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【新・相場道五十三次 第42回】2018年は日本株への本格投資が始まるか。日本経済”60年の兆し”

【新・相場道五十三次 第42回】2018年は日本株への本格投資が始まるか。日本経済”60年の兆し”

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廣重勝彦
廣重勝彦

来年は日本株が一段と注目される年になりそうです。世界株高の中の出遅れ物色ではなく、新たな時代の始まりを予感させます。

長いこと蓄積された日本株の出遅れ感

世界的な景気拡大を背景に、各国の株価にフォローの風が吹いています。米国は2015年12月以降5度の利上げを行いましたが、NYダウは史上最高値を更新し続けています。来年2月には米連邦準備制度理事会(FRB)の議長がパウエル氏に代わりますが、前任のイエレン氏と同様に金融政策には慎重を期して当たり、景気や株価に急ブレーキをかけることはないと見られています。

とはいえ、先日の連邦公開市場委員会(FOMC)の予想ではFRBが来年3回の利上げをし、また再来年も利上げを継続する一方、FRBのバランスシートを縮小していくことが示されました。この状況を素直に見れば、今年大きく上昇した米国株(NYダウは年初来で約25%高)でしたが、来年の上昇ピッチがそれよりも緩やかになることが想定されます。

一方、日経平均株価は年初来で約20%上昇とNYダウの上昇率には届かず、引き続き日本株の出遅れ感が否めません。ただ、日本株の出遅れ感は、日経平均株価がNYダウよりも伸び悩んだり、PERが米国に比べて低いという短期的な話でだけではありません。過去20年にわたり蓄積されてきた割安感もあります。

日経平均は20年で10%しか上昇していない

図1は、20年前の株価を基準として、日米欧の株価を比較したものです。具体的には、1997年7月末時点の日経平均株価(日本)、NYダウ(米国)、そしてDAX(ドイツ)を100として、その後の動きをグラフ化しました。

ドイツ株が一番大きく上昇しています。「ドイツ」の横にある「527」は、今年の11月末現在の数値です。20年前の100が今は527、すなわち20年間で株価が5倍になったことを示しています。同様に米国株式も大幅に上昇しています。米国の数値は「439」ですから、20年間で4.39倍になりました。

これに対して日本株は110です。20年間で10%だけ上昇したというよりも、過去20年間にまったく上昇しなかったと言うべきでしょう。

株価が安くても日本株を買えない理由

ただ、「まったく上昇しなかったので日本株が割安だ」と言う理屈にはなりません。株式市場では、出遅れ銘柄がその後も上昇しないことは日常茶飯事です。それは出遅れになった理由があるためです。日本株がこれほどまでに出遅れているのは、たまたま投資家が日本株に注目していなかったというわけではありません。日本株を買わない理由、すなわち日本経済に問題があったからです。

その問題こそ、「失われた20年」です。日本経済がほとんど成長できなかった時期のことですが、経済のパイが大きくならなかったのですから株価が上昇しないのも当然です。経済が停滞した原因は、①不良債権問題、②アジア(台湾・韓国・中国)の追い上げ、③頻繁に起こる政権交代、④デフレ、そして⑤少子化問題などでした。

このような問題があるうちは、日本の株価がいくら安くても、長期投資家は手が出せません。たとえば、海外の年金資金を運用する機関投資家は日本株に投資することはできませんでした。委託者(年金をかけている人)に合理的な説明ができないからです。

これに対して、5年前に安倍政権が誕生した後の株価急騰は、海外投資家の大幅な買い越しがけん引していたとのご指摘もあるでしょう。しかし、これは海外「投資家」ではなく、海外「投機家」による買いです。いわゆるヘッジファンドなどが主な買い手だったのです。長期的に低迷してきた日本株だけに、「日銀の未曽有の金融緩和がカンフル剤となり急反発するはずだ」との思惑による投機買いでした。

また、上場投資信託(ETF)による投資が隆盛していることも背景にあります。ETFによる投資は米国では個人投資家に浸透していて、個人投資家は自分のお金ですから説明責任はありません。しかも、長期の投資家ですから大きなリスクを取ることができます。このようなETFを通じた海外の個人投資家の買いも日本株の上昇に一役買ったと見られます。

「失われた20年」に幕引きか

さて、割安感で買ってきた人から見れば、日経平均株価の最高値(1989年12月29日の38915円)からその後の底値(2009年3月10日の7054円)までの50%戻し(23985円)に近付けば、そろそろ売り時と考えてもおかしくありません。実際、この水準に迫った11月半ば以降に外国人投資家は売り越しに転じています。

その一方で、これまで日本株への投資を避けてきた「説明責任がある海外投資家」が、日本株投資に本格的に舵を切ってくる可能性は高いでしょう。というのも、「失われた20年」をもたらした要因が払しょくされたからです。そのような投資家は、50%戻し超えることは株価が高くなり過ぎたことを示すのではなく、日本が「失われた20年」から脱したことを株価が証明していると前向きにとらえるはずです。

実際、「失われた20年」の背景は大きく改善されました。

① 不良債権処理は終わりました。2008年のリーマンショックの際に、米銀の救済に回ったのが日本の銀行や証券会社だったことがその証拠です。

② 台湾・韓国・中国の経済的な追い上げに対して、日本企業は厳しいリストラと海外進出により経営効率(ROA―総資本利益率など)を改善し、世界標準でも戦える体制になり始めています。

③ 政権交代が頻繁に起こった20年とは異なり、2012年以降は長期安定政権です。

④ 消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は11月まで11か月連続で上昇。物価の水準そのものは高くありませんが、有効求人倍率が43年10か月ぶりの低水準になるなど将来にわたり物価を押し上げる要素は増えています。したがって、事実上デフレとは言えない状況でしょう。

