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読者からの声

読者からの声

前回の北浜M&A通信では、「実践M&A(企業合併・買収)」教室のゲストにお招きしたFさんが、自らが興した会社をより成長させるためのパートナー選びに際し、どのように進めたかを振り返りました。そして、Fさんの件に限らない経験則として、「ミタニの譲手の法則」として、譲り渡す方は「価格」「品格」「スピード感」の3要素の中で優先順位や基準を決め、候補が現れた場合にはそれに照らして判断することが重要である、ということをお伝えしました。

2016年4月半ばに、東大阪市のAさんからお電話をいただきました。「私は会社を経営しているが、前向きなパートナー探しを検討しており、2人のM&Aアドバイザーに相談している。複数に依頼することはできないと両者から言われており、どちらかに決めなければならないが、北浜M&A通信を読んでどうしたらよいか分からなくなった」というものです。

混乱させてしまったとすれば、これは穏やかなことではありません。Aさんのお悩みとはこういうことでした。

「以前、ある銀行からビジネスマッチング先として紹介されて取引を始めたX社について、その銀行のM&Aアドバイザー(甲)氏から『X社の子会社としてビジネスを広げていく、ということに興味はありませんか』という提案を受け、『なるほど、X社とはいい関係が築けているし、そういう考え方も有り得るな』ということで興味を持ち検討を始めることにした。

大事なことだからいろいろな意見を聞いてみようと、以前からダイレクトメールを送ってくるM&A専門会社に連絡したところ、アドバイザー(乙)氏が押っ取り刀で駆けつけてきて、30社以上の企業名の入ったリストを見せながら『当社に寄せられているM&Aニーズを踏まえ、パートナーにふさわしい会社は少なくともこれだけあります』と言う。

リストには、業界トップ企業から、あまり関係のない業界の聞いたことのない会社まで記載されており、(乙)氏いわく『どの会社も強いニーズを持った良い相手です。とにかく当社をアドバイザーにしていただければこれだけの候補をご紹介できます。私に任せてください』と言われ、X社に限らず良いパートナーを探そうという気持ちに傾いたこともあり、(甲)氏には悪いが、(乙)氏の話をもう少し聞いた上でお願いしようと決めた。

たまたま記事を目にし、なるほど、と思ったので、『譲手の法則』の話をしたところ、(乙)氏は『それは後で分かることです。取りあえず貴社に興味を持ったところから順番に会えばいいじゃないですか』と言われ、そういうものかと思いつつも、きっかけとなったX社の話をまずは聞いてみたいという思いもあり、(甲)氏(乙)氏、どちらに依頼したらよいか悩んでいる」

Aさんは「法則」にある程度の納得をいただきながらその優先順位は決まっていない、ということでしたので、私はこう申し上げました。

「(乙)氏のことが信頼できるのであれば、いろいろなお相手の紹介を受ければよいのではないでしょうか。ただし、アドバイザーによっては、自分達にとって話をまとめやすい候補を優先したり、貴社にとってふさわしい候補が興味を持ったにもかかわらず彼らの事情で話を進めてもらえなかったりすることもあるので注意が必要です。そういう意味では、可能性やボリュームを増やすためだけの適当な候補リストになっていないか、という点は一つの判断基準となるかもしれません。

今回は、秘密保持を約束した上でX社の存在を(乙)氏に伝え、まずは、(甲)氏を通じてX社と交渉しましょう。その交渉の過程で納得できれば決断し、そうでない場合には、いったん白紙にして、あらためて(乙)氏に相談すればよいのではないでしょうか。(乙)氏が、そういう事情を斟酌(しんしゃく)してくれないようであれば、同じようなサービスを提供できるアドバイザーは複数存在していますから、ほかのアドバイザーにも相談してみてはいかがでしょうか」

AさんとAさんの経営する会社が良いパートナーに巡り合うことを心から祈りまして、次回こそは、今回延期になりました「価格」について考えていくことにします。

1990年3月大阪大学法学部卒業、同年4月日本興業銀行(現みずほ銀行入行)、同行退職後、銀行系証券、独立系M&A仲介会社、上場企業広報・IR・M&A部門責任者を経て、2016年1月ジャパンM&Aアドバイザー代表取締役社長に就任。同志社大学大学院ビジネス研究科講師を現任。
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