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【新・相場道五十三次 第5回】株式投資の基本は「会社の利益」を知ること

【新・相場道五十三次 第5回】株式投資の基本は「会社の利益」を知ること

廣重勝彦
廣重勝彦

今回は、株価と会社の利益の関係についてお話します。会社の利益を知ることは、株価の動きを理解し、さらに株価の見通しを立てるための基礎になるのです。

利益が株価を作る

前回のコラムで株価の理論価格を説明しましたが、そこでは利益、とりわけ一株当たり利益が重要な役割を担っていました。そこで、今回は一株当たり利益(EPS)に注目します。EPSは、その大きさと変化で比較できます。具体的にはEPSの金額と、EPSの増減です。

まず、前者のEPSの金額について考えてみます。トヨタ自動車(7203)のEPSは2016年3月期で741.36円です。これに対して、同業の日産動車(7201)のEPSは同期比で125.00円でした。トヨタのEPSは日産の5.93倍です。

一方、2017年1月30日時点での両社の株価は、トヨタが6705円、日産が1135.5円。すなわち、トヨタの株価は日産の株価の5.90倍です。トヨタの株価は日産の株価よりも6倍近く高いのですが、これは、トヨタのEPSが日産のEPSの約6倍大きいことによるものです。すなわち、一株当たりの利益の大きさが、株価の水準を決めているということが言えます。

EPSの変化が投資には重要

しかし、EPSの大きさが株価水準を決めるとして、それだけを取り出して比較しても投資の役には立ちません。EPSの金額そのものは、株価の現状を説明するものにすぎなからです。投資で利益を上げるには、株価が動く要因を考えなければなりません。投資においては、EPSの増減が注目されます。前回示した株価の理論式は、次の通りでした。なお、分母は本来「割引率」ですが、ここでは直感的に理解しやすい「金利」に置き換えます。

理論株価 = EPS / 金利

これによれば、分子にある利益が増加すれば株価は上昇し、また利益が減少すれば株価は低下することになります。

これを具体的に見るために、信越化学工業(4063)について、EPSと株価をグラフに示しました。このグラフは、四半期ごとのEPSと株価の関係を示しています。全体として、利益と株価が同じような動きを示していることが見て取れます。

株価とEPS

なお、統計学では2つの変数がどれだけ連動しているかを示す指標として、相関係数があります。グラフに示した期間において、株価とEPSの相関係数は0.60であり、統計学の観点からみても、一定の相関があると判定できます。

EPSの予想を探す

ということで、EPSが株価に大きな影響を与えることが確認できましたが、ここで大きな問題があります。EPSの変化は、過去の株価の動きを説明しているだけであり、これでは投資で利益をあげることはできません。投資家である私たちが知りたいのは、将来の株価の動きであり、そのためには将来のEPSを知ることが必要です。当然ですが将来のEPSは予想に過ぎないため、自分自身で予想を立てる必要があります。

一つの方法として、アナリスト予想の活用があります。証券会社や運用会社には証券分析のプロがいて、証券アナリストと呼ばれています。その仕事の中心は、EPSを予想することです。彼らは、経済動向、業界の動向、そして企業の状況を分析して、独自にEPSを予想します。

これは、証券会社などが発行するアナリスト・リポートなどで確認することができます。このリポートは、取引口座がある証券会社から入手するのが通常ですが、すべての会社をカバーしているわけではない点は留意が必要です。

もっと簡便に多くの会社のEPSの予想を知るためには、会社四季報(東洋経済出版社)や会社情報(日本経済出版社)などが便利です。各社の記者が企業調査に基づいて、EPS予想を出しています。

さらに、多くの上場会社は、四半期ごとの決算発表と同時に、会社自ら業績予想を出しています。これらを見ることにより、その会社の「EPS予想」を知ることができます。

予想を株価が織り込む

ただし、ここで注意しなければならないのは、アナリストや上場会社が業績の予想を出せば、株価は直ちにそれを反映することです。この現象は、「株価が業績予想を織り込む」と表現されます。

仮に、有力なアナリストがEPSの見通しを引き上げれば、多くのケースでは、株価はそれに沿ってすぐに上昇します。したがって、業績予想が出てからその株を買いに行っても、株価はすでにその業績予想を反映しており、株価の値上がり益は期待できません。

