
少額投資非課税制度(NISA)とは?NISAの種類や使い方、口座開設の方法を徹底解説!
株式や投資信託の取引が非課税になる優遇制度である少額投資非課税制度(NISA)は、資産運用としてこれから株式投資をはじめる人には見逃せない優遇制度の一つです。
今回は、NISAの成り立ちやその仕組みはもちろん、メリットや使い方、口座開設までを徹底解説します。
この記事のもくじ
少額投資非課税制度(NISA)とは?
平成15年度(2003年)の税制改正で導入された証券税制の軽減税率は、何度かの延長ののち平成21年度(2013年)に全て廃止されました。この軽減税率に代わって導入されたのが、イギリスのISAを参考にした少額投資非課税制度(NISA)です。ちなみにNISAとは、Nippon Individual Savings Accountの頭文字をつなげたものであり、当初は日本版ISAと仮称されていました。
NISAの特徴として、株式や投資信託、上場投資信託(ETF)を対象に、年間100万円(現在では120万円に引き上げ)、最長5年間の最大600万円の投資が、売却時の利益や配当・分配金にかかる税金が非課税となることです。
NISA口座を開設するための条件とは?
NISA口座を開設する条件は、「満20歳以上・日本国内に在住していること」だけと、非常にシンプル。職業や立場を問わずに利用することができます。ただし、証券口座の開設には一定の審査を通過する必要があります。
主要な対面証券やネット証券に限らず、都市銀行や地方銀行、ゆうちょ銀行など、ほぼ全ての金融機関がNISA口座の開設に対応しています。なお、NISA口座の開設は一人1口座に限られ、口座開設と投資できる期間は2014年から2023年までの10年間です。
NISAの最大のメリットは非課税になること
NISAを利用するの最大のメリットは、値上がり益や配当・分配金などが全て非課税となることです。NISA口座以外での取引では、各種税金として20.315%が差し引かれることを考えると、一定金額まで非課税で運用できるNISA口座での取引は大きな魅力といえるでしょう。
投資初心者には充分な非課税枠
2014年のNISA開始当初は非課税枠は年間100万円でしたが、2016年には口座開設の期間延長と合わせて、非課税枠が120万円に拡大されました。単純に毎月10万円ずつ投資しても、全額が非課税で投資できるので、投資初心者にとっては十分な非課税枠が設定されているといえます。
非課税枠は、保有する株式などを売却したとしても枠が復活するわけではなく1回使い切りです。また、余ったときの繰り越しもできません。NISA口座での取引は、非課税枠を年内に無駄なく使うことと、途中で不本意な売却をする羽目にならないような銘柄選びを心がけて、投資計画を立てるようにしましょう。
非課税期間が過ぎたらどうなる?
非課税期間の5年が経過するまでは、売却するか新たに開始するNISA口座に移す(ロールオーバー)ことができます。何もせずに放っておくと特定口座に移管されて課税されてしまうので気をつけましょう。
ロールオーバーで非課税枠を超えないように注意
ロールオーバーを選択するとすでに投資した分は引き続き非課税で運用できますが、運用総額が非課税枠を超えると、ロールオーバーできるのは120万円までとなり、その年の新規投資ができなくなります。ロールオーバーをするときには、その後の投資計画とのバランスを考えて使うことが重要です。
NISAで取引できる投資商品は?
NISA口座で買い付けができる金融商品は、株式と投資信託、上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)です。それぞれの大まかな特徴を見てみましょう。
基本となる株式
株式とは、株式会社における株主としての地位(権利)を指し、株主が持つ権利である「株主権」や、株式会社の資本の構成単位、株式会社に対する株主の持ち分なども指します。
株式は値動きが大きいので、値動きの大きい銘柄に投資することで短期間でも大きな値上がり益を期待できますが、同時にリスクも大きくなりがちです。
手軽に分散投資ができる投資信託
投資信託とは、投資家から集めた資金を専任の投資会社や投資家(ファンドマネージャー)が運用して、その運用成果を投資家に配分する制度、および組成された金融商品です。
投資信託を株式のように取引する上場投資信託(ETF)
上場投資信託(ETF)とは、投資信託のうち、金融商品取引所(証券取引所)に上場して取引されている投資信託です。投資信託と比べると、時価で取引できる点が大きな違いと言えます。
不動産を投資対象とする不動産投資信託(REIT)
不動産投資信託(REIT)とは、不動産を投資対象とする上場投資信託です。投資対象を不動産に限定して、賃料収入や売却益を投資家に還元(分配)する仕組みとなっています。
» NISAのおすすめ銘柄とは?特性から考える一般NISAで買う株式の選び方
NISAで取引できない投資商品は?
