
株主優待の始め方まとめ。人気の優待銘柄や権利確定日も徹底解説
株主優待は企業によって商品や金券、サービスがもらえるので、株主にとっては株価と同じく重要な要素になることもあります。そのため、収益および成長率を重視する通常の運用とは異なった視点で売買されることも少なくありません。
そんな株主優待を目的とした株式投資のはじめかたや効果的に取得するためのポイント、人気のある株式優待はどういったものかなどを解説します。
この記事のもくじ
明治期までさかのぼる株主優待
株主優待の歴史は、確認されているだけでも明治期にまでさかのぼります。東武鉄道の社史に、明治32年に『優待株数300株以上、優待範囲鉄道全線、優待株主数41名』という記載があり、株主に「全線無料パス」を配ったことが株主優待のはじまりと言われています。
1980年代のバブル景気により個人投資家が増加したことを背景に、本格的な株主優待のブームがはじまりました。それまで割引券などが主流だった中、食品メーカーやお菓子メーカーが自社商品の詰め合わせを株主優待として贈るようになったことで話題になり、提供できるような自社製品がない企業でも、金券を株主優待とするようになりました。
株主のつなぎ止めの役割を担っている株主優待
その後、景気後退のなかで投資家離れを防ぐ側面を持つ株主優待を実施する企業は爆発的に増加していき、98年には500社を超えました。そして、株価だけでなく株主優待も含めて銘柄を選ぶ投資家が登場したことで、株主優待が目当ての投資も盛んになりました。
株主優待を導入している企業はリーマンショックで一時期は減少傾向にありましたが、再び増加しつつあります。優待内容が豪華な銘柄も増えているため、以前にも増して優待目当ての投資は有効になってきています。
株主優待にはどんな種類がある?
株主優待でもっとも多いのは、株数に応じて自社のサービス店舗などで使える「金券」を付与する方式です。これにより、顧客の囲い込みと満足度の向上を目的としています。
次に多いのが「自社製品の詰め合わせ」で、これは食品メーカーなどが導入しています。これら金券・商品送付以外にも、レジャー関連の銘柄などでは年間パスポート(入場券)がもらえるなど、お子様がいる家庭ならうれしい優待銘柄もあります。
特殊な例として挙げられる「寄付型」
特殊な株主優待として配当の一部を寄付する「寄付型」があります。これは社会的貢献の意味合いが強く、この株主優待を導入している企業は「社会的責任(CSR)銘柄」とも呼ばれ、専門の投資集団も存在するため、株価が安定する傾向があります。
収益目的なら利回り優先
収益目的であれば利回りを上げることをが第一。株主優待でもらった商品をネットオークションなどで転売して利益化することもできますし、人気の優待券など利益化がしやすい「金券」をもらえる優待を狙っても良いでしょう。
逆に、家電製品や美容などの商品はターゲットが絞られてしまいますし、食品詰め合わせの優待は賞味期限・消費期限を考えると扱いづらくなりますので、収益目的には向いていません。
商品目的なら欲しい商品・サービスを狙う
商品目的なら、自分に合った商品を選べるカタログ型優待がとても人気です。百貨店や小売業にとって、自社商品を送ることは株主のニーズを満たせるだけではなく、ノーコストで在庫処分できるので、株主と企業にもメリットがあるのです。
株主優待をもらうには規定の保有株数が必要
株主優待をもらうためには、各企業で設定されている株数を保有している必要があります。株主優待に必要な株数は「○○株以上保有」というように記載されているので、単元株と合わせて株主優待に必要な株式数を見ておきましょう。
保有株数・期間によって優待内容が変わる銘柄もある
また、保有する株数や保有する期間に応じて、優待内容が変わる銘柄も珍しくなくなりました。ただし、優待ランクだけを目当てに一社に集中投資するのは分散投資の観点からも危険ですし、本来の投資の趣旨からずれてくる可能性があります。
株主優待を得るには権利確定日までに保有している必要がある
株主優待をもらうための2つ目の条件として、対象の銘柄を定められた期日までに保有しておく必要があります。その期日を「権利確定日(割当基準日)」といいます。
