
【新・相場道五十三次 第34回】RSI vs. トレンド分析
前回に続いて今回も、引き続きRSIを深掘りした上で、トレンド指標に勝る点についてもご説明します。
RSIの使い方を詳しく見る
RSIの数字はゼロと100の間を往来し、ゼロに近づくと売られ過ぎ、また100に近づくと買われ過ぎと判断します。一般的には、RSIが70を越えれば買われ過ぎ、またRSIが30を下回ると売られ過ぎと判断します。さらに、RSIが上昇から下落に転じると、株価は目先の天井を付けたと見ます。一方、RSIが下落から上昇に転じると、株価は目先では底入れしたと見ます。なお、RSIに使うデータは、過去14日の終値(パラメーター14)とするケースが多いのですが、このパラメーターは対象とする金融商品(株式や為替など)ごとに変えても構いません。
この原則のもとに、RSIの使い方をさらに詳しくみていきます。もっとも興味深い方法は、RSIのトレンド分析やチャートパターン分析など、RSI自体をテクニカル分析することです。図1は、昨年9月以降のドル円相場(日足)とパラメーターを10に設定したRSIの関係を示しています。
この間は、70-30基準による売買でも、おおむね良い結果が残せましたが、RSIをテクニカル分析すると、より良い結果が得られた可能性があります。例えば、1月~5月までの期間に絞ったのが図2です。
実線で示したRSIは、1月半ばから3月半ばにかけて、下値を切り上げています。その間、点線で示した株価も全体としてはじり高でした。そこで、このRSIに、レジスタンスラインとサポートラインを引いてみます。その結果、図2のようにチャネルが確認できます。
3月半ばに、RSIはこのチャネルのサポートラインを割り込んできました。これにより、RSIは上昇基調をいったん終了したか、あるいは低下基調に変わった可能性が高いことが分かります。実際、この時がドル円相場にとっても転機でした。RSIがサポートラインを割り込んだ時には1ドル = 113円台でしたが、最終的には108円台まで下落しました。ドル円相場とRSIの動きを比較すると、チャネルをブレークしたRSIで見る方が、その転換を的確にとらえることができました。もう一つの例を見ます。3月以降のドル円相場を図3に示しました。
局面1では、RSIが実線と点線ではさまれたペナントを形成しています。そのうえで、この上値抵抗線を突破したことで、RSIは上昇転換しました。同時に、これによりRSIはダブルボトムを形成します。この時点のドル相場は111円台前半。その後、ドル相場は対円で上昇を加速させ、一時114円台に達しました。局面2では、RSIが点線(直線)を上回った時点で、小さいですがヘッド・アンド・ショルダー(三尊底)が完成しました。これは、RSIの底入れサインですが、その時点のドルは111円台前半。その後、114円台まで上昇しました。
このように、RSIは、それ自体をパターンやトレンド分析できることが利点です。これにより、RSIの転換点を知り、その結果として株価や為替相場の転換や加速を見通すのに役に立ちます。
ダイバージェンス
一般に、RSIにおいては「ダイバージェンス」が重要と言われます。ダイバージェンスとは、もともとは類似していたものが分かれていくことです。通常は連動して動いている株価とRSIが、次第に別の方向に動くのが、ダイバージェンスです。図4は、日経平均株価を対象にしたダイバージェンスの例です。
日経平均株価は5月下旬から上昇基調を強めて、今年のこれまでの高値20230円(6月20日終値)に向けて上昇基調を強めました。一方、RSIは、5月の上旬にはピークを付けており、株価が今年の高値を付けた段階でも、直近のピークまでは戻りません。そして、その後は現在まで下落を続けています。株価は上昇する一方、RSIは低下するというダイバージェンスが見られます。
RSIの教科書的な解釈では、株価の天井や底値でダイバージェンスが起きれば強力な売り買いのシグナルになるとされています。確かに、図4のケースでも、株価は高値を付けに行きますが、RSIは低下を続けていました。その後も株価は高値圏を維持していましたが、RSIは時間とともに低下を続け、日経平均株価はRSIの動きに引っ張られるように8月中旬からは下落に転じました。このように、株価の高値圏や安値圏で現れるダイバージェンスは、トレンドの一時停止、あるいは転換を示すということは言えそうです。
ただ、ダイバージェンスを使って取引をするということについては、かなりのむずかしさがあることも確かです。このケースでも、RSIは5月以降3か月にわたり下落基調にあるものの、実際に株価が下がりはじめたのは8月に入ってからのことです。実際の投資では、どのタイミングで売れば良いのかや、そもそも本当に売っても良いのかといった迷いが大いに生じるでしょう。
