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【新・相場道五十三次 第28回】パターン分析の実際

【新・相場道五十三次 第28回】パターン分析の実際

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廣重勝彦
廣重勝彦

前回までのコラムで、ヘッド・アンド・ショルダーやダブルトップなど、よく知られているチャートパターンを見てきました。これらはトレンド反転のパターン、すなわちこれまでの上昇トレンドが終わって下降トレンドに変わる、あるいはこれまでの下降トレンドが上昇トレンドに変わる節目を教えてくれるものでした。

今回は、これらよりもややマニアックな分析方法ですが、株価のトレンドが継続していることを示すパターンを中心に見てみましょう。

トレンドラインの復習

図1は、東証株価指数(TOPIX)の今年4月以降の値動き(日足)を示していますが、ここから何が見えてくるでしょうか。まずは図2のようにトレンドラインを引いてみましょう。

(図1)TOPIX(日足) (図2)TOPIX(日足)

まず、上昇トレンドラインaがあります。4月17日の底値である1452ポイントと、4月19日の次の底値の1463ポイントを結んで延長したラインです。これは株価のサポートラインにもなります。このラインと平行に引いたラインを、4月26日につけた最初の天井である1537ポイント()から引くと、bのようなレジスタンスラインになります()。4月半ばから5月半ばまでの相場は、このようなチャネルを形成しながら上昇しました。

5月18日にこのサポートラインをブレイクしますが、下降トレンドへの転換は免れ、新たな上昇チャネルとなり、今度はcがサポートでdがレジスタンスになるチャネルが形成されます。2番目のチャネルの傾きは1番目のチャネルの傾きよりも緩やかであり、上昇のエネルギーが弱まっている可能性を示唆しています。しかし、上昇トレンドが終わったとか、上昇トレンドが下降トレンドに転換したことを意味しているわけではありません。トレンドに乗るという投資戦略ならば、明確なトレンド転換のサインが出るまでは買いポジションを維持する場面でしょう。

フラッグとペナント

今度は、同じチャート(図1)について、パターン分析をしてみましょう。このチャートでは、少なくとも4つのパターンが見て取れます。これらは、「フラッグ」と「ペナント」と言われ、トレンドが継続していることが確認できるパターンです。

1が「フラッグ」です。数日から3週間程度の比較的短い期間に、小さい値幅の日が続くケースです。平行線により囲まれている形が「旗」の形になっているために、フラッグと呼ばれます。ただし、フラッグは、3や4のように右肩下がりの場合もあります。

(図3)TOPIX(日足)

一方、同じように、日々の価格の動きが小さいケースで、次第に値幅が狭まる場合は「ペナント」と言われます。学校図3では2がそれに当ります。ペナントは、三角形になっているので、三角保ち合い(トライアングル)にも見えますが、2のパターンが維持されたのは12日間だけであり、このように短い期間の間に株価が収束するケースはペナントと判断します。トライアングルはトレンドの転換につながるケースがあるため、ペナントとは区別したいポイントです。

トレンドの継続を示すパターン

繰り返しになりますが、ペナントとフラッグは、中長期の上昇トレンドや下降トレンドが一時的に止まる時に現れるものであり、トレンドの終了を示すものではありません。上昇トレンドであっても、一時的に上値が抑えられたり、徐々に上値が低くなる、あるいは株価がじり安になることはあります。

これは、それまで継続した株価の上昇に対する当然の反動と言えます。先行して買った投資家による利益の確定売りを、新たな買い手が吸収する場面です。言い換えれば、古い買い手から新しい買い手にバトンタッチしている様子がチャート上に表れているのがペナントとフラッグと言えます。

したがって、このようなパターンがあらわれはじめたら、これまでのトレンドに沿った投資をまず考える必要があります。言い換えれば、戻り売りに押されただけですので、積極的に売り込む局面ではありません。たとえば、上昇トレンドのなかでペナントやフラッグが現れた場合、この上値抵抗線のブレイクは、上昇トレンドの確認であり、買いのシグナルとみなすことができます。

さらに、ペナントやフラッグだけでなく、他にもトレンドが続いていることを示すテクニカル指標や、チャートパターンがある時には、ペナントやフラッグの確度は一段と高まります。たとえば、次に見るカップ・ウィズ・ハンドルのようなケースです。

