
会社が互いの株式を保有しあう「株式持ち合い」のメリット・デメリット
昔は当たり前だった株式持ち合いですが、評価損の解消や透明性を高める要求から、現在では相当程度解消が進んでいます。しかし、株式持ち合いをしているからといって、それがそのまま「悪い会社」だと判断することはできません。
今回は、株式持ち合いにはどのような意味があり、株式持ち合いによりどのようなメリット・デメリットが生じるのかを見てみましょう。
この記事のもくじ
企業同士で株式を保有しあう「株式持ち合い」
株式持ち合いとは、複数の株式会社が相手方の発行済み株式を保有している状態です。安定した経営状態が維持しやすくなることから旧財閥企業やグループ企業間で積極的に株式持ち合いがされていました。
株式持ち合いは解消される傾向にある
企業経営にはメリットの大きい株式持ち合いですが、株主視点で見ると実はデメリットの大きい仕組みであり、現在では解消方向に向かっています。
バブル崩壊後の長引く株価低迷で保有している持ち合い株の価値額が下落することで評価損が経営にも悪影響を及ぼしたことや、物言う株主の増加により、株式持ち合いは解消が進んでいます。
株式持ち合いのメリットは「安定経営」
株式持ち合いの最大のメリットは、安定経営ができることです。また、買収できる株式数を減らすことで、買収防衛策としても機能します。それだけではなく、株式を持ち合っている会社同士で取引関係が強化されて、安定した売上・利益の確保も期待できます。
高度経済成長期の日本では、株式持ち合いによる安定した経営体制と取引関係が飛躍的な経済成長につながっていたのです。
企業統治が損なわれるというデメリット
安定経営ができるということは、裏を返せば企業統治(コーポレートガバナンス)が機能しないことをあらわし、長期的には業績低迷や経営破綻のリスクが高まることにもつながります。
また、せっかくの他人資本を拘束するので会社の財産を成長させるための拡大再生産に使えない状態になり、自己資本利益率(ROE)が低迷して、株主のリターンが低迷する可能性があります。しかも、持ち合い相手の株価が下落してしまった場合には、会社財産が大きく毀損してしまいます。
会社にも株主にもメリットのある株式持ち合いはあるのか?
株式持ち合いは、必ずしも悪いことばかりだと断じることはできません。事業会社による業務提携の証としてならば、多少の株式持ち合いにも意味があると言えます。
しかし、株式持ち合いによるメリットが生じないのであれば、それは業績を圧迫する悪い株式持ち合いであり、メリットの少ない持ち合いの解消を進める企業が増えています。
持ち合い解消は本当に強い企業の勝ち残りにつながる
株式持ち合いの解消が進めば、優れた経営と高い収益性で更なる成長が期待できる「本当に強い企業」が勝ち残る世界になっていくでしょう。しかし、株主の利益を過剰に求めるあまり、短期的な視点での経営を求めすぎて、長期的には失敗経営が推進されるリスクも無視できません。
つまり、株主持ち合いの解消が進むことは、株主(と経営者)が判断した経営方針が、短期的にも中長期的にも成長のための正しい判断なのかを見極める力が求められる世界でもあるのです。
まとめ
今の日本の投資家は「株主に経営参加権がある」という原則を忘れている人が少なくありません。
株式持ち合いの解消は「株主が経営者を選定し、会社の経営に最終的な責任を持つ」という、株式会社のあるべき姿に近づいている状態だと言えます。株主持ち合いの解消は、同時に投資家にもより責任ある行動を求めているのです。
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