
【新・相場道五十三次 第4回】株初心者は何を買えば良いのか?PERから投資する価値を図る
はじめて株式を買おうとするとき、まず問題になるのは、「何を買えばよいのか?」でしょう。そこで、インターネットで調べてみる、あるいは雑誌を買って銘柄探しを始めることになります。あるいは、証券会社のリポートを読み、証券会社の担当者に銘柄をたずね、さらに、株式投資の先輩に相談する人もいるでしょう。
このような努力は、無意味ではありません。暗中模索だとしても、次第に知識は身につくからです。しかし、注意していただきたいのは、このような形で見つけた銘柄に、いきなり投資するのは問題があります。このままでは、他人の意見をそのまま受け入れているだけだからです。自分でしっかりと投資対象の中身を吟味しなければ、投資の力はつきません。
また、他人任せは、大きなリスクを負ってしまうことが少なくありません。投資では、自分自身の投資方針、そして自分自身の投資基準をしっかりと作ることが大事です。
この記事のもくじ
ウォーレン・バフェット氏の考え方
その際に参考にしたいのは、株式投資により世界有数の富豪となったウォーレン・バフェット氏の考え方です。バフェット氏の研究者によれば、彼の投資哲学は、
- 1.長期投資
- 2.企業価値を重視
- 3.集中投資
に集約されます。このうち、1.長期投資と3.集中投資は、当てはまる人と当てはまらない人に分かれるのですが、2.起業価値を重視ということについては、どの投資家にとっても異論がないでしょう。
まずは「企業価値の重視」による投資に注目してみましょう。実は、バフェットは、この件について、彼の大学講師であり、「バリュー投資の父」とも呼ばれるベンジャミン・グレアムの考え方を踏襲しています。グレアムの基本的な考え方は、企業価値を把握し、それよりも安く取引されている株式に投資するべきだというものです。
企業価値をどのように測るかが問題
当たり前のようですが、この考えを実際に応用するには、難しい問題があります。一つは(1)企業価値をどう測るのかという問題、そして(2)株価が本当に企業価値を反映するのかという問題です。このうち、(2)の問題については、グラハムは、「時間がかかるとしても、株価は必ず真の価値に近づく」と考えていました。理論というよりも信念です。ダウ平均を開発したチャールズ・ダウが提唱した、「ダウ平均はすべての事象を織り込む」に相通じるものがあります。
では、(1)の問題である株式の価値はどのようにして評価したらよいのでしょうか。そのヒントをくれるのが、「理論株価」という考え方です。通常、私たちが目にする株価は、取引所での売買を通じて決まった株価で、インターネットや新聞で確認することができます。これに対して、理論株価は、文字通り理論的に導き出された株価のモデル(ひな形)です。そのモデルはたくさんありますが、最もシンプルなものは、「株式価値は、投資家(株主)が将来受け取るキャッシュフロー(利益)の現在価値」と定義します。現在から将来にかけて会社が稼ぎ出す利益(株主の利益)を、いまの価格で評価したものが理論株価です。
この考え方は、次の式で表すことができます。
理論株価 = 一株当たり利益 / 金利
企業が毎年稼ぐ利益(一株当たり利益)を、金利で割ったものが株価になるということです。この式によれば、例えば毎年100円の一株当たり利益を稼ぐ企業があり、金利が1%であれば、
10000円 = 100円 / 1%
の計算で、理論株価は10,000円になります(なお、分母の1%は0.01として計算)。もっともこのモデルは、企業が毎年同じ利益(この例では100円)を稼ぎ続けることを前提としているので、企業利益の増減など、現実に起こることさえ考慮されていません。
ただ、このモデルは、私たちに、株式の価値は将来にわたる企業利益と、金利が大きく影響することを教えてくれます。企業利益が拡大すれば(式の分子が大きくなれば)株価は高くなり、また金利が高くなれば(式の分母が大きくなれば)株価は下落するということです。利益と金利が、株価を決める大きな要素なのです。
一株当たり利益(EPS)に注目する
株価を評価するには、最初に企業が稼ぎ出す利益をしっかりと見極める必要があります。その際に、投資の観点からは企業の当期純利益を発行済み株式数を割ることで求める「一株当たり利益(EPS)」に注目します。
EPSは投資家にとって重要な要素なので、様々な角度から分析がなされます。EPSの大きさは、ストレートに株価を決める力があるからです。さらに、株主の投資が報われているのか、あるいはその株式は投資すべきかどうかを図るためにもEPSが使われます。とりわけ、EPSを株主資本利益率(ROE)や株価収益率(PER)という指標に組み込むことで、投資の成果や株式の価値を知る具体的な手掛かりが得られます。
PERは次の式で求めます。
PER = 株価 / 一株当たり利益