カップ・ウィズ・ハンドル

カップ・ウィズ・ハンドル(a cup with handle)は、米国の著名投資家のウィリアム・オニールが紹介したチャートパターンです。カップ・ウィズ・ハンドルは、取っ手付きのカップ(コーヒーカップ)をイメージして下さい。カップの部分は大きな半円であり、それにハンドル(取っ手の部分)の小さな半円が続きます。それが完成したところが、株価の底入れの確認として、買いのタイミングになるということです。図4はカップ・アンド・ハンドルの例です。

(図4)TOPIX(日足)

aはカップの形成であり、株価が底入れする過程です。カップを形成し、縁の部分に来た時に、もう一度下落に転じ、bのようにハンドル(取っ手)を形成していきます()。そして、cのハンドルの縁に戻した時()が、買いのタイミングになります。

この例では、同時に図3でみたペナント(2)が形成されます。cはカップ・アンド・ハンドルであると同時に、ペナントのレジスタンスラインのブレイクポイントでもあります。したがって、中期の上昇サイン(カップ・アンド・ハンドルの完成)と、短期での上昇サイン(ペナントのブレイク)が重なることで、この買いのサインは確度が高いと推定されます。

アイランド・リバーサル

なお、図4のdはアイランド・リバーサルと言われる株価のパターンです。dの部分にある7日間の株価は、前後の株価とは重なっていません。具体的には、3月10日はマド開けではじまり、その日の安値は前日(3月9日)の高値を大きく超えています。すなわち、3月9日と10日の株価は重なっていません。

そして、株価は3月22日に急落して始まりました。下にマド開けとなり、この22日の高値は前日21日の安値を大きく下回っています。その結果、3月10日~21日の7日間の株価は、孤島(アイランド)のように、ポツンと取り残されています。この状態は、アイランド・トップとも言われ、株価が天井を打った可能性を示唆するものとされています。

一方、このようなアイランドが下落相場の中で見られると、これはアイランド・ボトムとして底入れのサインになる場合が多いと言われます。ただ、わたしは経験上、このパターンの確度はそれほど高くないと考えています。一旦アイランドになっても、その後にマド埋めとなるケースは少なくないためです。そのため、単独ではなく、他の指標と合わせて考える必要があります。

トライアングル

最後に、トライアングルを確認します。上値抵抗線と下値支持線が次第に収束する株価のパターンです。ナスダックの例が図6です。株価が収束する点はペナントと同じですが、トライアングルの形成にはより長い期間を要します。比較的長い時間をかけて保ち合っていることで、上昇トレンドならば、その間に利益の確定売りが消化され、需給が大きく改善する可能性があります。したがって、株価がトライアングルの上値抵抗線を突破した場合に、改めて上昇トレンドが加速するケースもあります。

なお、トライアングルを形成する場合、それまでのトレンドは維持されていると見るのが基本です。トライアングルの前が上昇トレンドであれば、その流れは続くと考えるべきでしょう。 

(図6)米ナスダック(2015年日足)

ただし、トレンドが反転する可能性を否定するものではありません。トライアングルの期間が長引けば、市場で株価の上値が重いとの見方が広がり、利益の確定売りが圧力がかえって強まる場合があります。また、トライアングルが長引けば、その間に上昇トレンドを支えてきた事情(マクロ経済の改善や、外国人投資家の買い越し基調など)が変わる場合もあります。

したがって、トライアングルのブレイクだけでなく、他のテクニカル指標なども参考にしながら、買いの判断をすることが大事でしょう。

相場の徒然:トライアングルとロスカット

トライアングルの上値抵抗線の突破は、基本的には上値トレンドが期待されますが、時間経過で株価上昇を支えてきた要因が変化することで上昇基調が維持できなくなると、上昇トレンドの形成がとん挫するケースもあります。

(図7)TOPIX(日足)

図7は今年のTOPIXの例ですが、1月から2月にかけてトライアングルを形成していました。そのなかで、上値抵抗線を何度もトライし、fのポイントで本格的にそれを突破しました。ところが、その後、株価は失速し、最終的には4月にかけて大きな下落トレンドを形成しました。

ポイントはgの時点です。これは、トライアングルが収束した株価水準です。これを下回ることになれば、トライアングルから上放れたことを打ち消す動きと見るべきでしょう。トライアングルの上値ブレイクで買いポジションをとった場合は、こロスカットを考える場面です。

さらに、このケースでは、hでアイランド・リバーサル(アイランド・トップ)があります。この天井打ちのサインも、ロスカットを考えさせる要因でした。このように、チャートの値動きは後から見返すことでより明確になることが少なくないのです。

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