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水産・農林業(2016年11月)

東京証券取引所では上場した各企業を、基本的に最も売上高が大きい事業を基準に33業種に分類している。その中でも東証1部に上場している銘柄を業種ごとに算出した指数が「東証業種別株価指数」で、主に時価総額の大きい銘柄に左右されやすい。ここから業種ごとの動向を読み取れるため、株式市場全体を見るにあたっても重要な指数と言えよう。今回は「水産・農林業」に焦点を当てていきたい。

「水産・農林業」とは?

「水産・農林業」に分類される銘柄は全部で11銘柄、そのうち東証1部は6銘柄。業種名の通り主に水産品を扱う“水産業”や、耕作物、農産物、家畜の育成による肉・乳製品等を生産する“農業”、森林から主に木材を伐採し生産する“林業”が含まれる。ちなみに林業に関連してキノコなどもここに分類される。

足元の株価指数動向

「水産・農林業」指数週足チャート(期間1年)

「水産・農林業」の時価総額トップは日本水産(1332)で、同社についてSMBC日興証券とみずほ証券がともに最上位へ投資判断を引き上げたことをきっかけに、株価指数は昨年12月の400ポイント割れから年初490ポイントに急騰。

その後もSMBC日興証券が同社の目標株価を引き上げたことで、6月に再度490ポイント台乗せを果たしている。この1カ月ほど前に日本水産は前3月期決算を発表し、北米や欧州を中心とした冷凍食品、水産チルド品等を扱う食品事業の好調が確認されていたが、同時期に発表された時価総額ランキング2位で同じく水産業主力のマルハニチロ(1333)の前3月期決算においても、北米・欧州を中心とした水産加工品の好調が確認されており、総じて水産市況の好転が評水産・農林業価されたようだ。

こうした市況背景からも2016年の「水産・農林業」の指数動向は好調で、業種別の株価指数騰落率では前年比20%以上のプラスと、33業種の中でも群を抜いた上昇率を示している。

TPP発効で環境好転

「水産・農林業」は基本的に季節や天候、消費者の嗜好(しこう)といった事象が主な変動要因となるが、最近の注目点としては「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)」が挙げられる。TPPを巡っては国内で野党の反発や、トランプ次期米大統領が反対していることなどから正式発効が不透明となっているが、このTPPによる最大のメリットは関税の引き下げによる調達コストの低減・輸出入の拡大で、特に輸出に関しては、政府による海外輸出額拡大策や海外の「和食ブーム」が今後の追い風となってくるだろう。

一方で輸入増加による国内農業への影響が懸念されているが、こちらはむしろ関連企業には農業改革支援による恩恵享受が期待できるので、影響は限定的とみられる。

時価総額ランキング上位3位をピックアップ

◎日本水産(1332)

かつては苦戦を強いられていた南米における鮭鱒養殖事業の好転や全体的な魚価の回復により、今3月期営業利益は当初の減益予想から一転、195億円(前期比0・3%増)と増益基調の継続を見通す。

第1四半期営業利益は2ケタ減益で着地していただけに、11月4日に発表された第2四半期決算における大幅な収益回復は市場から高い評価を得た。

最近ではこれまで取り組んできた完全養殖本マグロの研究開発や事業化について、17年冬より「喜鮪(きつな) 金ラベル」を出荷する見込みとなったことを発表しており、販売単価が上昇しているマグロの出荷増による寄与も期待される。

◎マルハニチロ(1333)

水産最大手の同社では海外における水産物・加工食品や、国内での家庭用・業務用冷凍食品の売上が好調。足元の野菜価格の高騰などもフリーズドライ製品の需要増につながっているとみられる。

今3月期第1四半期ではこれらの要因や各事業における大幅な収益改善から、営業利益72億3,900万円(前年同期比2・6倍)と大幅増益を達成した。

足元好業績も評価されているが、特に業務用食品に関しては業務用介護職でのシェアはトップクラスといった点からも引き続き注目しておきたいところ。同社では今後、在宅介護者向けの介護食にも注力していくとのことから、少子高齢化を追い風にさらなる需要拡大が見込まれる。

◎サカタのタネ(1377)

農作物の元となる種苗を手掛ける同社はTPPの話題が挙がりはじめた当初から注目度が高い。類似企業に指標面での割安感が強いカネコ種苗(1376・2部)が挙げられるが、国内シェアの高さ、新興国を中心とした海外市場での高成長は文句ナシといったところだ。

国内での種苗市場の頭打ちが懸念されるが、今5月期第1四半期決算では国内の野菜種子・苗木の売上伸長が好調だったことで営業利益47億6,400万円(前年同期比24・2%増)と大幅増益で着地。

今期営業利益は60億円(前期比18%減)を見通しているが、第1四半期時点ですでに進捗率79%を達成しているため、この先の上方修正および上ブレが有力視される。

【おわりに】

これらを踏まえると、業種としては“低コストでの安定した供給”“海外での収益力”といったことがポイントになってくる。そうした意味でも、TPPに関連する動向には引き続き注目しておきたいところだ。

どちらに転ぶにせよ「水産・農林業」にとって大きな転機となることには違いないだろう。

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