PERは、株価が一株当たり利益の何倍になっているかという指標です。例えば、一株当たり利益が100円の会社の株価が1000円であれば、PERは次の通り10(倍)です。
10倍 = 1000円 / 100円
このPERはどのように使うのか。PERが10倍であれば、株価は一株当たり利益の10倍です。つまり利益を10年積み上げれば投資資金に追いつく。言い換えれば、その株式を買ったら、投資資金を回収するには10年かかるということです。すなわちPERが10倍ならば、今の株価は10年先までの利益を買っているという見方です。
その上で、一般にPERは株価の割高・割安を示す指標として使われます。同じ業種の株式ならば、PERが5倍の株式はPERが30倍の株式よりも割安に放置されていると見るのです。
PERが5倍というのは、投資家がその企業の実力を十分に評価していないということ。逆に、PERが30倍というのは投資家がその企業について楽観的に見過ぎていると考えます。したがって、ほかの条件が同じならPERが30倍の株式よりも5倍の株式の方が魅力的ということになります。
PERが全てではない
ところが、現実の市場では、同じ業種の中でも、高いPER株式の価格が一段と上昇する一方、低いPER株式の価格がそれほど上がらないといった現象が、しばしば見受けられます。
私見ですが、PERは次のように考えられます。PERが10倍の株式に投資するということは、投資家が今後10年間にわたり、投資時点での一株当たり利益が継続すると見込んでいる結果だと解釈すると、PERが5倍の株式は、投資家が、今の一株当たり利益は5年しか続かないとみているということになります。逆にPER が30倍ならば、投資家はその企業の一株当たり利益が30年間続くと期待して買っていることになります。すなわち、PER5倍の株式よりもPER30倍の株式の方が魅力的に映っているということになります。そうであれば、PERが5倍の株式よりもPERが30倍の株式が活発に買われても不思議ではありません。
とりわけ、長い期間の利益を期待しているのであれば、足もとの利益の変化に対して、株価は敏感に反応するはずです。PERが30倍の銘柄であれば、当期の利益の増加がわずかでも、30年分を積み上げれば大きな変化になるからです。逆に、PERが5倍の株式は5年分の利益を見込んでいるにすぎないとみれば、足もとのわずかな利益の増加は、30年分の利益の増加に比べてわずかです。
したがって、足もとで同じだけ利益が増える見込みだったら、PERが5倍の株式よりも、PERが30倍の株式の方が価格の動きが大きくなるとみることができます。
PERは期待とリスクの関係
これに対して、PERが期待とリスクの関係を示しているという解釈からは、13倍のときよりも20倍の時の方が、リスクが高くなったものの、その分だけ高いリターンが期待できる時期に来たということになります。したがって、PERが20倍で売るかどうかは、投資家の姿勢によりけりということになります。
リスクを取りたくない人は、投資を手控えるべきでしょう。しかし、リスクをある程度取ることができる人なら、手控える必要はありません。むしろ、高いリターンが期待できる場面として、注目する局面でしょう。
PERが13倍など株価が低迷しているときには、興味深いことに、投資家の多くが「株式はリスクが高い」として取引を敬遠することが明らかになっています。しかし、これまで述べたように、その時はPERが極端に低い、すなわちリスクが歴史的に低いときだと解釈すれば、リスクを大きく取りたくない人こそ株式投資を検討すべき時だったのではないでしょうか。
相場の徒然:相場のリスク
相場は、ハイリスク・ハイリターンかローリスク・ローリターンです。高いリスクをとれば、大きな利益が得られるかもしれませんが、逆に大きな損失を被ることもあります。そこで、損失を小さくしようとしたならば、利益も小さくなります。リターン(利益)は、負担するリスク(損失)の大きさに比例するのです。
したがって、リスクを大きく取りたくないというのであれば、PERが5倍の企業に投資するのが良いことになります。一方、リスクは大きいものの、より大きな利益を得たいという人はPERが30倍の株式を買うことも考えられます。
このような解釈によれば、リターン(利益)を得るために、リスクをどこまでとることができるかという指標として、PERを利用できることになります。PERは、株価が割高か割安かは示す指標だけではないということです。
この私見は、日経平均株価のPERの解釈にも応用できます。PERが割高・割安を示す指標という一般的な見方によれば、PERが13倍の時は割安だから買いの時期であり、PERが20倍の時は割高だから売りの時期であるということになります。
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