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【新・相場道五十三次 第1回】株式時代の覚醒。日本経済は失われた20年から脱するか

【新・相場道五十三次 第1回】株式時代の覚醒。日本経済は失われた20年から脱するか

廣重勝彦
廣重勝彦

初めて株式を取引される方は、迷いが多いでしょう。また、長らく取引をされている方でも、やはり迷いが解消されているわけではないかもしれません。このコラムは、そんなあなたに役に立つヒントを提供いたします。

私は、自分のキャリアの3分の2は、運用のプロフェッショナルとして24時間にわたり市場での取引に費やして来ました。残りの3分の1も、証券情報会社の経営など、様々な角度から証券市場にかかわってきました。そのなかで感じた、あるいは得てきた知識をご紹介していきます。

シリーズで掲載するこのコラムでは、証券取引をスムーズに行っていただくために、まず株式取引の考え方や取り組み方をご説明します。そのうえで、投資成果(パフォーマンス)を上げるために必要なファンダメンタルズ分析テクニカル分析、そして実際の取引手法などを逐次ご教示いたします。また、最新の経済トピックの分析も行います。

初めて取引をする方に目線を合わせますが、ベテランの方にとっても基本を振り返れる場所にするように努めてまいります。

25年ぶりの転機

新春にあたり、今年はどのような年になるかを想像してみました。すると、一つの楽しみがあります。それは、日本経済が「失われた20年」から脱することができるかもしれないということです。

「失われた20年」とは、日本経済が20年以上にわたって、緩慢な成長しかできなかった(日本経済が期待ほど拡大しなかった)ということです。

グラフは、主要3先進国の名目GDP(ドル建て)の推移を示しています。1989年の数値を100として比較しています。名目GDPは、それぞれの国が1年間に生産した付加価値ですが、その国の経済規模を示しているとの解釈もできます。

主要3先進国の名目GDP(ドル建て)の推移

これを見ると、米国とドイツは、過去27年にわたり、ほぼ同じピッチで拡大していることが分かります。一方、日本はこの2カ国とは異なる動きでした。1990年前半から現在まで、と言っていいような状況が続いています。経済の規模には大きな変化がなかったということです。これが「失われた20年」であり、日本の経済は、他の国の成長を横目に停滞を続けてきたということです。

株式は経済を表す

ところで、株式は経済の鏡といわれます。実際、「失われた20年」と言われる期間、すなわち1990年のバブル崩壊のあとから現在まで、日経平均株価は一定の範囲でのアップダウンを続けてきました(株価のグラフ参照)。株式相場は、日本経済の閉塞(へいそく)感をそのまま映してきたのです。

日本の株式相場(日経平均株価)

しかし、日経平均株価の2016年の終値は19114円。前年比ではわずかな上昇にすぎませんが、過去20年では最も高い水準です。この動きをあと押ししているのは、米国経済が拡大基調に加えて、低調と伝えられてきた欧州や中国の経済が意外に底固く推移していることです。そのうえで、日本経済が、消費税増税後の失速から脱し、回復の足取りにあることが株価を押し上げています

それでも、過去20年間は、昨年の終値水準が株価の上限だったことも事実です。日経平均株価が20000円を越えると、上昇の勢いは続かずに押し戻されました。今回も同じ轍(てつ)を踏むのでしょうか。あるいは、今回は違うのでしょうか。

私は、6分・4分で今回は違うと見ています。その変化の原動力は技術進歩です。

昨年、世の中に急速に広がった言葉には、自動運転や人工知能(AI)、バーチャルリアリティー(VR)があります。また、フィンテック(FinTech)やモノのインターネット化(IoT)という言葉も、報道で頻繁に取り上げられました。一方で、スマートフォンは世界中に普及し、いまや会員制交流サイト(SNS)を通じて世界のどの国の人ともコミュニケーションをとることができます。

わずか3年前にでさえ、このような変化を予想した人はどれほどいたでしょうか。そして、この勢いが加速するとしたら、3年後の2020年には世界はどのようになっているでしょうか。少なくとも、2010年とは様変わりの世界でしょう。このような技術進歩は、経済成長を引き上げる要因になりえます。

注目される労働生産性

とりわけ日本にとって、このような技術進歩は、千載一遇のチャンスです。失われた20年のうち、後半の10年の停滞は、少子高齢化社会への"不安"による面が大きかったとみられるからです。2015年の人口統計で、日本の人口は減少に転じました。ただ、労働生産人口(15歳~64歳までの人口)は、1998年をピークに減少し続けています。もちろんこれは経済成長の足かせですが、それ以上に問題なのは、人口減少による年金など社会保障に対する人々の不安です。この不安が、消費や投資を抑制してきたとみられます。