NISA口座で取引できない金融商品として、預貯金や個人向け国債、貴金属などがあります。取引の種類で見ると、信用取引・オプション取引や外国為替証拠金取引(FX)も対象外となります。
気を付けたいのが、金融機関によってNISA口座の対象商品が異なることです。どの商品をNISA口座で取り扱うかは金融機関の判断に左右されるので、事前に確認しておきましょう。
NISAでおすすめの投資方法
NISAの恩恵を最大限に活かして投資をするためには、値動きが激しくなく安定して保有できて、バランスよく分散投資できる、という点に着目して商品を選ぶことが重要です。
デイトレードに代表される短期売買は、年間120万円の非課税枠をあっという間に使い切ってしまうため、NISA口座での取引には向いていません。NISAでの取引に適した銘柄は、NISAの弱点に着目すると選びやすくなります。
NISAと相性が良いのは投資信託の積立投資
NISAは値上がり益と配当・分配金という利益に対して非課税の制度であり、利益が小さければその恩恵は受けられません。NISAでどの商品に投資するかや、その組み合わせを考えることは非常に大切です。リスクを抑えて安定した運用を目指すなら、定時定額で買い付ける積立投資がおすすめです。
毎月定められた日に一定額を買い付けることにより、自動的にリスクをコントロールすることができます。積立投資での資産形成には長い投資期間を要しますが、利益獲得の可能性は高まるでしょう。
NISAのデメリットは?注意しておきたいポイント
NISA口座での取引は、一般口座や特定口座などの他の課税口座の利益から損失を差し引くことで課税額を圧縮する損益通算や繰り越し控除の対象外となります。すでに課税口座で取引をしている人は、そちらの運用状況も考えた上でNISAを利用するようにしましょう。
NISA口座での損失を考えると、ハイリスク・ハイリターンの商品は避けた方が賢明です。収支を安定させるためには複数銘柄へ分散投資して、値下げした銘柄の分を値上げした銘柄でカバーできる状態にしておくのも良いでしょう。
配当金の受取方法によっては課税される
高配当株式を中心に投資している人が注意したいのが、配当金の受取方法によってはNISA口座での取引でも課税口座と同じように課税されてしまう点です。
配当金の受け取り方法には、配当金領収証方式と登録配当金受領口座方式、株式数比例配分方式が主流ですが、NISA口座での取引ならば、株式数比例配分方式以外で配当金の受け取りをすると、課税対象となってしまいます。
株式数比例配分方式以外での受け取り方法を選択していても、株主として株主名簿に記載されて株主の権利が確定する日である権利確定日までに入金方式に変更すれば、非課税で配当金を受け取ることができます。
NISA口座を開設する証券会社の選び方
証券会社だけに限らず、都市銀行や地方銀行、ゆうちょ銀行でもNISA口座の開設はできますが、投資対象となる商品の充実度やサービス内容、取引手数料まで含めて考えると、証券会社、中でもネット証券での口座開設が有力な選択肢になります。
NISA口座の開設前には、取り扱い商品やサービス内容、取引手数料などを確認しましょう。
NISA口座開設でおすすめの証券会社
NISA口座を開設する証券会社を選ぶときの有力な選択肢は、取扱商品の充実や取引手数料を考えればネット証券は外せません。ネット証券の強みと言えば、やはり手数料の安さです。また、取扱商品も豊富でスマートフォンでもアプリから取引をすることができるなど、さまざまな面で便利なこともネット証券の大きな魅力です。サービスや手数料の面で特に優れているおすすめのネット証券として、楽天証券とSBI証券、マネックス証券があげられます。
楽天証券は株式売買手数料が無料のほか、口座開設時に必要となる住民票取得の無料代行サービスやポイント付与キャンペーン(不定期)などサービスが充実。SBI証券、マネックス証券も同じく手数料無料、住民票取得代行サービスを行っています。
NISA口座の開設にかかる時間と必要書類
NISA口座の開設には、所定の審査や手続きが必要なので、銀行口座のように即日開設ができることはごくまれです。口座開設が完了するまでに数週間から1か月程度かかることもあるため、余裕を持って申し込むようにしましょう。
NISA口座開設に必要となる書類