したがって、好業績が予想される株を買っても、なかなか値上がりしないという現象が起こります。あるいは、値下がりすることさえあります。その多くは、好業績の予想がすでに株価に織り込まれているためです。

投資家自身の工夫が欠かせない

このように見ると、専門家の予想だけでなく、私たちも自分自身で工夫して、業績の先行きについて、ある程度の見通しを付けることが必要です。この努力が、投資の成績を上げるコツです。ただ、証券分析のプロでもないのに、業績の見通しを付けることはできるでしょうか。私は、プロのような高い精度ではないとしても、ある程度はできるのではないかと考えています。

私たちは、アナリストや記者のように会社に直接取材はできませんが、手元にある資料を読めば、将来のEPSの方向や、増減の程度をある程度は見通すことはできるでしょう。そのうえで、業界や会社に関する記事を読めば、他人の書いた文章の受け売りで投資をするよりも、良い方向に進むでしょう。

その際に、もっとも有用な情報は会社が発表している過去のデータです。上場企業は有価証券報告書として、貸借対照表(B/L)損益計算書(P/S)を発表しているので、これらを参考にできますが、そこまで見るのは大変だという人は、少なくとも会社四季報や会社情報を使って調べてみましょう。

そこで、注目していただきたいポイントは、次の2点です。

  • 過去5年のEPSの伸び(前年比伸び率)がどうか。
  • 過去半年の四半期EPSの伸び(前年比伸び率)はどうか。

このうち、1.は長期のEPSのトレンド(傾向)です。四季報では「一株益(円)」という項目で、過去5年分を確認できます。また、2.はその長期のトレンドが、最近は加速しているのか鈍化しているのかを確かめるために使います。四季報では四半期データはありませんが、半期のEPSの動きは確認することはできます。

長期投資を目指すならば、過去5年のEPSの方向を確かめておく必要があります。投資の対象になる会社は、基本的には、EPSが右肩上がり(増加基調)にある会社です。EPSがでこぼこしていることや、減益(利益が前年よりも減少する状態)のケースがあれば、その会社への投資は慎重にならざるを得ません。増益基調であっても増益率が低ければ、投資対象としては魅力に欠けます。

四季報や会社情報を見るときには、EPSに注目して、このような観点から考えてみてください。それを繰り返してみることで、自分の利益予想も次第に精度が上がると見られます。

会社四季報よりも詳しい情報(四半期でのEPSなど)を取るためには、やはり会社のホームページに当たる必要があります。ただ、「有価証券報告書」を読むのは大変だと思われる方には、「決算短信」の閲覧をお勧めします。これは、企業の業績を簡潔にまとめたもので、詳しい会計の知識がなくても、理解できます。そこで、これを用いてEPSのトレンドを探っていきましょう。

人を見るように会社を見る

ただ、注意点はあります。過去のデータを使って過去のトレンドを把握しても、それは過去のことであり、未来の予想ではありません。未来において思わぬ展開となるリスクが常にあることは、念頭に置く必要があります。

例えば、ある人のこれまで生き方、生活、さらに過去の実績や姿勢を見れば、その人の将来はかなりの程度予想できるでしょう。それを考えると、会社についても、過去の実績や経営姿勢を確認することで、その会社の将来をある程度想像することができるはずです。

なお、分析するのにどの程度の期間のデータが必要なのか、どれだけの増益率が必要なのかについては、さまざまな考え方があります。これに関して、著名投資家であるウィリアム・J・オニールは、高いパフォーマンスを挙げた株の4分の3は、その前の3年間にEPSが30%以上増加していたと指摘しています。このような条件を満たす会社はかなり絞られてきますが、高いEPSの増加を続けた会社には、将来についても有望なものが多いという意味では参考になります。

相場の徒然:高利回りが魅力の不動産投資信託(REIT)

2017年1月28日に東京証券取引所で開催された東証REITの説明会「J-REITファン2017」に参加してきました。不動産投資信託(REIT)の運用会社などが多く参加し、かなりの数のREITを俯瞰できたことで、なかなか良い企画でした。

REITは、株式よりも高い配当利回りが魅力です。ただ、将来において、今の超低金利が終わり金利が上がることがあれば、REITのコストが上がることは注意が必要です。したがって、REITは分散投資の対象の一つとして検討することが大事でしょう。

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