しかし、先ほど挙げた急速な技術進歩は、世界で最も早く少子高齢化する日本社会にとって朗報です。例えば、自動運転が普及すれば、年齢を重ねても安全に運転することができます(実際は人ではなく機械が運転するのですが)。また、運転手不足が予想される運送業にとっても朗報です。工場では、IoTにより、少人数で多品種の製品でさえ生産できます。これにより、一人当たりの生産性が上昇し、さらに一人当たりの国内総生産(GDP)も増えていくことでしょう。

振り返れば、高度成長期(1955-1970年)の前夜の日本では、建設現場には大勢の労働者がいて、スコップとつるはしをふるっていました。しかし、やがてその仕事は、ブルドーザーに乗った一人の労働者でもできるようになりました。

このような技術の進歩が労働者の生産性(労働者の能力)を引き上げ、高度経済成長をもたらしました。いまではブルドーザーに代わって、AIやビッグデータなどのデジタライゼーションが、労働生産性を引き上げ、経済成長を加速させる可能性は十分あります。

失われた20年を超えて

もし、このような技術進歩により、生産性が上昇するとすれば、これは過去20年にはなかったこと。「失われた20年」からの脱却が現実化するでしょう。このように考えれば、株価は、過去10年の往来レンジの上限にトライしていてもおかしくありません。仮に、株価が20000円~23000円にある壁を打ち破れば、これは株式相場にとって新時代の到来です。

かつてのように経済成長が停滞しているならば、ひたすら守りの預貯金に閉じこもる必要がありました。しかし、成長率が上がり始める時代は、株式が有利になります。さらに、物価上昇が始まるならば、預貯金には不利な環境です。

過去20年は、株式投資を避けてきても、間違いではありませんでした。株価は往来でしたから。しかし、これまで述べてきた通り、その状況は変わろうとしています。デジタル技術の加速度的な進化をみれば、経済や社会が様変わりすることは容易に想像できるでしょう。このような変化に対して敏感に反応し、それを反映していくことができる資産がまさに株式です。

さらに、この技術革新はおそらく一過性のものではなく、長期にわたり経済や株式に影響を与えていくでしょう。ということならば、いまから株式についてじっくりと勉強されても、十分に間に合います。新たな動きはまだ始まったばかりだからです。

相場の徒然:相場の鉄則

ここで、観点を変えて、株式への投資がなぜ必要かを考えてみます。それは、基本的には「資産を形成するため」です。充実した人生を送るためには、どうしても経済的な裏付けが必要です。衣食住にはもちろんお金が必要ですが、さらに老後の資金も考えていかなければなりません。

しかし、それならば、頑張って働いて給料を稼げばよいのではないかと思われるかもしれません。もちろんそれも一つの考え方ですが、長い人生を考えれば、それだけで安心なのかという疑問が残ります。というのも、働くだけで充実した人生を送る資金を確保することが以前よりも難しくなっているからです。企業がグローバル競争の中にいるために、給与はかつてのような伸びは期待できません。

数年前に一世を風靡したフランスの経済学者トマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」では、過去200年以上の膨大なデータの分析から、資産によって得られる富の方が、労働によって得られる富より速く蓄積されると指摘されています。

つまり、資産を持っている人の方が、働く人よりも多くの資産を形成できるということです。そして、ピケティ氏はこれが格差を呼ぶ要因だとも指摘しています。トランプ新大統領の誕生も、中間所得層が抱えるこのような格差への不満が背景にあるといわれます。

ただ、格差問題の議論はのちのコラムに譲りましょう。ここでは、資産の積み上げは働くだけでは得られない富をもたらすというデータに注目しましょう。これこそが、株式投資をする大きな目的です。適切な株式投資は、資産形成につながる手段だからです。ですので、この良い面をしっかりと享受するように、株式について一緒に勉強していきましょう。

全米3位の富豪であるウォーレン・バフェット氏の個人資産は、約700億ドル(約8兆2,000億円)と伝えられています。バフェット氏は株式投資でこれだけの資産を築いたのですが、最初の投資額はたったの約100ドルだったそうです。私たちも株式の勉強と利回りの力で、彼の1万分の1にでも近づけば、大成功と言えるでしょう。

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