
日本経済にも影響する?「移転価格税制」を詳しく解説
多国籍企業の安定経営にはさまざまな課題がありますが、中でも近年注目されているのが、「移転価格」と「移転価格税制」です。国税庁も移転価格税制に関する相談窓口を設置するなど、その解決に積極的です。
今回は、知られざる移転価格と移転価格税制の基礎知識、その問題点や現状について見てみましょう。
この記事のもくじ
企業グループ内部の取引価格である「移転価格」
移転価格とは、企業グループ内の取引価格を指します。例えば、ある企業が海外で自社製品やサービスを販売するときには、子会社に対して製品やサービスを輸出(販売)する必要があります。このときの本社と現地子会社の間の取引価格を「移転価格」と言います。
移転価格は親会社と子会社の取引価格なので、自由な価格設定ができるように思えますが、価格設定によっては親会社と子会社が支払う税金に大きく影響する<ことがあります。
利益移転を見逃さないための移転価格税制
製品やサービスの製造原価と現地での小売価格が一定であれば、通常の取引価格で輸出したときと比べると、親会社の所得が増加して子会社の所得は減少するので、の法人所得税収の減少を招きます。
このとき、海外の税務当局は子会社に対して、「この取引が通常の取引価格でされたもの」として課税することになります。これが「移転価格税制」です。
移転価格は企業経営に大きく影響する
「移転価格税制」とは、グループ企業ではない第三者との取引価格(独立企業間価格)と移転価格が異なるとき、独立企業間価格で取引したと見なして課税するというものです。
例えば、グループ外企業に自社製品を180で販売しているときに、海外子会社には120の移転価格で取引していれば、日本の税務当局は「60の利益を海外に移転した」とみなして、第三者への販売価格と同じ課税をするのです。
この場合は海外で支払う税金と相殺されるわけではないため、「二重課税」が発生することとなり、企業に過度な負担を強いることになってしまいます。
二重課税を避けるために当局同士が協議する
移転価格税制に基づく課税では一時的に国際的二重課税が発生するため、二重課税の排除を目的として、それぞれの国の権限ある当局同士で協議をして、減額構成などの処分による二重課税の排除を実施します。これを「対応的調整」と言います。
課税処分を巡って訴訟に発展することもある
このように納税額の決定までが複雑になりがちな移転価格税制の決定では、企業側が決定内容を不服として課税当局へ訴訟を起こすことも珍しくありません。
例えば、移転価格を意図的に低めにして課税額を圧縮したとして申告漏れを指摘された武田薬品工業(4502)やデンソー(6902)、ブラジルの現地子会社との関係をめぐり10年以上争ったホンダ(7267)など、多国籍企業は多かれ少なかれ移転価格税制に異議申し立てをしています。
このように、国内大手企業も移転価格税制ををめぐって、非常に多くの問題を抱えているのです。
国税庁も移転価格税制対応の窓口を設置
世界経済のグローバル化が進み、租税回避地(タックスヘイブン)に代表される課税逃れの仕組みが登場するなど、企業を取り巻く税制の環境は年々複雑化しています。そのため、移転価格税制を利用した取引が意図しない脱税と認定されて、追徴課税の対象になるリスクも無視できなくなっています。
これを受けて、国税庁は2017年7月に移転価格税制に係る相談窓口を主要都市に設けるなど、問題の解決に動いています。
まとめ
経済のグローバル化に合わせて、税制も年々複雑化しています。世界的に見ても日本の実効法人税率は非常に高く、移転価格税制を利用して海外に利益移転させているケースもあります。
一方で、二重課税に代表される追徴課税のように、意図しない課税が付加されることもあります。多国籍企業にとっては、移転価格税制に係る対策は急務となっているのです。
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