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東証REITの売買動向と東証REIT指数の変動

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葉山
葉山

東証REITの売買動向と東証REIT指数の変動

こんにちは、葉山です。初めての人に向けて、REIT(REAL ESTATE INVESTMENT TRUST)、すなわち、不動産投資信託に関して、『公開データである東証REITの売買動向と東証REIT指数の変動』について、詳しく書いていきます。

不動産バブルの再来か

これまでREITに関する仕組みや不動産について書いてきました。そんな中、新聞や雑誌など各方面で、去年末あたりから実物資産である、不動産への貸し付けの額がバブル全盛期レベルと大きくなりすぎのアラームが鳴り始めています。さらに、添付の募集賃料と空室率のグラフを見ると分かりますが、東京都心でオフィスビルの大量供給による2018年問題により、賃料が思ったより上がっていない現状も・・・。

募集賃料と空室率

三鬼商事が毎月発表している募集賃料と空室率のグラフを見てください。空室率は過去15年で最も低いレベルまで来ています。しかし、募集賃料はそこまで行かず、いまいちな状況が続いています。そんな中、2017年5月26日付日経新聞の世界のオフィスビル価格上昇率によると、『東京、首位から陥落』。という、悲しい見出しが…、何のことはない、東京は供給が多く、賃料が上がりにくいため、オフィスビル価格上昇率が大きく低下し、大阪のそれが世界トップになったという話でした。大阪は数年前の新規供給ラッシュが落ち着き、来年以降の新規供給が限られている点が投資家に受け、また、インバウンド需要が旺盛で、投資家がこぞって商業用不動産への投資を検討しているようです。ちなみに、一位の大阪以下はホーチミン、香港、バンコク、そして北京と続いています。

なぜ悪材料がないのに東京REIT指数が売られるのか

大阪が元気である一方、年金などを中心に、世界的な低金利の影響で、運用難に陥っています。そのため、安定した賃料が入ってくる日本の不動産は世界的に投資需要があります。このような背景から、気軽に日本の不動産に投資できるJ-REITは旺盛な需要を反映し、投資口価格を上げていく可能性が高いはずです。しかし、2015年、2016年の高値である2000を上限に、ボックス相場を続けており、軟調な相場となっています。

さらに、今年になって、金融庁の意向から『毎月分配型投信の動向を洗い出せ。』という、これまでみな気づいていましたが見て見ぬふりをしていた、期中に稼いだ分以上に分配する、タコ足配当に対する世間の面が厳しくなってきました。そのためか、東証REIT指数は現在去年のBRIEXITやトランプ政権発足以来の安値圏で推移しています。

今回は、先日の日経新聞でも書かれていた通り、空室率の急速な悪化、賃料の下落や金利の急上昇など不動産ファンダメンタルの急激な悪化がないのに、東京REIT指数が売られている現状について、公開データである東証REITの売買動向を基に分析していこうと思います。

1.東証REIT指数の予想分配金利回りと長期金利の差(スプレッド)について

スプレッドに関しては、以前に日本とアメリカの比較で話をした通り、4月末時点の東証REIT指数の配当利回りは3.87%まで上がっており、一方で10年国債の利回りは0.039%と日銀のコントロール下にあるため、現在のスプレッドは3.85%近くまで上昇しています。

これを過去一年間のスプレッドと比較すると、上限値近くまで来ており、さらに、アベノミクスがスタートする直前の2012年末当時の水準である4%にも近づいて来ています(出所:不動産証券化協会、日本相互証券、東京証券取引所)。すなわち、金融緩和が大幅に行われている現在の状況と何も発表されていなかった当時の状況を前提にスプレッドで単純に比べると、現在の投資口価格は割安だと言わざるを得ません。

さらに、既述の通り、賃料や空室率など不動産ファンダメンタルの改善が緩やかに続いており、今後も不動産収益の改善が見込め、配当利回りが良化する見込みのJ-REITにとって、世界的に見ても今は買いのタイミングなのかもしれません。

