
IPOなら損しないは本当か。でも大損失を被ることがある?
一般的に、IPO株投資は簡単にもうけられるとイメージされがちです。しかし、世の中にそんなうまい話がたくさん転がっているわけはありません。
いざIPO株投資を始めみても思ったように儲からず、損失を被ることもあります。なぜそうなるのかIPO株投資の仕組みから考えてみましょう。
この記事のもくじ
初値が高い株と公募割れの株を比較してみましょう
例として、2017年4月に上場した二つのIPO銘柄について比較してみましょう。ひとつは4月12日上場の「LIXILビバ(3564)」、もうひとつは4月25日上場の「アセンテック(3565)」です。
LIXILビバ | アセンテック | |
仮条件 | 1,950~2,200円 | 1,840~2,000円 |
公募価格 | 2,050円 | 2,000円 |
初値 | 1,947円 | 5,950円 |
公募価格比 | 95.0% | 297.5% |
結果 | 公募割れ | 3倍近い初値 |
LIXILビバは残念ながら公募割れとなってしまいました。
公募価格が仮条件の上限で決まっていないので、公募割れする可能性が高い銘柄と判断されていたのでしょう。しかし、そもそも公募価格が仮条件の上限にならないのには理由があるはずです。
IPOするときの売り出し条件に注目
注目すべきはIPOによって市場から吸収する金額です。IPOでは会社が新たに株式を発行する「公募株」と既存の株主が売却する「売り出し株」の両方がIPOに申し込む投資家に売却されます。その株式数に公募価格をかけたものが「資金吸収額」と呼ばれます。
では、LIXILビバとアセンテックの資金吸収額を見てみましょう。
LIXILビバ | アセンテック | |
公募価格 | 2,050円 | 2,000円 |
公募株数 | 約470万株 | 12万株 |
売り出し株数 | 約1,490万株 | 29万株 |
資金吸収額 | 約400億円 | 8.2億円 |
このように、LIXILビバの方が500倍近い資金を吸収しています。もちろん公募価格で買える投資家の数にも差があります。
極端な言い方をすればLIXILビバの初値が公募価格の何倍にもなるためには、アセンテックを買いたいと考える投資家の500倍(金額ベース)が必要だということです。
近い日程で上場する会社がある場合、資金吸収が難しくなる
資金吸収額が大きいとそれだけ買いが集まりにくくなり、初値が上がりにくい傾向にあります。その結果、人気が低迷している銘柄で公募割れが起きてしまうことがあるのです。これは、IPOする会社が立て続けにある場合にも起きる現象です。IPO株の申し込みをした場合、その購入金額分だけ資金が拘束されて売買に充てることができなくなります。つまり、たくさんのIPO案件があっても、「どうせほとんど外れるからという前提で、全部の銘柄に申し込みを入れておく」ということができないのです。結果として、前後数日中に複数の会社のIPOが控えている場合は、資金吸収額を合計して考えておかなければならないのです。
一般に言われる高勝率は、取引の勝率ではないと理解しておく
こういったことから考えると、「IPO株の勝率は何割」といった表現は必ずしも正しいとは言えないことがわかります。通常、IPOで高勝率をうたうときは「銘柄数ベース」で初値が公募価格を上回った割合を指していますが、投資家個人の目線で考える勝率は、「自分が購入できた銘柄数ベース」での割合です。初値が高くなりやすい銘柄は当選する確率が非常に低く、「自分が購入できた銘柄」は自然と不人気で公募割れしやすい銘柄が多いはずです。なんでも買えれば高確率で利益が出るのではないということを理解しておきましょう。
冷静な判断ができずに保有し続けるのは危険
IPO株は初値で売らなかった場合にも注意が必要です。「初値がとても高くなったから、まだ上がるのではないか?」、「初値が低かったけど、成長が評価されれば上がるはず」と考えて保有する人も少なくありません。IPOに限らず投資では客観的にその会社を評価する冷静さが必要です。人間は先入観に左右されてしまいやすいもので、一度知った情報に判断を左右されてしまうことがあります。「含み損が出ていても、いずれ買値に戻るはずだ」と考えてしまうのが最たる例で、これを「アンカリング効果」と言います。心理学的にも有名なもので、正しい判断を阻害する要因となります。
冷静な判断ができないと、想定外の損失をこうむることも
アンカリング効果に振り回されていると、無意味な塩漬け状態になってしまいがちです。初値があまり高くならなかったために売却せずにいて、「いつかはもっと上がるはず」と塩漬けしていると、初値天井で株価が下がり2~3割の損失というのはよくある話です。「高確率でもうかるはずだ」という思い込みがあるために、非常に損失が大きくなってもなかなか売却できない人は少なくありません。IPO株投資では、そういった思い込みを取り払って売買できるようになることも大切なのです。
まとめ
「IPO株投資は確実にもうかる」と思い込みすぎることが、IPOで大きな損失を出してしまう原因です。そのためにも、ここで説明したように、「自分にとっての勝率は、銘柄数ベースの理論上の高い勝率とは異なるのだ」ということを理解しておきましょう。
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