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【新・相場道五十三次 第24回】一本の線でも良い道具

【新・相場道五十三次 第24回】一本の線でも良い道具

廣重勝彦
廣重勝彦

前回のコラムでは、高値・安値を使ったトレンドの見方をご紹介しました。今回は一歩進んで、トレンドラインについて考えてみましょう。

現状を把握するもの

前回は、高値ないし安値の更新をみることで、トレンドの方向や転換を判定する方法を解説しました(図1参照)。

(図1)高値・安値によるトレンド判定

シンプルですが、どのような銘柄や商品でも使えますし、日足でも週足でも、また1時間足でも使えます。しかも、チャートを見ただけで判断できます。ということで、短時間に売買の判断をするケースや、たくさんの銘柄を概観するときには重宝します。

ただ、この方法にも限界はあります。もともとこの方法は、トレンドの定義をそのまま表現したものだからです。

一般的な上昇トレンドの定義は、「高値と安値の切り上げが続く」ことですし、下降トレンドの定義は、「安値と高値の切り下げが続く」ことです。先述のトレンド判定方法は、この定義をルール化したものであり、現状把握が主な役割となります。

いまが上昇トレンドなのか、下降トレンドなのかは判定できますが、将来の展開を予想することはできません。そのため、「株価が今後、どのようなトレンドを形成しながら上昇するだろうか」といった疑問には答えてくれません。言い換えれば、高値・安値の更新によるトレンド判定は、経済統計でいう「一致指数」に該当し、現状を把握する方法であり、先行きを予想する「先行指数」ではありません。

そこで、次に、先行きを予想するために使える方法を検討します。そのもっともシンプルな手段が、トレンドラインです。

上昇トレンドラインとサポートライン

トレンドラインとは、チャートにラインを引くことで、トレンドを明らかにする方法です。上昇トレンドラインは、図2のように切り上がっていく安値を結んで延長することで作成できます。一方、下降トレンドラインは、図3のように切り下がっていく高値を結んで延長することで作成されます。

(図2)上昇トレンド (図3)下降トレンドライン

では、実際に、日経平均株価のチャートを使って、トレンドラインを検討してみます。図4のチャートは、2016年6月24日(14952円)を底値とした株価の反発と、その後の株価上昇を示しています。14952円と、その次に表れた7月8日の安値15106円を結んだ線が、上昇トレンドランAです。では、上昇トレンドラインAは、どの時点で引くことができるのでしょうか?

 

実は、前回のコラムで説明した、高値安値の更新によるトレンド判定の方法が使えます。すなわち、14952円を付けた後の戻り高値15775円(7月4日)がポイントです。15106円という安値を付けた後に、あらためて15775円を上回った時点①で、上昇トレンドに転換したと見ます。そして、この時点で、15106円を2番底として、上昇トレンドラインAを引くのです。

株価がこのラインの上側にある限り、上昇トレンドが続いていると解釈します。そして、この上昇トレンドラインは、上昇トレンドのサポートライン(支持線)でもあります。というのも、上昇トレンドが存在しているならば、株価がこのトレンドラインまでくれば、下げ止まる必要があるからです。

(図5)日経平均株価(日足)

実際に、図5ではこのトレンドラインは機能しました。2015年11月8日(米国時間)に実施された米国の大統領選挙で、トランプ氏の勝利が伝わると、日経平均株価は急落しました(東京時間11月9日)。しかし、株価がトレンドラインAに届くと、急速な反発に転じました。すなわち、このラインが株価の下値支持線となりました。

その後も株価は、上昇トレンドラインAの上の水準にあります。すなわち、現在(2017年6月15日時点)でも、昨年の底値(14952円)を起点とした上昇トレンドは継続しています。

短期上昇トレンドと反転

新たに形成された高値同士、また安値同士を結ぶラインを引くことで、より短い期間のトレンドや、将来の上値のめど、下値のめどを知ることもできます。

図6で日経平均株価のチャートの続きを見ます。2016年12月以降、株価は上昇基調を強めましたが、19594円(2017年1月4日)でいったん、天井を付けます(チャートでは②)。しかし、その後の日足をみると、高値と安値が切り下がる下落トレンドが見られました。

(図6)日経平均株価(日足)

その後、18787円(1月24日、チャートの3)で下げ止まると今度は上昇に転じ、さらに上値と下値を切り上げたことで、新たな上昇トレンドラインBを引くことができました。

