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モメンタムで相場の流れをつかむ

テクニカル分析の勉強は、これまでパターン分析、トレンド分析、そしてモメンタム分析と進んできました。先週はRSIを検討しましたが、今週はさらにマニアックに、%Rをご説明いたします。

ニッチな%R

相場の勢いを示すテクニカル指標はオシレーターと呼ばれ、RSIがその代表の一つです。今回は、RSIにやや似た概念である%Rについてお話しいたします。

RSIは投資家のなかではかなりポピュラーな指標です。ですので、テレビなどで解説するときも、RSI自体の説明については簡単にすませて、はなしを進めることができます。

一方、%Rは、テクニカル分析についてかなり詳しい人しか知りません。%Rは有効なテクニカル指標だという評判はありながらも、実際に使っている人は限られているようです。それでも、ここで%Rを持ち出すのは、%Rをチェックすると、相場の状況がつかみやすくなるからです。また、RSIに比べて、計算も簡単です(Excelなど表計算ソフトを使えばですが)。

そこで、以下ではRSIと対比しながら、%Rを見ていきます。%Rの考え方が分かると同時に、RSIの理解も深まるはずです。

RSIの計算とその意味

まずRSIの計算方法を確認します。

RSI=100-100/((1+RS))・・・①

ここで、
RS=過去の一定期間における上昇した日の上昇幅の平均/過去の一定期間における下落した日の下落幅の平均・・・②

②式におけるRSは、過去の一定期間(例えば過去14日間)において、上昇した日の上昇幅の平均が、下落した日の下落幅の平均に対して、どれだけ大きかったかを表します。

ここで注意したいのは、平均値を求める際に、過去の一定期間の日数で割ることです。期間が14日ならば、上昇した日の上昇幅を合計して14で割ったものが式②の分子です。下落した日の下落幅の合計を14で割ったものが式②の分母になります。

したがって、ここでいう上昇幅の平均は、過去14日間に上昇した幅を、1日当たりに直したものです。また、下落幅の平均は、過去14日の下落の幅を1日当たりに直したものです。ですので、RSは、1日当たりの上昇力が、1日当たりの下落力に対してどれほどの大きさになるかを示します。

さらに、式①を用いて、そのRSの数値を、0から100の数値に変換します。これにより、RSIは、株価の上昇圧力が、下落圧力に対してどれだけ強いか(弱いか)を0から100までの数値で示します。

RSIが100に近づけば買い圧力が強い一方、0に近づけば売り圧力が強いということになります。そのうえで、テクニカル分析では、RSIが100にかなり接近すれば、買い圧力が強すぎるため、この状況は長くは続かないと解釈します。すなわち、買われ過ぎと解釈し、売りのタイミングと見ます。また、0に接近すれば売り圧力が極端に強いが、このような状況は長続きしない。すなわち、売られ過ぎと解釈し、買いのタイミングと見ます。

%Rは高値から距離

%Rは、米国の著名投資家であるラリー・ウィリアムズ氏が1973年に発表したオシレーターです。%Rの計算式は次の通りです。

%R=(最高値-終値)/(最高値-最安値)×100・・・③

ただし、ここでの最高値と最安値は、過去一定期間における最高値と最安値です。終値は、計算当日(本日)の終値です。例えば、過去14日のデータで計算するとすれば、最高値は過去14日間における最高値(取引時間中の最高値)、また最安値は過去14日間における最安値(取引時間中の最安値)です。

したがって、式④の分母は、過去14日間に株価が動いた最大値幅です。分子は、今日の終値が過去14日間の最高値からどれだけ離れているかを示します。その結果、式③すなわち%Rは、今日の終値が、過去14日間の株価の値動き(高値・安値)のうち、どこに位置しているかを示しています。式③によって、そのことを0から100のまで数値で表します。

仮に、今日の終値が過去14日間の最高値に近ければ、式③の分子(=最高値-終値)は小さくなります。すなわち0に近づきます(今日の終値が過去14日間の最高値ならば、0となります)。

一方、今日の終値が最高値から離れている(終値が過去14日間の最安値に近い)ならば、分子(=最高値-終値)が大きくなりますから式④の結果は100に近づきます(今日の終値が過去14日間の安値であれば、分子は分母である「最高値-最安値」に一致し、式③の値は100になります)。

%Rの基本的な解釈は、%Rが0に近い時は、今日の終値が過去14日の最高値圏にあるから、相場は買われ過ぎと見ます。また、%Rが100に近い時は、今日の終値が過去14日の最安値圏にあることから、相場は売られ過ぎということになります。

RSIは勢い、%Rは位置エネルギー

RSIでは100に近いと買われ過ぎで0に近いと売られ過ぎとみますが、%Rでは100日に近いと売られ過ぎで0に近いと買われ過ぎという違いはあります。ただ、RSIと%Rは、売られ過ぎと・買われ過ぎを示す指標、すなわち相場のモメンタム指標として、同様に機能を果たしています。ただし、その基本的な考え方はかなり異なります。

RSIでは、過去14日間に株価がどれだけ動いたかに注目します。一方、%Rでは、株価の動きの大きさではなく、いまの株価がどこにあるのかという、株価の位置に注目します。

したがって、RSIは値動きで相場の勢いをとらえるもので、相場のモメンタムを示す典型的なオシレーターと言えます。

これに対して、%Rは、株価の位置を計ることで、潜在的な相場のエネルギーを計ろうとするものです。いまの株価が高い位置にあれば下落するエネルギーがたまり、いまの株価が低い位置にあれば上昇するエネルギーがたまっていると見なすのです。