権利確定日とは企業により異なりますが、決算の関係で3月・9月に権利確定日が設定されていることが多いです。この権利確定日までに優待を受けられる条件を満たしていれば、株主優待を受ける権利を得ることができます。
権利確定日までに保有
権利確定日当日に株式を購入しても権利は得られないことです。権利確定日を含めた4営業日前を「権利付き最終日(割当最終日)」といい、この日までに株式を保有していれば権利を得られるので、株主優待では、この権利付き最終日が重要なポイントとなります。
また、権利付き最終日の翌日を「権利落ち日」といいます。権利付き最終日までに保有していれば、権利落ち日以降に売却しても、株主優待を受ける権利は残ります。ここまでのポイントをまとめておきましょう。
権利確定日から考える株主優待目当ての投資
株主優待をもらうには「権利確定日」と「権利付き最終日」、「権利落ち日」を正しく理解して、適切な期間に株式に保有する必要があります。
これらの期間の前後には株価が急激に変動するリスクもあるため、優待を目的とした株式運用では株価の変動要因をしっかりおさえておかなければ大きな損失を生むことになります。
株主優待による株価の動きを考慮する
株主優待を受け取れるかどうかは、権利付き最終日に株主だったか否かが重要であり、権利付き最終日の直近までに株式を購入すれば、それだけで配当・優待を受け取ることができます。しかし、同じように株主優待を狙って権利付き最終日に株式を買い、権利落ち日に株式を売る投資家はたくさんいるので、権利付き最終日や権利確定日周辺の株価は変動しやすいのです。
人気の株主優待を提供している銘柄は、権利確定日の数週間前から株価が急上昇します。目当ての銘柄を購入しようしても、高額になっていたり競争率が高すぎて購入できないことがあるので注意しましょう。人気の優待銘柄は総じて権利確定日と権利付き最終日の数週間前から株価が急激に上がり、それを過ぎると急激に下がりやすいといった特性があります。
株主優待銘柄はいつ買えばいい?
優待狙いの投資では、基本的に権利確定日の3営業日前までに株式を購入すればよいものの、その前後は激しく株価が変動するリスクがあるため、権利確定日直近で売買せず、長いスパンで保有するしたほうがより高い利回りを期待できます。
株主優待銘柄の購入タイミングは、一般的には権利確定日の2ヶ月前と言われていますが、狙っている優待銘柄があるのなら、権利確定日の直前に株価が動く銘柄かどうか調査するべきでしょう。前年・前々年度の権利確定日前後の株価は、過去の株価データなどから参照することができます。
もし、狙っている優待銘柄が高騰する銘柄なら、高騰が始まる2~3週間前に購入するようにすると良いでしょう。
株主優待はいつもらえる?
株式優待は、権利が確定した後に優待商品の割り振りが決められ、企業手続きにのっとって商品の送付が始まります。目安としては権利確定日からおおむね2~3カ月程度で株主優待が届く、というスケジュール感が多いようです。
優待商品が手元に届くまでには、株式の選別・購入・権利確定・到着まで、半年ほどの期間がかかります。
権利落ち日での売りは正しいのか?
権利落ち日以降は売りに出す人が多く、急激に株価が下がることがあります。株主優待を得られても、売却時に株価が下がっていれば損失が発生します。また、購入時も売却時も取引手数料がかかります。得られる株主優待での利益だけでなく、株式取引における損失も考慮して投資しましょう。
優待だけを狙う「クロス取引」
権利付最終日に現物買いと信用売り(空売り)を組み合わせて、株価変動によるリスクを0にして株主優待の権利だけを得ることを目的とする取引をクロス取引と言います。株主優待の権利を得て翌日に再度クロス取引を行うことで、場合などがある。
株主優待が縮小・廃止されることもある
話題を集めている株主優待ですが一方で株主優待を廃止する企業も増えています。株主優待の実施するかどうかや内容は企業側に一任されているので、株主優待の内容が変更されたり、株主優待が廃止されることは充分にあり得るのです。
しかし、株主優待を廃止をきっかけに長期保有の株主が離れてしまい、大幅下落のきっかけとなることもあります。
優待廃止になる一番の理由は?
