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ボラティリティを感じる

ボラティリティを感じる

先週のコラムでは、最近話題になっている「相場のこう着」について検討しました。とりわけ、7月の相場がはらみ足であったことを取り上げてみました。はらみ足は、今月の高値が前月の高値よりも低く、かつ今月の安値が前月の安値よりも高い状況(今月の足が前月の足の範囲に含まれる)でした。

この状況を受けて、市場参加者の関心が、相場の方向だけでなく、相場がいつ大きく動くのかに向かっています。言い換えると、市場参加者が、「リターン(利益)」だけでなく「リスク(損失)」に対して注目し始めたということです。今回は、ここで言うリスクについて考えてみます。

相場のぶれの感じ方

「ボラティリティ」という金融の専門用語が、新聞でもしばしばみられるようになりました。また、テレビの市況関連ニュースでは、「VIX(ビックス)」という言葉も使われます。これらは何を意味しているか?

(図1)株価推移のイメージ(1)

この問題を考えるために、まず投資の目的をはっきりさせます。それは、利益(リターン)を得ることです。例えば、株価1000円の株式に投資して、1年後に株価が1200円になれば、利益は200円です(図1参照)。この200円を稼ぐことが、投資の目的です。

これを年率に換算すると、以下の通り、リターンは20%です。
((1200円-1000円))/1000円×100=20%

ただし、通常は、1000円の株価が、図1にあるような一直線で1200円になるわけではありません。上下の動きを伴います。上下にぶれながら、最終的には1200円にたどり着く形が普通です(図2参照)。

(図2)株価推移のイメージ(2)

図1と図2はともに、1年後には1200円になっていますので、リターンは同じです(年率で20%)。しかし、途中の株価の経路(実線)は、図2では大きくぶれています。

図2では、半年後の株価は、当初の1000円を下回り、損失となっていました。その後株価が急回復したことで、1200円に達しました。この動きを見ると、図1のケースより図2のケースの方が、直観的に、リスクが高い(投資の危険性が高い)と感じられるのではないでしょうか。

もちろん、図2では、最初の数カ月は、図1よりも上昇スピードが速い(図1よりもリターンが大きい)場面がありました。ただ、多くの投資家は、そのような有利な場面を評価するより、一時は損失が発生した危険性に注目するものです。したがって、多くの投資家は、同じ結果が予想されるのならば、図2の株価の値動きよりも、図1の値動きの方を選びたいと考えるでしょう。

ボラティリティのイメージ

図2に見られるような株価の「ぶれ」は、ボラティリティと言われます。予想されるリターンから、全体的にどの程度かい離するか、そのかい離の度合いを示します。そして、予想するリターンから結果が外れることは、投資のリスクと言えます。すなわち、ボラティリティはリスクを表しています。

(図3)株価推移のイメージ(3)

図3では、○aと○bのふたつの株価推移が示されています。○aに対して○bは、上昇するときは大きく上がりますが、下落するときは大きく下がります。結果的には、同じリターン(1年後には同じ水準に上昇)でしたが、○bは○aよりもボラティリティが大きいと判断されます。

ところで、予想されるリターンが20%で、株価にぶれがなければ、図1のようなグラフになります。株式ではこのようにコンスタントに上昇することはないのですが、これが預金ならあり得ます。

(図4)預金のイメージ

いま、年率6%の預金を考えます(ご説明のための仮定です)。100万円を銀行に預ければ、1年後には金利として6万円が入りますから、元利合計で106万円になります。ただし、預金は毎月着実に金利がつきますから、毎月一定のペースで元利金(元本+金利)が増加します。

1年で6%の金利は、1カ月では0.5%(=6%÷12カ月)です。銀行に預けて1カ月後には、元利合計は100万5,000円(=100万円+100万円×0.5%)。2カ月後には同101万円(100万円+100万円×0.5%×2カ月)。6カ月後には同103万円(=100万円+100万円×0.5%×6カ月)、そして9カ月後には同104万5,000円(=100万円+100万円×0.5%×9カ月)となります。これらの各月の結果を線で結べば、図4のような右肩上がりの直線になります。

直線になるということは、ぶれがないということです。ぶれはボラティリティでしたから、預金にはボラティリティがないということ、すなわち預金にはリスクがないことです。直線で示される預金はリスクのない商品です。逆に、直線にならなければ、それはリスクがあるということです。

なお、図3では、比較的ぶれが小さい○aと、ぶれが大きい○bが示されていますが、いずれも1年後には1200円になり、年間では20%のリターン(利益)が得られました。では、次の1年を展望して投資しようとするとき、○aと○bのどちらが、投資先として有望でしょうか。