株価は、この短期上昇トレンドラインBの上の水準を3月中旬まで維持しました。しかし、3月22日にこのトレンドラインを株価が下回りました(チャートの4)。これにより、18787円(3)を起点とした短期上昇トレンドは終了しました。なお、長期のトレンドラインAは続いています。

したがって、この時点での株価の解釈は、長期的な上昇基調が続く中で、短期の下降トレンドが始まったということです。

かつてのトレンドに戻る

(図6)日経平均株価(日足)

その後の株価を見ましょう(図7参照)。株価は4の時点で短期上昇トレンドBを割り込むと、下値模索になりました。株価は18335円(4月14日)まで下落しますが、ここを底値に反発に転じます。その結果、かつての短期上昇トレンドBを5月8日に上回りました(チャートの5の時点)。

注目されることは、かつての短期上昇トレンドBが、あらためてサポートライン(支持線)となってきたことです(6で示した5月下旬)。したがって、足元の相場では、このサポートラインが、今後も維持できるかどうかが注目されます。

トレンドラインは便利な道具

このように、トレンドラインは、株価の上昇トレンドや下降トレンドを示します。ラインを引く期間を変えれば、長期トレンドと中期トレンド、短期トレンドなどの使い分けができる支持線(サポートライン)にもなります。

一方、下降トレンドラインは抵抗線(レジスタンスライン)とも呼ばれます。これを株価が下回っている限り下降トレンドです。また、株価が上昇に転じても、このラインでは上値が抑えられやすいと見ます。

しかも、興味深いことに、2016年6月24日と同7月4日につけた安値を結んだライン(長期上昇トレンドライン)が、4カ月後に発生した急落(11月9日)の際の下値めどになったことです。

また、2017年1月24日と同2月9日の安値を結んだライン(短期上昇トレンドライン)が、3カ月後の5月8日以降(改めてラインBを上回ったのち)に、下値支持線になっていることです。

このように、トレンドラインを使うことで、現在のトレンドを把握できると同時に、将来の株価がどのあたりにくるかを想定することもできます。さらに、相場がどこで止まるかのめどを知り、そしてトレンド転換の判定もできます。

トレンドラインは、わずか1本の線を引くだけですが、さまざまな用途に使える便利な道具です。

相場の徒然:アニバーサリー

テクニカル分析に、「アニバーサリー(anniversary)」という考え方があります。記念日の意味ですが、ここでは、過去に重要な高値や安値を付けた特別な日付という意味で使われます。

実は、本文にもありますが、日経平均株価の昨年の安値は14952円(2016年6月24日)でした。一方、リーマンショック後(アベノミクスが始まった以降)の高値は20868円(2015年6月24日)でした。ここで目を引くのは、この高値・安値を付けたのが、6月24日だということです。偶然同じ日に年間の高値・安値をつけたとも言えますが、そこはテクニカル分析。あえて、「アニバーサリー」として注目する人は少なくないはずです。

実は、長期で見ると、日経平均株価は6月に縁があります。1990年のバブル崩壊後の主な戻り高値は次の通りです。

  • 1996年6月26日・・・22666円
  • 1994年6月13日・・・21552円
  • 1993年9月13日・・・21148円
  • 2015年6月24日・・・20868円
  • 2000年4月12日・・・20833円
  • 1997年6月16日・・・20681円

ここには6回の戻り高値がありますが、そのうち4回は6月でした。これは偶然なのか?

日本の企業イベントを考えると、偶然ではない可能性もあります。そのイベントとは、株主総会です。日本では3月決算の企業が多く、株主総会はおおむね6月に開催されます。ことしは、6月29日(木曜日)が株主総会の集中日です。

株主総会がつつがなく終わるように、株主総会が近づくとネガティブな企業ニュースが減って、ポジティブな企業ニュースが増えるという都市伝説があります。また、企業が株主還元に熱心だというイメージをつくるために、自社株買いが活発化するとの見方もあります。いずれも、株式相場を支える遠因です。

また、現実的な買い要因もあります。それは、6月下旬に向けて配当が支払われることです。今年は、6月後半に3兆円規模、また同30日には1兆円規模の配当が支払われるとの観測があります。少なくともファンドの一部は、この配当金を株式に再投資することになります。

ということで、6月のアニバーサリーは妄想かもしれませんが、需給面では6月は特異な月だと言えそうです。

なお、グラフは、2000年~2016年までの日経平均株価の日足データを使って、6月の相場の動きを調べたものです。各年6月の初日の株価を100とし、その後の日々の動きを平均化しました。このグラフに限れば、月末にかけて上昇に転じています。(ご注意:これは過去の例であり、将来の相場を予測するものではないことには注意してください)。

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