ECサイトの活況から考える投資先
こんにちは、葉山です。初めての人に向けて、REIT(REAL ESTATE INVESTMENT TRUST)、すなわち、不動産投資信託に関して、今回は『ECサイトの活況によって、商業モールの衰退がREITに与える影響』について、詳しく書いていきます。
7月が近くなり、いよいよボーナスシーズン到来ですね。
投資先の決定基準を考える
国内不動産からの賃料収入をベースに、安定的に配当を続けるJ-REITは、金額的にボーナスで購入するのにちょうどいい投資先となっている?預金金利が非常に低い中、ずっと預金1本では全く増えていきません。ただ、今年の東証REIT指数を見てみると、年明け以降下落傾向にあり、1700付近まで下がり、先日年初来安値を更新したばかり…。
日経平均が20,000円を超え、好調な一方、J-REITは政策金利の上昇?と来年度以降の市況の頭打ちを気にしてか、伸び悩みの傾向が続いており、調整局面に入っています。これまで相関関係にあった長期国債の利回りとも違った動きをし始めた。そのため、ファンダメンタル良好の中、これほど下落が続いているのは、これまで好調だった投資信託経由の買いが、金融庁からの元本を取り崩し、分配金の支払いに充てるタコ足配当の指摘により、積極営業の中止や配当金の下落不安から来る資金の流出が大きいのかもしれない。みずほ証券の石沢さんは既述の影響は国内不動産をベースにしたREIT投信には影響は少なく、また国内銀行による低金利下でのREITを使った運用を再開せざるを得ないため、4月に下げ止まり、これまで続いた売りや為替の影響も薄れ、戻ってくるのではと予想しています。
ただ、REITという投資対象はそもそも短期の値上がり益を狙ったものではなく、長期間保有し、その配当収入を目的とした商品です。通常、株式の配当は年2回行われるのに対し、J-REITの中には、年4回の配当を出すものもあります。さらに、その配当利回りは既述のインデックスの下落により、4%近くまで上昇しており、東証一部の配当利回りである2%弱を大きく上回る水準となっています。そのため、リスクを極力取りたくない方でも始めやすいのが、REITとなっており、長期で保有するため、将来の見立てが非常に大切になってきます。すなわち、投資先の決定基準です。
これまで書いてきた通り、REITには事務所、商業施設、賃貸マンションなど様々なものに投資を行っており、今回説明する先日の日経新聞で記事になった、『アメリカの商業モールが苦境』はまさに正しく将来を見通す必要があることを如実に語っています。
アメリカでは、百貨店を筆頭に商業モールは、アマゾンドットコムなどのネット通販業者に顧客を奪われ続けています。その結果、商業モールから相次いで店舗の撤退が続いています。その規模は、例えば、リーマンショックが起きた2008年、景気の急速な減速からアメリカの小売店舗の閉鎖件数は、6,000件を超えました。一方、株価が史上最高値にあるなど、景気が良好な2017年であっても、上記のECサイトからの購入が急増したことより、商業モールやロードサイドから店舗の撤退が進み、過去最高6,000件を超える撤退数になることが予想されています。
今回は『このような状況の中、今後どのようなREITへ投資を行えば良いか』について、分析していこうと思います。
まずは、国内の不動産のファンダメンタルを一般的に示す、募集賃料と空室率の長期推移を確認します。添付の表を見ていただくと分かる通り、現在、募集賃料は2014年をボトムに緩やかな上昇傾向にあります。また、空室率については過去10年間で最も低い数字になっています。つまり、不動産のファンダメンタルは非常にいい状況にあると言っていいと思います。
次に、上記のような不動産市況が良い中で、東証REIT指数がどのように推移しているかをまとめます。添付の東証REIT指数の推移をみると、2016年初頭にマイナス金利の導入により、一時的に上がったものの、現在は不動産ファンダメンタルの良化が続く中、下落が続いています。つまり、不動産市況の活況、不況にあまり関係なく、この指数は長期金利に連動し、上下する傾向が強いことが分かります。ただ、この傾向も直近の動きを見てみると、多少相関性が薄れてきたように思えます。
ECサイト活況による各不動産への影響
最後に、今回の本題である、ECサイトの活況による商業モールや店舗ビル等の影響に関して、確認していきます。
まず、そもそもどれぐらいECが生活に根付いて来ているかというと、例えば、経済産業省がちょっと前、2017年4月に2016年の日本のEC市場、そして、日米中の3カ国のEC市場などに関する市場調査を発表しました。
今回は、経済産業省の調査結果をもとに、市場を見てみます。アパレル業界は年間約14兆円の取引があります。国内総生産(GDP)が約540兆円のため、約2.5%ちょい。その内、EC経由は約1.4兆円とアパレル業界では約10%がEC経由となっています。
さらに14兆円のアパレル業界の取引総額は正直あまり成長していない、むしろ減少傾向が続いています。一方で、ECサイトの方は毎年10%近く成長しています。将来的に、ECサイトで商品を購入する割合が増え、リアルな店舗での購入が減っていくと考えられます。そのため、アメリカではモールや店舗ビルからの退去が相次ぎ、施設の衰退が進んでいます。
一方で、ECサイトが成長することで、必要になってくるのが物流施設です。なぜ、EC事業者であるAMAZONが高級スーパーを買収したのか、そして、世界一巨大なスーパーであるウォルマートがECサイトを買収したのか。それは最終需要者である個人のお客さまにもっと近くに、ラストワンマイルの戦いがこれまで以上に熾烈(しれつ)になってきているからです。
そのため、設備等が整った物流施設は今後も需要が伸びてくることが予想でき、賃料が伸びている施設もあるようです。先週AMAZONはさらに、10,000人の個人事業者と組み、独自の配送網を確立しようとしている。近郊の物流施設から最後の配送部分を担う事業者と組み、徹底的にラストワンマイルサービスの改善を目指している。リアルとネットの垣根がどんどん無くなりつつあります。
日経新聞には既述のような状況がRETI市場、特に小売り等の商業施設を投資対象としたREITと物流施設を投資対象としたREITとの対比が出ており、後者は10%の上昇に届くかどうかの所にある一方で、前者は30%ぐらい下落しており、その差が如実に出てきています。
この流れは、日本にもやがて来ると思っています。
添付の表を見ると分かる通り、鼻が利く投資家は既に動いているようです。具体的には、これまで順調に推移していた日本リテールファンドやフロンティア不動産などの商業REITに関して、インデックスである東証REIT指数と比較しても、今年に入ってから売りが続いています。一方で、日本プロロジスやGLPなどの世界的な物流施設の運営会社がスポンサーとなっている投資法人は、投資口価格の値持ちがよく、依然と比べ、マイナス圏にまで至っていません。
おわりに
今回の流れをまとめます。商業施設と物流施設それぞれに投資するREITに関して、今後の流れを基に説明しました。商業施設はECサイトの隆盛により、将来性が危ぶまれており、一方で物流施設に製品等の荷物が集まるようになってきています。その結果、商業REITは売られ、物流REITには資金が集まり出しています。
次回以降は、2018年問題で不動産市況の腰折れが心配される事務所ビルやインバウンドの落ち着きにより、見放されつつあるホテル、そして、高齢化社会に向けたヘルスケア施設などに投資しているREITに関して、直近の流れをみつつ、投資先としてどう判断すればいいのか説明していこうと思います。
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