なぜ、スターツ?
この記事のもくじ
1.スターツプロシード投資法人の概要やターゲットとする不動産に関して
スターツプロシード投資法人は2005年にジャスダック市場に上場し、2010年に東証に上場し、今年で12年目を迎える、実は老舗のJ-REITです。2008年のリーマンショック時も合併等なく、今でも独立性を保っており、個人的には住居系でもあり、底堅い印象の銘柄です。スポンサーであるスターツコーポレーション㈱は不動産業だけでなく、出版や証券業まで手広く行っている。個人的には、実はこれが良いのかもしれないと思っています。
不動産だけでなく、いろいろな所で自社のサービスをPR出来、潜在的な入居者に対して長期でよい印象を付けることが出来るのかも。
スターツのターゲットや投資対象は、東京、大阪、そして名古屋の主要エリアで需要が最も安定していると考えられている平均所得者向けの賃貸住宅です。2009年移行の景気悪化時に、高級賃貸は外国人の帰国により、軒並み50%の空室となっていました…。現在もこれらの稼働率や賃料は最盛期のレベルまで完全には戻っておらず、需給が悪化したまま外国人向け高級賃貸は、民泊に用途を変えたものも中にはあるらしいです。
ちなみに、木造のアパートなどを除いた、全国平均賃料は約64,000円/月となっています。東京は90,000円/月、神奈川県は76,000円/月、千葉や埼玉県は65,000円/月となっており、全国平均とあまり変わらない。
一方で、大阪や名古屋を見てみると、63,000円/月や62,000円/月となっており、全国平均を若干下回る水準となっています。以下、福岡、札幌と続く。ご存じの通り、日本で働く人々の平均年収は年々下がっており、現在414万円。平均年収1,000万円を超える人の数は極端に少なく、ほとんどの人が1,000万円以下の年収で暮らしている。そこで、当法人では、この最も需要の多い入居者層に対して、フィットする家賃の中小規模の賃貸住宅を保有・運営することで将来的な需要の変動を軽減しているみたい。
次に、投資口価格の推移に関して、2015年1月につけた上場来高値233,700円以降下落トレンドが続いています。2013年にアベノミクスが正式にスタートするまでは配当利回り6%以上、投資口価格12万円前後をさまよっていたのに。
その後、多くの銘柄同様に3年かけて、配当利回り4%を切る水準まで買い進められる時もあり、現在の配当利回りは5%後半で推移しています。現在のNET ASSET VALUEの倍率は0.8を切っており、直近の鑑定評価の合計に対して、市場では80%しか評価されておらず、個人的には割安だと思っています。というのも、平均世帯年収に合わせた物件を保有しているため、景気低迷時にも賃料収入の下落は少ないと考えられ、物件の利回りに関しては上下があるかもしれないが、東京都の物件を5%の水準で買っており、下落は少ないと思われるからです。その他割安と思われる細かい理由を後述します。
最後に、58ある不動産を投資対象とした投資法人とスターツを比較してみました。添付のバブルチャートにある通り、資産規模やそれらのクオリティーに差があるかもしれなません。しかし、圧倒的に割安な水準に放置されている。本来、配当利回りが5%中旬の水準であれば、NAVは0.8倍ではなく、0.9倍中旬ぐらいまで行ってもおかしくない。すなわち、20%とは言えないものの、10%後半ぐらい上昇していいものと思われる。結果的に、本日の投資口価格の水準152,000円であれば、買っておいて損はないのではと思ってくる…。
2.掲示板のコメントに関して
スターツプロシードの掲示板には、週に一回または二回程度の投稿があり、個人的な予想とは異なり、それほどネガティブなものはない。例えば、『オリンピックが近くなれば、また170,000くらいにはなる。中国人が東京の土地を高く買ってくれる。実際買ってる。オリンピックが終われば、中国人が東京の土地を安く売ってくれる。株よりもうかる』とか、『順調に回復してるけど、まだまだ安いね。』など…。
中でも興味深かったのは、『>物件の質が劣るのだから、NOI利回りが高いのは当たり前です。そうですね。仕入れ(物件)が安いから、利回りが高いのは当たり前。分母が小さいからNOI利回りが高い。物件の質が劣っていても家賃はそれほど割安にしていないし、稼働率も低くない。分子も小さくありません。物件を安く購入しても、立地が悪くて家賃を大幅に割引しないと借り手がいない稼働率が上がらないというなら物件を安く購入した意味がない。スターツプロシードは他のREITと比較すると、物件の質が劣っている。しかし、家賃はそれほど低くないし、稼働率も低くない。ピタットハウスの影響なのか、集客力が高い。なかなかの商売上手だと思いますよ。立地が多少良い割高物件を購入しても、立地が良い分だけ家賃を割高に設定できれば、分子を大きくできればNOI利回りは高くなるはずです。NOI利回りが低いリートは立地が良い分を家賃に転嫁できていないという事です。立地が多少良い割高物件を購入しても、家賃に転嫁できないのなら意味がない。>>スポンサーが大手のREITが都心の物件を購入していますが、安く買って高く売るか、高く買って安く売るか、安く買って高く売る方が商売上手でしょう。』
この投稿を読んで、後で述べますが、スターツの運営状況をキチンと分析し、本当にどのエリア、どのグレードの物件も高い稼働率や収益性を今でもキープできているのか気になりました。
3.割安の度合いについて
3-1.割安の度合い
アナリストや新聞などの記事に、よく割安と書かれます。しかし、何をもって割安とするか?長期国債利回りと配当利回りの比較やネットアセットバリュー(NAV)と投資口価格を比較したNAV倍率から見た割安がよく言われています。