株主優待が廃止されるもっとも大きな理由は、業績悪化です。経費削減策やテコ入れ策として、株主優待を廃止する場合があります。
また、企業側の負担が大きい株主優待も廃止されやすい傾向にあります。自社製品ならそこまで大きな負担にはならないのですが、ギフトカードや自社以外でも使える商品が優待だと注意が必要です。
人気のある株主優待にはどんな銘柄がある?
飲食品がもらえる株主優待
株主優待をうけることで、自社製品の飲食品が送られてくるタイプです。株主優待では一番イメージしやすいかもしれません。
伊藤園(権利確定月:4月)
飲料メーカーとして有名な「伊藤園」の株主優待の内容は以下の通り。
- 100株で自社製品1,500円相当を贈呈、通信販売製品を30%引き
- 1,000株で自社製品3,000円相当贈呈、通信販売製品を50%引き
普段から伊藤園の商品を購入している人とってはうれしい内容です。また、伊藤園には「伊藤園第1種優先株式」という株式があります。
これは株主総会での議決権がないかわりに、伊藤園の通常株よりも株価が割安、通常通り優待も受け取ることができるうえに、配当金が1.25倍受け取れるという株式です。優待には興味があるけど株主総会には興味がない、優待は欲しいけど資金はなるべく抑えたいという場合はこちらのほうがおすすめです。
江崎グリコ(権利確定月:9月)
江崎グリコというと誰もが知っている有名なお菓子メーカーです。実は、グリコはお菓子以外にも化粧品・美容品、バランス栄養食、カレーなどの加工食品なども販売しています。
株主優待内容は以下の通り。
- 100株で1,000円相当の自社製品
- 500株で2,000円相当の自社製品
- 1000株で4,000円相当の自社製品
グリコは幅広い商品を取り扱っているので、子どもだけでなく大人も楽しめる優待内容になっています。
味の素(権利確定月:3月)
調味料で有名な味の素は、100株で1,000円相当の自社商品が贈呈されます。また、1,000株で3,000円相当の自社商品、1,000株を3年以上継続して保有することで6,000円相当の自社商品が贈呈されます。味の素といえば調味料が有名ですが、化粧品やコーヒー、健康食品なども幅広く扱っています。株主優待もバラエティーに富んだものが期待できます。
食事券や割引券がもらえる株主優待
株主優待のなかで特に人気の高いのが「食事券・割引券」がもらえる銘柄です。多くの飲食店がこのタイプの株主優待を採用しているので、いきつけの飲食店がある人や、外食が好きな人はチェックしてみましょう。
日本マクドナルドホールディングス(権利確定月:6月,12月)
日本マクドナルドホールディングスといえば、世界的に有名なファストフード店、マクドナルドです。株主優待は特に人気が高く、以前マクドナルドで問題が起こった際に株価が大きく下落しなかったのは、株主優待のために株主がほとんど売却しなかったからだと言われています。
「日本マクドナルドホールディングス」の株主優待内容は以下の通り。
- 100株で食事券1冊
- 300株で食事券3冊
- 500株で食事券5冊
バーガー類、サイドメニュー、ドリンクの3種類の無料引換券がシートが6枚で1冊となっています。100株でも株主優待を受けると6回分の食事が無料になるうえに保有していれば年2回もらえるので、とてもうれしい内容となっています。
すかいらーく(権利確定月:6月,12月)
「バーミヤン」や「ガスト」、「夢庵」などのファミリーレストランを展開している会社が「すかいらーく」です。最近では「とんから亭」や「ステーキガスト」のような専門的なレストランも展開しています。
株主優待内容は、6月の場合は以下がもらえます。
- 100株で3,000円相当の食事券
- 300株で9,000円相当の食事券
- 500株で15,000円相当の食事券
- 1,000株で33,000円相当の食事券
12月の株主優待ではお食事券の値段が上がります。年2回もらえるうえに金額も大きいので、人気の高い株主優待です。
鳥貴族(権利確定月:1月,7月)
鳥貴族は全国的に展開され、幅広い年代に親しまれている焼き鳥屋。創業から低価格を続けており、特に若年層から人気が高いです。
株主優待の内容は以下が年2回。
- 100株で1,000円分の食事券
- 300株で3,000円分の食事券
- 500株で5,000円分の食事券
鳥貴族は1回のお会計がリーズナブルなので、食事券で充分食事を楽しむことができます。
お買い物券やプリペイドカードがもらえる株主優待
