテクニカル指標は、これから起こることから外れていく可能性が高いということです。したがって、いったんRSIのパラメーターを14としたなら、それを使って分析するのが原則です。これが、質問に対する原則的な答えとなります。

パラメーターは弾力的に

とはいえ、パラメーターを14に決めつける必要はありません。先述の考え方は正統派の見方なのですが、個人的には、もう少し弾力的に考えても良いのではないかとみております。というのも、図1で示したように、実際の相場で使えないのなら意味がないからです。

RSIのパラメーターは、株式なのか外国為替なのかで変えてもよいでしょう。また、日本株と米国株でも異なるパラメーターを使うことも検討すべきです。市場ごとに、商品ごとに、市場の特性が異なるからです。それを織り込んだパラメーターを探すべきです。

また、投資する人の投資スタイル、あるいはリスク・リターンのスタンスにも応じて、パラメーターを変えることもできます。長期の投資を考える人ならば、図3のような週足のRSIを使い、それに合わせたパラメーターを探すこともよいでしょう。あるいは、短期のハイリスク・ハイリターンを求める人は、日足のRSIのパラメーターを2日とか3日にする、あるいは時間足のRSIを使うなどの工夫をしても良いでしょう。

そのうえで、RSIの投資のルールを決めます。「70が買われ過ぎで30が売られ過ぎ」とするよりも、「80が買われ過ぎで20が売られ過ぎ」とすれば、より慎重な投資スタンスになります。あるいは、その中間で、75-25を基準とする方法もあります。これは、投資家がどこまでリスクをとれるのかにもかかっています。

さらに、売買ルールも工夫できます。例えば、

  • ①70を越えれば売り、30を下回れば買う
  • ②70より上の水準に数日とどまれば売り、30未満を数日下回れば買う
  • ③70を超えた後低下したが、再び70を越えれば売る(買いのケースは逆)

などが考えられます。

ただし、いったんパラメーターを決めたら、それはできるだけ変えないで維持すべきでしょう。これを頻繁に変えれば、まさにカーブ・フィッティングになってしまいます。また、パラメーターを変えないことで、相場の観察眼が高まります。例えば、RSIが30を下回ったら売られすぎという基準を設定していたとします。しかし、RSIが30未満であっても、株価が本格的に反転しないこともあります。これは、めったに起こらない現象でしょう。

このとき、RSIは役に立たないと嘆く必要はありません。めったに起こらないことが起きたということは、新たなトレンドが始まった可能性が高いと見るのです。チャートは、それを教えてくれます。そう考えれば、その動きに誰よりも早く対応することができます。チャートが効かないという事実も、相場を見る上においては、大きなヒントになります。

相場の徒然―VIXが上がる季節

以前のコラムで、株価の季節性についてお話しました。アノマリーの一種であり、理論的に説明できるわけではありません。それでも、相場にくせ(一定の傾向)があるならば、その性質を知っているだけでも、取引を有利に進める手助けになります。

(図4)米VIXの月間推移

図4は、米国のVIX(ボラティリティ指数)について、月ごとの平均をとったものです。VIXは市場参加者が将来どのくらい相場がぶれるか(動揺するか)を示す指標です。

この図の棒グラフを見ると、平均的には、2月~6月までVIXは低下していきますが、7月から9月にかけてVIXは上昇していきます。要は、秋にかけては、市場参加者は相場がぶれやすくなると感じる季節です。これは言いかえれば、市場参加者が、相場の先行きに対するリスクを感じやすい季節ということになります。

そして、この図の折れ線グラフで示した、今年のこれまでの状況を見ると、どうやら平均的な動きに近い動きになっています(今年はVIXの水準自体は、いつもより低いです)。実際に、8月の半ばに来て、やや神経質な動きになってきました。

ただし、VIXが示すのは、投資家の近い将来に対する予想であり、投資家の心理です。したがって、VIXが高くなれば、意外性のある株価(意外な高値や安値)が付く可能性があります。そういう意味では、押し目を買いたい中長期の投資家にとっては、新たな買いのチャンスとなる季節でもあります。

むさし証券チーフストラテジスト、北海道大学新渡戸カレッジ・フェロー。北海道大学を卒業後、山種証券(現SMBCフレンド証券)に入社。エクイティ・デリバティブ取引のディーラーとなり、その後、世界最大の穀物商社カーギルでの日本株運用部長、みずほ証券エクイティ部のトレーディング担当部長などを歴任。一時、ベンチャー企業の立ち上げに参画し、上場を果たした。さらに、アジア中心に海外勤務を経て現職。北大でもグローバル人材の育成を行っている。法政大学経済学修士、日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会正会員。著書に、「デイトレード入門」「株式先物入門」「FX入門」「初めての海外個人投資」(いずれも日本経済新聞出版社刊の日経文庫)など。
総合評価
(0)
Pocket