当利回りの計算をする際、はじめてに分配金の内訳について確認してもらいたいことがあります。『利益超過分配金が含まれている』かどうかです。これは減資、資本の払い戻しによる分配金で、建物や設備などの減価償却費の一部を分配しています。例えば、物流施設など、あまり修繕費が発生しないため、利益超過分配金をしている場合があります。シンガポールなどでもこのような分配金を行っているケースがあるのですが、個人的には反対です。
使い道のない余剰資金は投資家に戻した方がいいですが、不動産に関しては日々建物が劣化するため、将来改修が必ず発生します。その時に大抵公募増資により、資金を集めないといけないため、投資口価格の減少が見込まれます。このような分配金分をキチンと記憶・記録しておけばいいですが、公募増資の発表に時には忘れているケースが多く、ほとんどの投資家はだまされたと思ってしまいます。
ちなみに、スターツと同じような住居系のREITで、サムティ・レジデンシャルは利益超過分配金を使って分配しています。サムティ・レジデンシャルの配当利回りは6.2%程度、スターツの配当利回りは5.5%程度となっています。この差が利益超過分配金によるものか、どのように判断するかで、投資法人が割安かどうかが判明出来ます。
3-2.配当利回りの大切さ
J-REIT、特に配当利回りが高い投資法人に長期で投資する際にとても重要な事は、利回りの変動と投資口価格の変動です。例えば、スターツプロシードを購入するケースを考えてみます。配当利回り5.5%なので、5年保有することで、分配金が変わらなければ、ザックリ27.5%、投資金額の4分の1程度を回収したことになります。一方、この間に投資口価格が20%下落した場合、このケースでも結局5%以上もうけたことになります。ちなみに、投資口価格が高騰し、配当利回り3%の時に投資を開始した場合には、投資口価格が同様に下落した場合、結果的に5%の損をすることになります。NISAを使った、配当利回りが高い銘柄への投資は長期であればあるほど成果が出て、投資効果があると思います。
一方で、高利回り銘柄は不安定です。物件自体の収益性はそこまで変化があるとか思えませんが、いろいろな要因で投資口価格はボラタイルのため、注意が必要です。2008年のリーマンショック直後も中小型のスポンサーが弱い、REITの投資口価格の変動率はすごかったです。さらに、分配金、賃料収入が安定していることが長期投資をストレスなく行うために非常に大切になります。例えば、住宅や倉庫などは急にニーズが無くなることが無く、契約自体が長期固定であるケースが多く、収入が安定しているとされます。一方で、ホテルなどは景気の波をもろに受ける業種です。今は2020年までのオリンピック景気に乗り、ホテルの需要は多く、安定的に運営でき、収入は高位で安定しています。一方、2009年から2012年までは景気が悪く、収入は低位かつ不安定に推移していました・・・投資口価格にも反映されていました。分配金の安定は長期投資を行う上で非常に大切な要素なので、おすすめは主に都心の住宅を投資対象とした投資法人、例えば、スターツプロシードです。
3-3.ネットアセットバリュー(NAV)と投資口価格
ネットアセットバリュー(NAV)と投資口価格で比較したNAV倍率から見た割安について考えてみます。ちなみに、配当利回りが高い投資法人は一般的に、NAV倍率が低い傾向があります。同じように、スターツのNAV倍率は0.8を切る水準、サムティのそれは、0.9を切る水準となっており、どちらかと言えば、スターツの方が割安、そして投資口価格が下がりやすいと考えられます。NAVは不動産鑑定士による鑑定評価を基準にしているケースが多く、無理に上げているケースも多々あります。
J-REIT市場では、賃料収入の変動以外に分配金が大きく変動する要因として、公募増資を行った際の希薄化があります。NAV倍率が低い銘柄が増資を行った場合、希薄化が起こる可能性が高く、結果として、分配金が減り、投資口価格が下落します。従って、投資先をよく調べる必要があります。やり方としては、過去の公募増資をよく見ることです。具体的には、公募増資の前後で出資額(出資総額を発行口数で除することで算出できます。)の希薄が起きているかどうかを調べる必要があります。公募増資行うことで、一口当たり出資額が減少していれば、希薄化を伴う増資を行う可能性がある銘柄ということになります。
一方、上場直後で公募増資を行っていない投資法人に関しては、現在のLTVや借入金比率をチェックしておいた方がいいかもしれません。投資法人の基準や他の投資法人と比較して、妙に高い場合は今後新規に物件を取得する際に、公募増資を行い、希薄化する可能性もあるからです。
3-4.配当利回りが低い投資法人
最後に、頻繁にあるものではないですが、配当利回りが低い投資法人において、配当金が減少する可能性があるものとして、投資法人同士の合併による被合併銘柄となるケースがあります。というのも、既述の通り、NAV倍率が低い銘柄は希薄化の可能性から公募増資を実行しにくく、スポンサーから見ると、運用するファンドなどから投資法人へ物件を売却することが出来ず、利益の確定等出来ないため、正直、投資法人を運営するメリットが少なく、他の投資法人へ売却した方がいいと判断する可能性もあります。合併銘柄としても、今のようななかなか物件の購入による投資法人の規模拡大が難しい場合には、短期的に規模拡大を行うために、買収・合併を選択する場合があります。
おわりに
以上のように、割安を配当利回りとNAV倍率の両方で考えてみました。スターツと似たような投資先として、サムティを使って比較してみました。次回はスターツのスポンサーのサポート体制や実際の稼働・収支の推移などを確認し、スターツプロシード投資法人への投資に対する意見をまとめたいと思います。
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