2.投資主体別の売買動向を詳しく見てみると

まず、常に売り続けているのが個人です。グラフにある通り、2016年末から現在までずっと売り続けています。金額的にも結構な額になっており、2016年12月の売買などは、年末の税金対策にポジションを大きく閉じたようです。

投資主体別の売買動向

一方、個人の売りを吸収するかのように、ずっと買い続けていたのが投資信託。特にJ-REITへの投資を中心とする毎月分配型の投資信託が買われています。4月の売買金額はマイナスになっていますがが、実は去年の6月以降ずっと資金の流入が続いていた買い手がこの投資信託です。

さらに、これまでコンスタントに売りを続けていた海外売買に関しては、現在のスプレッドの拡大を見てか、4月は買い越しとなっています。その間、東証REIT指数はスプレッドが3.5%あった1月から下落基調が続いており、個人と投信の売りの継続に対して、直近4年ぶりのスプレッドの拡大から、割安感のある外資の買いが入ってきている可能性があります。これは5月以降の売買動向、スプレッド、そして東証REIT指数の推移を確認して、動く必要がありそうです。投資主体別の売買動向とスプレッドの関係をもっと長く分析し、現在のスプレッド4%弱という水準がどの程度割安で、投資主体がどのように動くのか、今後さらに調べていきます。

3.毎月分配型投信の実態について

今まで元本の一部も含めた配当を出し、高い配当利回りをうたってきた毎月分配型に関して、金融庁が『顧客のためになる金融商品なのか?』と強く疑問視しており、銀行や証券共に毎月分配型投信の営業を控えているのが実態です。

知人の銀行マンにも実態を聞いてみました。すると、年金生活者など毎月のお小遣いのために買っている人が多く、元本の目減りをあまり気にしている人はいないとのことでした…。さらに、アベノミクス前に買ってくれていた人は今も含み益がある人が多くいる一方、アベノミクス後に購入した人に関しては配当による基準価格の引き下げが大量に発生しており、ほとんどの人が含み損を抱えているのが現状で、損切りが出来ずに今もそのままにしている人がほとんどのようです。結果的に、J-REIT市場に新規流入が減っているようでした。

ちなみに、2017年5月27日付の日経新聞によると、『現在、東証に上場するREIT、全58銘柄の時価総額は合計で約11兆円。この4分の1に相当する約2.5兆円を毎月分配型投信が保有している』とあります。新規の流入が減り、毎月元本の一部も配当に回しているため、J-REIT自体のポジションを毎月一部クローズしないと現金が作り出せない状態が続いており、日銀の機械的な買いも含め、割安と感じた?外資がそれをほそぼそと拾っている状態が今のJ-REIT市場になります。

現在、金融庁は顧客本位の業務運営、すなわちフィデューシャリー・デューティーを各所に求めており、法外に高い販売手数料だけでなく、タコ足配当によって配当利回りをよく見せている投信やその営業方法も問題視しているようです。

結果的に、投信の保有率が高い投資法人は下落の度合いが大きく、これまでオーバーウェートとされていた銘柄ほど下げがきつい状態です。例えば、下のグラフにある日本ビルファンドは2016年11月対比で、下落している東証REIT指数と比較してもかなり下げていることが分かります。

投資主体別の売買動向

4.今後のJ-REIT市場への投資に関して

正直、東証REIT指数はスプレッドで考えると割安な水準のように思えます。しかし、そこから上がるのかどうかは、5月以降の売買状況やその主体などを見ていかないと分かりません。

しかし、このような金融庁による膿(うみ)だしは日本の市場全体にとっていい傾向だと思います。これまでの日本の甘いルールをキチンと投資家にとって良いものにしていかないと日本人だけでなく、海外の投資家も入ってこないからです。

しばらく、REIT指数は割安だと分かっていても、だれも仕掛けられない状態が続く可能性が高いのですが、膿(うみ)だしが終わった暁にはきちんと状況を把握している投資家にとって、この上ない投資チャンスが来るのではないかと思っています。今は目先のお金欲しさに利回りを狙いに行くのではなく、チャンスを待ち、きちんと投資する方が個人投資家のメリットの一つでもある時間を味方につけることができると思います。今は辛抱の時です。

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