売買のシグナルとしての%R

そこで、具体的な%Rの使い方を見ていきます。

ここでは、パラメーターを7とします。すなわち、過去7日のデータで%Rを計算しています。これは、かなり短期の動きを示しており、%Rの数値は大きく振れます。そこで、売られ過ぎは90より上の水準、また買われ過ぎは10より下の水準として判断します。

なお、先週のRSIに関してもお話した通り、オシレーターによる売り買いの判断は、主たるトレンドの方向に沿って行うべきです。%Rによる買いの判断は、上昇トレンドの存在が前提となります。%Rによる売りの判断は、下落トレンドの存在が前提になります。したがって、上昇トレンドのなかで、%Rが売りシグナルを出しても、より慎重に判断するか、あるいは無視するべきでしょう。

このような前提のもとに、今年4月以降の日経平均株価を見ます。図1では、点線が日経平均株価の日足で、実線がその%Rです。

(図1)株価と%R

この時期は、日経平均株価の200日移動平均線は右肩上がりであり、上昇トレンドが確認できます。したがって、基本的には%Rが90を超えたところでは、株価が売られ過ぎとして買いスタンスで臨む一方、10を下回っても買われ過ぎとみて売るのはリスクが高いと言えます。

図1の中の局面①では、%Rが90を超えましたから、買いのタイミングでした。実際に、その時期に、株価は18500円を割り込んだところで反発に転じました。

一方、②の局面では%Rは10を下回り買われ過ぎのゾーンに入っていますが、主たるトレンド(上昇トレンド)に反しているために、積極的に売るのはリスクが高い場面でした。実際、%Rが10を下回ったものの、株価の上昇は、その後も続きました。

%Rで相場の流れをつかむ

ところで、%Rは、売り買いのタイミングを計るだけでなく、相場のトレンドをつかむうえでも参考になります。

図1を見ると、全体に0に接近する場面はたくさんありましたが、反対に100に近づく場面はわずかでした。言い換えると、買われ過ぎの場面(0に接近)は多くありましたが、売られ過ぎの場面(100に接近)は少なかった。すなわち、この時期は、全体として株価は買われやすく、売られにくかったということです。これは、相場が上昇トレンドを形成していたことを示します。

しかし、より細かく見ると、7月以降の%Rは変調しています。このころから10を下回る場面(買われ過ぎ)は見られません。しかも、%Rの水準が切り上がっています。逆に、売られ過ぎ(同100に接近)の局面が頻繁に現れていました。買われ過ぎよりも売られ過ぎが目立つようになってきたということです。これは、株価の上昇トレンドが次第に弱まっているということを示していると見られます。

このことを先述の%Rの式③から考えると、%Rが100に近い日が多くなるというのは、終値が過去7日間の安値に近い水準で終わった日が多いということです。これは、売り圧力が強まっていることが背景にあり、たとえ相場は一定のレンジの中で動いていたとしても、下落の可能性が高まっていると言えます。実際に、日経平均株価は、8月に入ると、それまでのもみ合い相場から、いったんは下放れました。

このようにモメンタムを眺めることで、トレンドにする修正の動きを早めに察知することができます。

相場の徒然―いまはモメンタム銘柄が例外

株式相場では、欧米の金融政策が、かつてないほどに注目されています。

相関関係表

米国では9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシートの縮小を決めるのか、そして12月のFOMCで追加利上げを行うのか。欧州では、9月の欧州中央銀行(ECB)の理事会で、量的金融緩和政策からの出口政策に対する議論が深まるのか。

さらに、来春に任期が満了するイエレンFRB議長と黒田日銀総裁の後任人事(続投かどうかも含めて)にも関心が集まります。

その結果、最近は、金融政策をめぐる思惑が、相場を動かす主たる要因になっています。経済統計さえも、それ自身の良しあしではなく、それが金融政策に与える影響を推測しながら、株式相場が動きます。

実際、昨年の終盤からは、日本の銀行株など金融株の動きは、米10年国債利回りとドル円相場で説明できる状況です(米金利と為替が金融株の主たる変動要因です)。

また、昨年終盤から東証株価指数(TOPIX)は、米ナスダックと米10年国債利回りに影響を受けています(図2参照)。そのナスダックは、米10年国債利回りに強く影響を受けています。

それだけに、市場参加者は、企業業績よりもむしろ、海外の金融政策に関心を向けざるを得ません。

一方、金融政策の影響を受けにくいセクターは限られています。その例外的なセクターは、テクノロジー(情報技術)です。これは、独自の思惑で動きやすい状況です。言い換えれば、テクノロジーはなお、モメンタム(株価が本来持っている勢い)が支配しているセクターです。

したがって、金融政策の動きに影響を受けやすい全体相場と、モメンタムが支配しやすいテクノロジー相場は、異なる観点から見る必要があります。テクニカル分析でも、いまは同じ尺度で測らない方がよさそうです。

むさし証券チーフストラテジスト、北海道大学新渡戸カレッジ・フェロー。北海道大学を卒業後、山種証券(現SMBCフレンド証券)に入社。エクイティ・デリバティブ取引のディーラーとなり、その後、世界最大の穀物商社カーギルでの日本株運用部長、みずほ証券エクイティ部のトレーディング担当部長などを歴任。一時、ベンチャー企業の立ち上げに参画し、上場を果たした。さらに、アジア中心に海外勤務を経て現職。北大でもグローバル人材の育成を行っている。法政大学経済学修士、日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会正会員。著書に、「デイトレード入門」「株式先物入門」「FX入門」「初めての海外個人投資」(いずれも日本経済新聞出版社刊の日経文庫)など。
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