東証REIT指数の急落、配当利回り4.20%は割安か?
この記事のもくじ
路線価の上昇から始まり、金利上昇や金融庁の絡みで不動産周りがアツい。
これまで用途やREIT自体のスキームを書いてきた。
しかし、ここ数週間にわたって、東証REIT指数の急落や金利の上昇の一方で、実物資産の価格が話題に上がっている。実物資産に関しては、中国人投資家が中国での物件価格の高騰から、いまだに日本の物件を買いあさっている。
先日の日経新聞夕刊で投資マンション、特に東京都心の不動産価格が上がっていると記事になっていた。
取引事例の調整から計算している路線価と異なり、投資家の今の目線が分かるので興味深い。
また、この記事には既述の中国人投資家だけでなく、老後に備えた30代、40代や相続に備えた50代以上の日本人も物件を買っていると書かれていた。
いよいよ、これまでいいニュースが多かった不動産市場に悪いニュースも含め、いろいろなニュースが交錯しており、どこまで実物資産の高騰が続くのか、しばらくバタバタせず、静観してみようと思っている。
世界的に安全資産とされる長期国債の金利上昇からか?東証REIT指数の没落がすごい。
毎月、三鬼商事から出るデータの通り、まだまだ良好な不動産ファンダメンタルをよそに、4月以降投資口価格の調整が進んでいる。
金利水準の上昇から株式から債券への乗り換え、そして、後述するが『信託報酬が高く、分配金の支払い頻度が高いほど、長期運用の効果が減るのに、毎月分配型を売るのはけしからん!!』という、金融庁からの度重なる指摘による毎月配当投信の営業停止による指数の減速がすごい…。
タイトルにも書いたが、7月18日、東証REIT指数は1620まで下落し、配当利回り4.2%辺りまで上昇し、長期国債の金利0.07%と比較し、スプレッドが4%を超えてきた。
新年度入り以降3カ月連続して売られているJ-REIT
7月12日に東京証券取引所が6月のREITに関する売買動向を発表した。投資信託は予想通り3カ月連続して売り越した。その額は162億円となっており、あまり目立たないが13日の日経新聞でもこの件に触れていた。野村総研によると、国内REIT投信の売越額が過去最高の455億円となっている。
特に、これまで多くの個人投資家が信頼していたJ-REITリサーチオープンとニッセイJ-REITファンドなどの毎月分配型投信からの流出が大きいようだ…。
例えば、J-REITリサーチオープンの基準価格を調べてみる。毎月の分配金は、ここ数年変化はないものの、投資口価格が6月の一カ月で▲3%、直近3カ月で▲4.9%と下落傾向が続いている。また、ニッセイJ-REITファンドに関しても、ほぼ同様の結果になっており、毎月の分配金はここ数年変化はないものの、投資口価格が6月の一カ月で▲3.2%、直近3カ月で▲4.8%と下落傾向が続いている。
今月に入ってからも東証REIT指数の下落はセリングクライマックスの様相を呈しつつ、下落しており、今後の動きが楽しみだ。
チャンスは来るのか?
東証REIT指数が6月だけで3%以上下落した背景と毎月分配型の下落の理由は、金融庁による偏った指摘だ!
『毎月分配型は長期資産形成に適さない』と批判され取り、証券販売部門も積極的に販売することが出来ず、結果的に資産価格の減少が続いている。
確かに、毎月分配型投信の毎月分配と同時に、配当から税金が20%取られてしまう現状では長期資産形成に適さないかもしれない。
しかし、投資は長期資産形成だけでなく、分配金を生活費として認識し、コンスタントに入ってきて、売却時の値段はトントンでもいい人たちもいる。
金融庁による、ターゲットを絞ったこのような批判の結果、J-REIT、そして毎月分配型投信の需要が弱い傾向は今後も続くと考えられ、7月以降もJ-REITなどの投信を含め、毎月分配型には要注意が必要だ。
東証REIT指数の下落の下限はどこまでか?
