株の教科書.com

パターン分析の実際

前回までのコラムで、有名なチャートパターンを見ました。ヘッド・アンド・ショルダーや、ダブルトップなどです。ただし、これらはトレンド反転のパターン、すなわちこれまでの上昇トレンドが終わって下降トレンドに変わる、あるいはこれまでの下降トレドが終わって上昇トレンドに変わる節目を教えてくれるものでした。今回は、ややマニアックな分析方法ですが、株価のトレンドが継続していることを示すパターンを中心にご説明いたします。

トレンドラインの復習

(図1)TOPIX(日足)
まず、図1を見て下さい。これは、TOPIXの今年4月以降の値動き(日足)を示していますが、ここから何が見えてくるでしょうか。まず、以前ご説明しましたトレンドラインを引いてみましょう。
(図2)TOPIX(日足)

図2が、そのトレンドラインの例です。まず、上昇トレンドライン○aがあります。4月17日の底値(1452ポイント)と、4月19日の次の底値(1463ポイント)を結んで延長したラインです。これは株価のサポートラインにもなります。このラインと平行に引いたラインを、4月26日につけた最初の天井(1537ポイント)から引くと、レジスタンスライン(上値抵抗線)になります(○b)。相場は、4月半ばから5月半ばまで、このようなチャネル(○aと○bにはさまれた通路)を形成しながら上昇しました。

しかし、5月18日に、このサポートラインをブレイク。ただ、下降トレンドへの転換は免れました。新たな上昇チャネルをつくります。今度は○cがサポートで○dがレジスタンスになるチャネルが形成されます。ただし、2番目のチャネルの傾きは、1番目のチャネルの傾きよりも緩やかです。これは、上昇のエネルギーが弱まっている可能性を示唆しています。しかし、上昇トレンドが終わったとか、上昇トレンドが下降トレンドに転換したことを意味しているわけではありません。トレンドに乗るという投資戦略ならば、明確なトレンド転換のサインが出るまでは買いポジションを維持する場面でしょう。

フラッグとペナント

今度は、同じチャート(図1)について、パターン分析を行います。このチャートでは、少なくとも4つのパターンが見て取れます。これらは、「フラッグ」と「ペナント」と言われ、トレンドが継続していることが確認できるパターンです。

○1が「フラッグ」です。数日から3週間程度の比較的短い期間に、小さい値幅の日が続くケースです。平行線により囲まれている形が「旗」の形になっているために、フラッグと呼ばれます。ただし、フラッグは、③や④のように右肩下がりの場合もあります。

(図3)TOPIX(日足)

一方、同じように、日々の価格の動きが小さいケースで、次第に値幅が狭まる場合は「ペナント」と言われます。学校の校章などを付けた細長い三角形の旗のイメージです。図3では②がそれに当ります。ペナントは、三角形になっているので、トライアングル(三角保ち合い:さんかくもちあい)にも見えます。ただ、②のパターンが維持されたのは12日間だけでした。このように短い期間の間に株価が収束するケースは、トライアングルではなく、ペナントと言われます。トライアングルはもう少し長い期間をかけて、三角形のパターンが形成されるケースを言うからです。とりわけトライアングルは、トレンドの転換につながるケースがあります。その観点からも、トレンドの継続を確認するペナントとは区別されるべきでしょう。

トレンドの継続を示すパターン

繰り返しになりますが、ペナントとフラッグは、中長期の上昇トレドや下降トレンドが一時的に止まる時に現れるものです。すなわち、トレンドの終了を示すものではありません。上昇トレンドであっても、一時的に上値が抑えられ(①のケース)、あるいは徐々に上値が低くなり(②のケース)、あるいは株価がじり安になる(③、④のケース)ことはあります。

これは、それまで継続した株価の上昇に対する当然の反動と言えます。先行して買った投資家による利益の確定売りを、新たな買い手が吸収する場面です。言い換えれば、古い買い手から新しい買い手にバトンタッチする時間帯が、ペナントとフラッグということができます。

したがって、このようなパターンが現れ始めた時には、これまでのトレンドに沿った投資をまず考える必要があります。言い換えれば、戻り売りに押されただけですので、積極的に売り込む局面ではありません。

たとえば、上昇トレンドのなかでペナントやフラッグが現れた場合、この上値抵抗線のブレイクは、上昇トレンドの確認であり、買いのシグナルとみなすことができます。

さらに、ペナントやフラッグだけでなく、他にもトレンドが続いていることを示すテクニカル指標や、チャートパターンがある時には、ペナントやフラッグの確度は一段と高まるでしょう。たとえば、次のカップ・ウィズ・ハンドルのケースがあります。

カップ・ウィズ・ハンドル

カップ・ウィズ・ハンドル(A cup with handle)は、米国の著名投資家のウィリアム・オニールが紹介した価格パターンです。カップ・ウィズ・ハンドルは、取っ手付きのカップ(コーヒーカップ)をイメージして下さい。カップの部分は大きな半円であり、それにハンドル(取っ手の部分)の小さな半円が続きます。それが完成したところが、株価の底入れの確認として、買いのタイミングになるということです。