主にスーパーマーケットや百貨店の株主優待でもらえるのが、自社系列店で使える買い物券・プリペイドカードです。食事券よりも幅広い用途で使えるため、主婦の方々はこちらの株主優待のほうがうれしいかもしれません。スーパーによってはポイントカードを導入しているところもあるので、併用することでよりお得にお買い物ができます。
イオン(権利確定付:2月,8月)
全国で有名なスーパーマーケット、イオンの株主優待は少し変わっています。スーパーの優待にはお買い物券や割引券が多いなか、イオンではキャッシュバック式になっています。
株主優待を受けられるようになるとオーナーズカードが発行され、半年間での買い物100万円までに対して以下のようなキャッシュバックを受けられます。
- 100株で3%のキャッシュバック
- 500株で4%のキャッシュバック
- 1,000株で5%のキャッシュバック
- 3,000株 で7%のキャッシュバック
また、3年以上継続して保有することでギフトカードがもらえます。
- 1,000株で2000円分
- 2,000株で4,000円分
- 3,000株で6,000円分
- 5,000株で7,000円分
毎月ある5%オフの日やポイント2倍の日などと組み合わせればさらにお得に買い物ができます。
高島屋(権利確定日:2月,8月)
百貨店といえば「高島屋」を想起する人は少なくないでしょう。最近では旅行客も多く足を運んでいることで話題になりました。そんな高島屋の株主優待内容は1,000株で「10%割引券」が年2回もらえます。
マツモトキヨシ(権利確定日:3月,9月)
全国展開しているドラッグストア「マツモトキヨシ」の株主優待は、商品券が年2回もらえます。
- 100株で2,000円分
- 500株で3,000円分
- 1,000株で5,000円分
乗り物券や旅行割引券がもらえる株主優待
日本ではじめて株主優待をはじめたのが東武鉄道であるように、鉄道や航空会社など、旅客関係の株主優待は盛んです。旅行が好きな人はぜひチェックしておきましょう。
ANAホールディングス(権利確定日:3月,9月)
国内線の約5割のシェアを誇る、ANAホールディングス(全日空)の株主優待はとても豪華。「株主優待割番号ご案内書」という、片道運賃が半額になる優待券が年2回発行されます。
枚数は保有株の数によって以下の通り変化します(2017年9月までの優待内容)。
- 1,000株で1枚
- 2,000株で2枚
- 3,000株で3枚
- 4,000株で4枚(2,000株ごとに1枚増)
- 10,000株で7枚(4,000株ごとに1枚増)
- 1,000,000株で254枚(8,000株ごとに1枚増)
このほかにも様々な特典がついたANA優待券や、お買い物優待券などもあります。今後もサービスの拡充が計画されているとのことなので、注目すべき銘柄です。
東日本鉄道会社(権利確定日:3月)
東日本鉄道会社と聞いてもピンときませんが、山手線をはじめ国内の最大級の鉄道会社「JR東日本」を運営している会社です。株主優待の内容は乗車割引券(1枚で20%割引)。
- 100株で100株ごとに1枚
- 1,000株で10枚(200株ごとに1枚増)
- 10,000株で55枚(300株ごとに1枚増)
- 20,000株で100枚
- 50,000株で250枚
- 100,000株で500枚
このほかにも株主サービス券として、ホテル宿泊券やスキー場の割引券などがセットになっています。日々の生活での利用はもちろんですが、遠出をするときにも大いに利用できます。
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まとめ
株式投資は短期売買で利益を得る方法もありますが、その企業としっかり向き合って、中長期の保有で支援していく方法があります。株式優待は後者の投資スタイルに向いている方法だと言えます。地域に密着したものや企業活動に特化したものなど、豊かな資産形成や投資の楽しみを提供してくれるのが株主優待制度です。
株主優待は廃止や内容変更などに注意が必要ですが、投資をしながら株主だけの優待を受けられる仕組みです。人気の高い銘柄の株主優待を受けることはなかなか難しいですが、タイミング次第では獲得することができるかもしれません。趣味や生活に欠かせないものなど、自分に合った株主優待を見つけて利用してみてはいかがでしょう。
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