それは、○aです。ボラティリティが小さいからです。○aと○bの予想される利益が同じなら、ボラティリティに示されるリスクが小さい○aの方が有利ということになります。

恐怖指数

以上がボラティリティのイメージですが、市場全体のボラティリティも存在します。それを示す指標の代表例が、米国市場ではVIX(ボラティリティ・インデックス)です。これは、米国の市場参加者が予想するボラティリティを示します(オプションの価格から、市場参加者が、今後の相場のぶれをどの程度に見積もっているかを推定したものです)。なお、VIXは過去の相場のぶれではなく、将来の相場のぶれを予想したものです。

仮に、VIXが上昇すれば、市場参加者が、今後相場が一段とぶれると読んでいるということです。これは、相場の先行きに対して、投資家はいまよりも警戒感を持ち始めたということを示します。もちろん、VIXの上昇は、相場が下がることを意味しているわけではありません。相場が、上下いずれかの方向に、一段と大きく動くのではないかという予想を示します。

ただ、行動心理学という学問の研究により、人間は利益よりも損失に対して敏感に反応することが分かっています。この観点からは、予想するボラティリティが上がっていることは、市場参加者は、利益が想定よりも大きくなるというよりも、損失が想定よりも大きくなると予想し始めたと考えるべきでしょう。

この意味で、VIXは、「恐怖指数」とも言われます。投資家が相場の先行きを怖がるにつれて、数値が上がるという意味です。「恐怖指数」という表現は誇張ぎみですが、市場心理を知る上での参考にはなります。

なお、日本でも、同様の指数があります。日経ボラティリティ指数です。こちらも、日本のオプション市場の参加者が予想する将来のボラティリティです。

相場の徒然―低いボラティリティの思い出

VIXは、今年7月21日には過去最低水準(9.36)まで低下しました。超低水準のVIXからは、市場参加者が、しばらく相場のリスクは低いと見ていると判断できます。これは、中長期投資の立場からは利益の確定売りを先延ばしにする要因であり、短期の投機の立場では、新たな買いが入りやすい環境と言えます。この観点からは、低いVIXは、NYダウが史上最高値を更新するのに符合した動きでした。

一方、低すぎるVIXを警戒する向きもあります。低水準のVIXは、市場に楽観が横行していることを示していると見ているのです。いまの相場は落ち着き過ぎているから、逆に波乱のエネルギーがたまっているのではないかと警戒しているのです。

(図5)VIX

かつてもこのようなことがありました。2006年~2007年のころです(図5参照)。

その当時、極めて低いボラティリティについて、私は、知り合いのファンドマネージャーから、「なぜ、こんなにボラティリティが低いのですかね?」と聞かれたことを今も覚えています。かれは、相場が動かないので、投資してももうからないと嘆いていました。

また、不動産ファンドを運用しているトレーダーからは、「都心の物件は高すぎて投資収益が低下しているのだが、この先も不動産を買っていいのかどうか?」という質問を受けたことを思い出します。このころ、内外の投資ファンドは、都心の不動産の価格が高くなりすぎたので、地方都市のマンションにも積極的な投資を始めていました。

この時の低ボラティリティの要因は、のちに明らかになります。米国のサブプライムローンに代表されるリスク抑圧の動きでした。

大手の機関投資家などがリスクを吸収し(デリバティブによる保証を行い)、またリスクを軽く見積もる格付けなども横行した結果、見せかけのリスクが低くなり、ボラティリティが低下していたのです。その結末は、サブプライムショックやリーマンショックとして現れました。これを契機に、封印されていたリスクが一気に噴出し、株価の暴落と、世界的な景気後退をもたらしました。

というトラウマ(心的外傷)を持つ人は、現在のボラティリティが、その当時の水準を下回ることで、相場の先行きを警戒しているのです。もちろん、いまは10年前とは違うという人の方が多いのも事実です。一方、「今回は前回とは違う“This time is different.”」は、毎度、市場参加者が投資判断を間違えるときに使う言葉という指摘もあります(”This time is different.”は、カーメン・ラインハート、ケネス・ロゴフ著『国家は破たんする』参照)。

個人的には、悲観論にはくみしていません。10年前にはなかった要因(例えば、急速にIT技術が発展したことによる情報の共有)などが、ボラティリティを低くしているのではないでしょうか。それでも、「今回は前回と違うの?」という疑問は頭の片隅にいつも置く必要はありそうです。

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