(図4)TOPIX(日足)

図4はカップ・アンド・ハンドルの例です。Aはカップの形成であり、株価が底入れする過程です。カップを形成し、縁の部分に来た時に、もう一度下落に転じます。そこで、ハンドル(取っ手)を形成していきます(Bの時点)。そして、ハンドルの縁に戻した時(Cの時点)が、買いのタイミングになります。

この例では、同時に図3でみたペナント(②)が形成されます。Cはカップ・アンド・ハンドルであると同時に、ペナントの上値抵抗線のブレイクでもあります。したがって、中期の上昇サイン(カップ・アンド・ハンドルの完成)と、短期での上昇サイン(ペナントのブレイク)が重なることで、この買いのサインは、成功の確度が高いと推定されます。実際に、その後、株価は上昇しました。

アイランド・リバーサル

なお、図4のDはアイランド・リバーサルと言われる株価のパターンです。Dの部分にある7日間の株価は、前後の株価とは重なっていません。具体的には、3月10日はマド開けで始まり、その日の安値は前日(3月9日)の高値を大きく超えています。すなわち、3月9日と10日の株価は重なっていません。

そして、株価は3月22日に急落して始まりました。下にマド開けとなり、この22日の高値は前日21日の安値を大きく下回っています。その結果、3月10日~21日の7日間の株価は、孤島(アイランド)のように、ポツンと取り残されています。この状態は、アイランド・トップとも言われ、株価が天井を打った可能性を示唆するものとされています。

一方、このようなアイランドが下落相場の中で見られると、これはアイランド・ボトムとして底入れのサインになる場合が多いと言われます。ただ、わたしは経験上、このパターンの確度はそれほど高くないと考えています。一旦アイランドになっても、その後にマド埋めとなるケースは少なくないためです。そのため、単独ではなく、他の指標と合わせて考える必要があります。

トライアングル

(図6)米ナスダック(2015年日足)

最後に、トライアングルを確認します。上値抵抗線と下値支持線が次第に収束する株価のパターンです。ナスダックの例が図6です。株価が収束する点はペナントと同じですが、トライアングルの形成にはより長い期間を要します。比較的長い時間をかけて保ち合っていることで、上昇トレンドならば、その間に利益の確定売りが消化され、需給が大きく改善する可能性があります。したがって、株価がトライアングルの上値抵抗線を突破した場合に、改めて上昇トレンドが加速するケースもあります。

なお、トライアングルを形成する場合、それまでのトレンドは維持されていると見るのが基本です。トライアングルの前が上昇トレンドであれば、その流れは続くと考えるべきでしょう。 

ただし、トレンドが反転する可能性を否定するものではありません。トライアングルの期間が長引けば、市場で株価の上値が重いとの見方が広がり、利益の確定売りが圧力がかえって強まる場合があります。また、トライアングルが長引けば、その間に上昇トレンドを支えてきた事情(マクロ経済の改善や、外国人投資家の買い越し基調など)が変わる場合もあります。

したがって、トライアングルのブレイクだけでなく、他のテクニカル指標なども参考にしながら、買いの判断をすることが大事でしょう。

相場の徒然‐トライアングルとロスカット

トライアングルの上値抵抗線の突破は、基本的には上値トレンドが期待されます。しかし、上昇トレンドの形成がとん挫するケースもあります。それは、時間が経つうちに株価の上昇を支えてきた要因が変化し、上昇基調が維持できなくなることがあるからです。

(図7)TOPIX(日足)

図7は今年のTOPIXの例ですが、1月から2月にかけてトライアングルを形成していました。そのなかで、上値抵抗線を何度もトライし、やがて本格的にそれを突破しました(○fの時点がそれに当ります)。

ところが、その後、株価は失速し、最終的には4月にかけて大きな下落トレンドを形成しました。ポイントは○gの時点です。これは、トライアングルが収束した株価水準です。これを下回ることになれば、トライアングルから上放れたことを打ち消す動きと見るべきでしょう。トライアングルの上値ブレイクで買いポジションをとった場合は、こロスカットを考える場面です。

さらに、このケースでは、○hでアイランド・リバーサル(アイランド・トップ)があります。この天井打ちのサインも、ロスカットを考えさせる要因でした。

むさし証券チーフストラテジスト、北海道大学新渡戸カレッジ・フェロー。北海道大学を卒業後、山種証券(現SMBCフレンド証券)に入社。エクイティ・デリバティブ取引のディーラーとなり、その後、世界最大の穀物商社カーギルでの日本株運用部長、みずほ証券エクイティ部のトレーディング担当部長などを歴任。一時、ベンチャー企業の立ち上げに参画し、上場を果たした。さらに、アジア中心に海外勤務を経て現職。北大でもグローバル人材の育成を行っている。法政大学経済学修士、日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会正会員。著書に、「デイトレード入門」「株式先物入門」「FX入門」「初めての海外個人投資」(いずれも日本経済新聞出版社刊の日経文庫)など。
総合評価
(0)
Pocket