口座開設にあたり金融機関に提出が必要な書類は、本人確認書類と住民票の写しとマイナンバーの写し、非課税適用確認書交付申請書兼非課税口座開設届出書です。
非課税適用確認書交付申請書兼非課税口座開設届出書は、口座開設を申し込んだ金融機関から送られる必要書類に入っていますので、必要事項を記入するだけでOK。住民票の写しは市役所等で自分で取得できますが、証券会社が住民票を代行取得するサービスを提供していれば、それを利用するとさらに手軽です。「住民基本台帳カード」がある人はコンビニエンスストアで取得もできます。(※過去数年に異なる市区町村間での引っ越し履歴がある人は、住民票以外の書類が必要になることがあります。)
NISA口座を乗り換えるときのポイント
NISA開始当初は、口座開設から4年間は金融機関の乗り換えはできませんでした。金融機関選びを間違えると、不便があっても取引を続けるしかありませんでしたが、2015年から金融機関の乗り換えができるようになりました。
気を付けたいのが、すでに保有している金融商品の乗り換えはできないことです。例えば、A銀行でNISA口座を開設してすでに100万円を投資したあとにB証券にNISA口座を乗り換えても、A銀行で保有している商品はそのままA銀行で持ち続けることになるのです。また、金融機関の乗り換えは1年に1回なので、乗り換えは身長にするようにしましょう。
NISAの金融機関変更によるメリット
NISA口座の金融機関を変更するメリットがあるのは、いまの金融機関の取扱商品やサービスに不満があるときです。売買手数料の面でネット証券が有利なのに、普段の付き合いから都市銀行でNISA口座を開設したようなときには、乗り換えをするメリットは大きいといえます。
NISAの金融機関の変更方法
NISA口座の変更手続きは、それまでの金融機関への手続きからはじめます。まずは「金融商品取引業者等変更届出書」を提出して「非課税管理勘定廃止届出書」を受領したあとに、乗り換え先の金融機関に「非課税口座開設届出書」と、旧金融機関から受け取った「非課税管理勘定廃止届出書」を提出すれば完了です。
このようにNISA口座の乗り換えには口座開設よりも手間がかかるので、NISA口座の開設には取扱商品や取引手数料など、十分な比較・検討が欠かせません。
将来の教育資金づくりを目的とする「ジュニアNISA」
2016年からは、未成年者を対象とするジュニアNISAがはじまりました。一般NISAの対象年齢は満20歳以上ですが、ジュニアNISAは、口座開設する年の1月1日時点で20歳未満の、0歳から19歳を対象としています。
非課税対象や非課税期間は一般NISAと同様ですが、非課税枠が一般NISAの年間120万円に対して、ジュニアNISAは年間80万円までとなっている点や、原則として運用管理は親権者が代行する点が違います。
教育資金を目的とするジュニアNISA
ジュニアNISAの主な用途として想定されているのは、教育資金づくりです。ジュニアNISAの非課税期間は5年ですが、売却益や配当金・分配金は18歳になる年の12月31日まで引き出せません。これは、ジュニアNISAが教育資金を目的にしているためです。
教育資金を学資保険で準備する人も多いと思いますが、運用がうまくいけばジュニアNISAは学資保険よりもずっと効率良く教育資金を増やすことができます。運用面で不安がある人は、ジュニアNISAと学資保険をセットで準備しておくといいでしょう。
長期分散投資を実現する「つみたてNISA」
一般NISAとジュニアNISAに続いて、2018年には長期分散投資を実現するためのつみたてNISAが設けられました。つみたてNISAは金融庁が指定した一部の投資信託を、年間40万円・最長20年間の最大800万円まで運用することで、将来に向けた資産形成の一助になることが期待されています。
手軽にドルコスト平均法による長期分散投資を実現
つみたてNISAは購入する投資信託と購入金額を指定すれば、定時定額の買付を進めることで、簡単にドルコスト平均法を取り入れた投資ができるのが魅力です。非課税枠を見てみると、年間40万円・最長20年間の最大800万円までと、一般NISAの600万円よりも大きく設定されています。
つみたてNISAと普通のNISA制度との違いを、下の表にまとめました。
つみたてNISA | NISA | |