⑤ 少子化問題についても、解決につながる糸口が見えます。AIや自動化技術などの新しいテクノロジーです。無人工場などが実現する第4次産業革命が始まったことで、人口が減少しても経済成長を維持できる基盤ができてきました。

このように日本独自の問題が解決してくれば、ようやく日本株に出遅れ感が出てきます。20年前とほとんど変わらない水準の日本株は、その間に4倍、5倍となった国の株価よりも魅力的に見えてもおかしくありません。2018年の日本株には、日本のファンダメンタルズに加えて、海外市場との比較感からも投資資金が入りやすいのではないでしょうか。

相場の徒然-「60年前の明るい未来」をふたたび

2018年は十二支でみれば「戌年」であり相場格言によれば「笑う年」ですが、それを超えて大きな転機となる兆しがあります。

この相場格言は、「辰巳天井(たつみてんじょう)、午尻下がり(うましりさがり)、未辛抱(ひつじしんぼう)、申酉騒ぐ(さるとりさわぐ)、戌笑い(いぬわらい)、亥固まる(いかたまる)、子は繁盛(ねははんじょう)、丑つまづき(うしつまづき)、寅千里を走り(とらせんりをはしり)、卯は跳ねる(うさぎははねる)」です。

図2の戌年の騰落率をみると、1958年は40.5%高、1970年は15.8%安、1982年は4.4%高、1994年は13.2%高、2006年は6.9%高と、マイナスになったのは1度だけ。また、戌年の日経平均株価は前年の高値を必ず一度は上回りました。今年のここまでの高値は22939円(12月25日)ですが、来年はこれを一旦超えるというのが戌年のジンクスです。

実は、十二支よりも干支(えと)に注目しています。来年の干支は「戊戌(つちのえいぬ)」です。一般に「干支」は十二支と思われていますが、正確には「十干十二支」のことで、十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)の組み合わせです。この干支の組み合わせ(十干と十二支の組み合わせ)は60通りとなり、一巡するのに60年かかりますが、これが「還暦」の所以です。

前回の「戊戌」は60年前の1958年(昭和33年)でしたが、2018年の状況と不思議な符号を見つけることができます。まず、東京オリンピック(前回は1964年、今回は2020年)の開催に向かう過程にあります。そして、1958年(昭和33年)は戦後の苦境時代から高度成長期への架け橋になった年でしたが、来年も新たな時代が始まる兆しがあります。

1958年の日経平均株価は高度経済成長期の入り口として、年間で40%の大幅上昇を記録しました。景気の面では、「神武景気」後のなべ底景気から「岩戸景気」への架け橋になった年でした。神武景気は1954年12月~1957年6月の31か月間、また岩戸景気は1958年7月から1961年12月まで42か月間にわたる景気拡大局面でした。

今回も長期の景気拡大局面にあります。2012年12月に始まった拡大は戦後2番目の長さを記録。2002年2月から2008年2月まで73か月続いた戦後最長の景気回復が射程に入っており、このままなら2019年1月に前回の記録を抜きます。このように、2018年は1958年と同様の景気拡大局面が予想されます。

ところで、1958年は今に語り継がれる重要なイベントがあった年です。列挙しますと、

  • 関門トンネルが開通(3月9日)
  • 長嶋茂雄選手(巨人)がプロ野球にデビュー(4月5日)
  • 皇太子殿下・正田美智子様(当時)がご婚約(11月27日)
  • 東京タワーが完成(12月23日)

そして、6年後の1964年に東京オリンピックが開催されました。

1958年は映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のイメージそのまま。戦後復興が峠を越し新しい時代の萌芽が芽生えてきた年です。本州と九州が関門トンネルで陸続きとなり、東京から福岡につながる経済大動脈が完成。また、電波塔である東京タワーはテレビ時代の先駆けとなりました。プロ野球スター長嶋選手やプリンセスが国民の間で人気沸騰した背景に、テレビという新しいテクノロジーがありました。テレビに映し出される華やかな映像は「戦後」時代の終わりを告げるものであったと同時に、国民に自信を回復させることで大量消費時代・高度成長時代につながっていきました。

これは2018年に重ね合わすことができます。第2の敗戦と言われたバブル崩壊、そしてその敗戦処理ともいうべき「失われた20年」がついに終了し、新しい時代への入り口となるのが2018年ではないでしょうか。

加えて国内で重要イベントが控えているために、政府・与党は積極的な経済運営を継続するとの思惑も2018年の相場を支える要因です。国内では、来年よりも2019年以降のイベントが注目されます。

  • 2019年4月 統一地方選挙、天皇陛下譲位
  • 2019年7月 参議院選挙
  • 2019年9月 ラグビーワールドカップ
  • 2019年10月 消費税増税
  • 2020年7月 東京オリンピック

ラグビーワールドカップと東京オリンピックは、日本が長期停滞(失われた20年)から脱し、新たな成長軌道に入ったことを示す重要なイベント。また、天皇陛下譲位という歴史的な節目に加えて、消費税増税を前に国政選挙・地方選挙があることから、2018年は安倍政権が引き続き積極的な経済政策を打ち出すという期待感が強まるでしょう。

このようにみると、2018年はわれわれが過去20年の間に忘れていた時代への入り口になるのではないでしょうか。世界経済の成長に日本だけが取り残された時代から、少なくとも世界経済の流れに素直についていくことができる時代です。そうなれば日本株への投資を控えてきた海外投資家、とりわけ海外年金などの機関投資家が改めて日本への投資を本格化する可能性が高そうです。

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