RSIのもう一つの利点
さて、RSIは相場の勢いを計るモメンタム分析の一種ですが、相場の方向を探るトレンド分析に勝る点があります。それは、RSIはトレンド分析よりも早くトレンドに乗るため、株価の上昇からより多くの利益を得られる可能性があることです。例として、今年の3月初めから5月上旬までの日経平均株価のチャートにRSIを重ねたものを見てみましょう。
RSIは、4月14日に30を割り込み、株価が売られ過ぎと見られるゾーンに入りましたが、そこからRSIは反転して4月18日には33まで回復しました。冒頭で述べたRSIの原則に従えば買いシグナルです。4月18日の終値は18418円。その後、株価は5月11日には19961円まで上昇しました。一方、同じ期間について、移動平均線を適用したのが図6です。
5日移動平均線と25日の移動平均線を使って、5日移動平均線が25日移動平均線を下から上に突き抜けるゴールデンクロスを待ちます。これは、4月26日に現れましたが、この時の日経平均株価は19289円でした。
ゴールデンクロスでは、RSIの買いサインが出た4月18日よりも、株価は4月26日の終値から4月18日の終値を引いた分だけ上の水準でした。この間、日経平均株価の短期的な底値は4月14日の18335円、また短期的な天井は5月11日の19961円であり、その値幅は1626円でした。仮に、この天井で株価を売ったとすれば、RSIではこの最大値幅の95%が取れたことになります。
(19961円-18418円)÷1626円=0.95
一方、ゴールデンクロスでは、最大値幅の41%でした。これは、RSIの半分以下です。
(19961円-19289円)÷1626円=0.41
この例では、トレンドライン分析であるゴールデンクロスよりも、モメンタム分析の方がトレンドをきちんととらえています。これは、RSIの隠されたアドバンテージ(利点)と言えます。ただし、このアドバンテージを得るには条件があります。RSIによって示された相場反転の方向が、本来のトレンドの方向に一致したときだけ有効だということです。
一定の状況下に限ってゴールデンクロスより有利なRSI
図5には載せていませんが、日経平均株価の200日移動平均線は上昇していました。すなわち、トレンド分析により、中長期的に株式は上昇トレンドにありました。RSIによる株価の反転サインは、このトレンドに乗るタイミングとして機能したわけです。
したがって、RSIの反転サインを利用する際には、それが本来のトレンドの方向に沿った時だけに限定することが重要です。トレンドとモメンタムを組み合わせることで、より大きな投資の成果を得られる期待が高まります。
相場の徒然:かみついた犬には近づかない
最近は、相場の不透明感が広がっていることで、「7のつく年」のアノマリーがよく話題になっています。西暦の末尾に7のつく年の相場は波乱となるというお話です。たしかに、1987年はブラックマンデー、1997年はアジア通貨危機、そして2007年はパリバショックあるいはサブプライムショックがあり、株価が急落する場面がありました。そして、今年も2017年で7のつく年です。
7のつく年のアノマリーは、昔からあったかもしれませんが、私が最初にこのことを知ったのは、伝説のトレーダーであるラリー・ウィリアムズ氏の講演でした。
私はその当時、デリバティブのディーラーでしたから、それがマジック(手品)ではないことはすぐに分かりました。当たり前ですが、日経平均株価を個人が動かすことはできませんから。どうしてこのようなことができるのだろうと、不思議でしたし、驚きもしました。
その後研究をしてみると、ラリーさんの手法は、相場の傾向を統計的に見つけることがベースにありました。7のつく年のアノマリーもその一部です。理論的でなくても、現実のトレードで使えるものは使っていこうという姿勢です。その時にラリーさんが言っていたのは、「かみついた犬には近づかない」ということ。たとえ血統の良い犬であったとしても、かみついた犬には気を付けなさいということです。理屈よりも経験則の重要性を強調していました。
その後は、テクノロジーの発達で、このような手法の研究も相当進んできており、その当時の必勝法はすでに効果がなくなっているかもしれません。ただ、資産運用の世界では、相変わらず経験が重要という点は変わりません。
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