---|---|---|
非課税投資枠 | 40万円 | 120万円 |
購入方法 | 積立投資のみ | 自由 |
投資対象商品 | 一部の投資信託のみ | 株式・ETF・投資信託など |
非課税期間 | 20年 | 5年 |
このように、資産形成を目的とした長期分散投資を手軽に実現できるつみたてNISAですが、つみたてNISAで買い付けできるのは、金融庁が指定した一部投資信託に限られる点には注意が必要です。
つみたてNISAを利用する際のおすすめ銘柄をまとめましたので合わせて参考にしてみてください。
» つみたてNISAのおすすめ銘柄とは?少額かつ中長期での投資先選び
なお、NISA口座を開設では一般NISAとつみたてNISAのどちらかを選ぶので、併用できない点には注意が必要です。
つみたてNISAの取り扱いがある証券会社一覧
つみたてNISAに対応している証券会社の一覧です。平成30年1月中までに、つみたてNISAの取り扱い開始を日本証券業協会へ申し出た証券会社を掲載しています。(平成30年1月4日時点、計49社50音順)
- 藍澤證券株式会社
- あかつき証券株式会社
- 池田泉州TT証券株式会社
- 石動証券株式会社
- いちよし証券株式会社
- 今村証券株式会社
- いよぎん証券株式会社
- 岩井コスモ証券株式会社
- 宇都宮証券株式会社
- エイチ・エス証券株式会社
- エース証券株式会社
- 株式会社SBI証券
- 木村証券株式会社
- 極東証券株式会社
- ぐんぎん証券株式会社
- ごうぎん証券株式会社
- 光世証券株式会社
- 静岡東海証券株式会社
- 静銀ティーエム証券株式会社
- 株式会社証券ジャパン
- 株式会社しん証券さかもと
- 第四証券株式会社
- 大万証券株式会社
- 大和証券株式会社
- 髙木証券株式会社
- 竹松証券株式会社
- ちばぎん証券株式会社
- 東海東京証券株式会社
- 西日本シティTT証券株式会社
- 西村証券株式会社
- 野村證券株式会社
- 浜銀TT証券株式会社
- 百五証券株式会社
- ひろぎん証券株式会社
- フィデリティ証券株式会社
- フィリップ証券株式会社
- ふくおか証券株式会社
- ほくほくTT証券株式会社
- 松井証券株式会社
- マネックス証券株式会社
- 丸三証券株式会社
- 丸近證券株式会社
- 丸八証券株式会社
- みずほ証券株式会社
- 水戸証券株式会社
- 山和証券株式会社
- 株式会社ライブスター証券
- 楽天証券株式会社
- ワイエム証券株式会社
NISA口座の開設に向くおすすめのネット証券
NISA口座を開設するのに向いているのはネット証券であることは触れましたが、ネット証券の中でもサービスに違いがあるため、やはり十分な比較・検討は欠かせません。ネット証券の中でも、魅力的なサービスを提供している3社をピックアップしてみました。
カード決済でポイントが貯まる・使える楽天証券
ネット証券大手の楽天証券は、ネット証券らしい使い勝手の良いサービスの数々が魅力。特に見逃せないのが、つみたてNISA口座の楽天カード決済による積立投資と、楽天スーパーポイントを使ったポイント投資に対応していることです。
口座開設数No.1らしい使い勝手が魅力のSBI証券
ネット証券口座開設数No.1のSBI証券は、100円からの買付や豊富なラインナップ、複数銘柄の積立設定を一括でできるなど、手間やリスクを極力抑えてNISA口座での取引をはじめられる仕組みが魅力です。
ベーシックなサービスを提供するマネックス証券
ネット証券大手5社の1つに数えられるマネックス証券では、楽天証券やSBI証券のように独自の魅力があるサービスこそ提供していないものの、基本を抑えたサービスを提供しているので、すでに口座開設をして取引をしているなら、そのままNISA口座の取引をはじめるのに不足はありません。
まとめ
一般NISAやつみたてNISA、ジュニアNISAも、積極的に活用していきたい制度。どのような目的でNISAを使うにせよ、事前にそれぞれの特色をつかんでから口座開設をするようにしましょう。
NISA口座が開設できる、おすすめ証券会社の公式サイトは以下からご覧いただけます。
証券会社を選んで口座を作ろう!
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