みずほやしんきんアセットなど各社アナリストの方から、『配当利回り4%を超えていれば、J-REITは割安だ、今が買いでは?』とコメントが出ている。
しかし、それがなぜなのかキチンと書かれていない。過去との比較なのか、他国との比較なのか?なぜなのか分からない。
そこで、こんな時こそ、鑑定評価を使ったNAV倍率が実は使えるのかもしれない。太陽光などの再エネに投資している投資法人を除いた、不動産を投資対象とした58銘柄のNAV倍率は7月19日現在で1.02倍と鑑定評価に織り込まれていない不動産価格の上昇などプレミアムはかなり無くなった印象だ。
ただ、これまでの仕事の関係からこの一口当たりのNAVは、不動産取得時の鑑定評価に引っ張られており、恣意(しい)的に相当引き上げられていると思う。
例えば、アベノミクスがスタートした2013年1月にはこのNAV倍率は1.60倍まで上がっていた。その後落ち着いたが、2015年1月に再度1.60倍まで上がっている。
ちなみに、リーマンショック前の2005年や2007年には1.70倍や1.80倍レベルまで上がっていた。それを考えると、現在の1倍付近はかなり落ち着いた価格まで落ちてきたと思える。
一方で、景気が悪くなった2009年3月には、この倍率は0.50倍まで急落し、その後2011年の東日本大地震まで上昇し、その後再度0.90倍まで下落している。
これらの情報を踏まえると、現在のNAV倍率が1.00倍付近というタイミングで投資を行うのは、10年や20年スパンで考えると悪くないのかもしれない。
全体のタイミングが悪くないので、後は個別銘柄でどれが安定的に配当を出し、値崩れしにくいのかを考えればいい。
NAV倍率だけでなく、配当利回りでもタイミングを考えてみる。
J-REITの配当利回りと長期国債の利回りと比較し、そのスプレッドを見て、割安かどうかを判断してみる。
スプレッドが4%を超えたのは、この10年では2009年、2012年、そして今年の3回あった。一方で、スプレッドが3%を切ったのは、2007年と2014年。4%超のスプレッドで購入しておけば、やがて3%を切った時に売却できるかもしれない。
価格下落によって損をしてしまうのを嫌う人には、スプレッドが5%、6%の時に購入すればいい。なかなかそのようなチャンスが来ることはないが、来た時にはすごい大きなチャンスになると思う。
金利が過去最低を更新しているため、これ以上の下落は考えづらい。一方で、景気のサイクルから賃料等の収入に関して、不動産の新規供給や給料などの物価上昇を踏まえても、現状より、上昇していくとは考えづらい。となると、今回のスプレッド4%はこれまでの通りには行かないかもしれない。もっとスプレッドを取った方が安全かもしれない。
将来性を考え、どのような銘柄に投資していくか。
これまで書いてきた通り、NAV倍率は1倍付近と過去と比べて割安水準、そして、スプレッドに関してもここからの成長性はないものの、4%はなかなかない水準とタイミングとしてはいいかもしれない。
次に、個別の銘柄を見てみる。まず、NAV倍率で見てみると、0.9倍を切っている銘柄だけでも13銘柄もある。さらに、配当利回りについて、NAV倍率で0.9倍を切っている銘柄に関して、5%を上回っているものは、7銘柄ある。最後に、それぞれの投資対象について調べてみると、オフィスビル特化やホテル特化などの景気に左右されやすいものもあれば、住居系やヘルスケア系など安定性や今後もニーズがありそうな投資先が結構ある。
個人的には住居系など手堅い投資先をキチンと運営している銘柄が好み。
そこで、今回はNAV倍率と配当利回りから選んだ銘柄群の中でも老舗に分類される8979のスターツプロシード投資法人を押してみる。
2010年7月に上場して、2015年には投資口価格20万円を超えるまでに成長したものの、現在は調整し、15万円を切る水準まで下げています。投資対象は日本の最もニーズがある所にフォーカスしており、首都圏に70%のポートフォリオを広げており、手堅そうな印象。
まずは、少し買ってみて、しばらく様子を見ることにした。次回状況を追って報告します。
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