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頼れる配当利回り

頼れる配当利回り

今回のコラムでは、配当利回りについてお話します。配当利回りといえば、配当を目的に投資を行う「配当狙い」という言葉を連想する方が多いでしょう。この投資法は正解なのか? 以下で、詳しく見ていきます。

配当利回りとは

配当利回りとは

配当利回りは、配当を株式の価格で割って求めます。

配当利回り(%)=一株当たり配当金/株価×100

この指標は、株式を債券や預貯金のように見立てて、株式の収益性を測ろうとするものです。すなわち、株式の買い付け金額を元本、また配当を利息に置き換えて、預金のように、投資金額の何パーセントのキャッシュが投資家に支払われるのかを見ます。

一般に、配当利回りを利用する目的は、次の二つでしょう。

  • (目的1) 債券や預貯金と比較して、株式投資が有利か不利かを見極める。
  •   

  • (目的2) 株式同士を比較する(投資銘柄を決める要素として、配当利回りに注目)。

素直に見れば、株式の配当利回りが預貯金の金利よりも高ければ、株式に投資したほうがよさそうです。また、配当利回りが低い銘柄より、高い銘柄に投資した方がよさそうです。私は、この考え方には基本的に賛成です。ただし、短期投資ではなく、長期投資が前提となります。

利回りを比較すると

利回りを比較すると

まず、(予想)配当利回りは、3月1日現在、東証1部上場銘柄の平均で1.65%です。ここでの「予想」は、各上場会社の予想であり、各社が発表した配当金額の見通しです。

また、主力30銘柄(TOPIX コア30採用銘柄)に絞ると、予想配当利回りの平均は2.4%です(表1参照)。個別の銘柄をみても、日産自動車やキャノンは4%台の予想配当利回りです。

表1:TOPIX30銘柄の予想配当利回り

これに対して、ゆうちょ銀行の定額貯金(3年以上)の金利は現在0.01%です。また、個人向け国債10年満期の利回り(変動)は、現在0.06%です。加えて、株式の配当金には、NISA(小額投資非課税制度)が適用されます。年間120万円までの株式投資に対しては、その配当金は非課税となります(通常は、配当金や利子に対しては、20.315%の税金が課されます)。


リスクへの対応

リスクへの対応

したがって、以上の観点からは、配当利回りが圧倒的に有利に見えます。ただ、株式には値下がりリスクがあります。株価が10%下落してしまえば、2%程度の配当をもらっても、結果的には損失が発生します。
実は、株価(TOPIX)の年間の変動率(上下の動き)は、過去20年の平均で20%です。株価は、1年の間に、上方向か下方向に平均で20%動きました。したがって、2%程度の配当利回りは、この株価の動きとの比較では大きくありません。言い換えれば、1年後に株価が大きく下がっていれば、配当狙いも水の泡です。

このリスクを消し去ることはできません。株式投資は預貯金を上回るリターンが得られますが、そのためにはリスクを取る必要があるからです。

ただ、このリスクを弱める工夫はできます。それは、収益力の高い銘柄に投資することです。収益力が高く、経済環境などにかかわらず着実に利益を上げられる会社は、一定以上の配当を続けていくことができます。これは、その株式への買いを促す要因となり、株価の下値支えとなります。

その収益力が高い会社の典型は、売上高に対する利益の割合が大きい会社です。売上に対してたくさんの利益が上げられることが収益力の強さです。

その収益力をはかる指標にROAがあります。これは、“Return on Assets”の略であり、総資産利益率と言われます。その計算式は次の通りです。

ROA(%)=利益/総資産×100

このROAが高い会社は、収益力が高いと見ます。

ROAは、会社四季報に掲載されています。ここでは、当期利益と予想当期利益を総資産で割って、それぞれROAと予想ROA求めています。このROAは当期純利益率ともいわれますが、日本企業の平均は約4%です。もちろん、業種による差があります。同業種で同じ配当利回りならば、ROAが高い銘柄に注目していきましょう。

さらに、配当を重視するならば、長期投資が大事です。仮に、配当利回りが2%でも、10年間の累計では20%の配当を受け取ることができます。これにより株価のマイナス分をかなり吸収することができます。そのうえで、市場全体の動きと、株価の成長を見ながら、適切な対応(利益の確定)などを行えば、収益を確保していく可能性は高まるでしょう。

高配当は有利とのデータ

高配当は有利とのデータ

つぎに、目的2の株式同士の比較のために配当利回りを使うケースを考えます。結論から言えば、やはり配当利回りが高い銘柄は、低い銘柄よりも有利と言えそうです。ここで、高配当銘柄のグループ(A)と配当の低い銘柄のグループ(B)に分けて、次のようなシミュレーションをしてみました。

まず、TOPIX採用銘柄のうち、時価総額の大きい500銘柄を取り上げました。そのうち、配当が高い方から100銘柄について、同じ金額ずつ投資した場合の投資成果を出します。投資期間は2001年から2016年までの15年間とし、毎年末に配当の高い100銘柄を選び直して、再投資していきます。このグループが(A)高配当ポートフォリオ(高配当P)です。

つぎに、同じく時価総額の大きい500銘柄のうち、配当が低い方から100銘柄のグループが(B)低配当ポートフォリオ(低配当P)です。これも、過去15年について、毎年末に低配当の銘柄になるように見直おし、各銘柄に同じだけ投資したとして、投資成果を計算しました。

その結果が、表2です。かなりややこしい表ですが、注目すべき結果を示しています。

まず、表のなかの「累積リターン」は、15年間の投資で得られた利益です。株価の値上がり益(あるいは値下がり損)と15年分の配当を足し合わせて、投資元本に対する割合(パーセント)で表しました。高配当Pは143.1%であったのに対して、低配当Pは55.23%でした。高配当Pは低配当Pの3倍近い成果が上がったということです。


これは毎年のリターン(損益率)にも表れています。各年のリターンを平均すると、高配当Pは8.1%の利益であったのに対して、低配当Pは5.29%にとどまりました。

次に、市場全体のパフォーマンス(成果)と比較してみます。市場全体を示す指標として、東証1部上場銘柄全体の動きを示す指数のTOPIXを使います。このTOPIXと、高配当P、低配当Pの関係を示すのが、表の「超過リターン」です。

高配当Pの超過リターンが1.1%というのは、高配当PのリターンがTOPIXのリターンを平均で1.1%上回ったということです。すなわち、配当が高い銘柄のグループは、市場全体よりも投資成果が良かったということです。一方、低配当Pが-1.65%ということは、低配当Pのリターンは、TOPIXをその分だけ下回ったということです。したがって、配当が低い銘柄のグループは、配当が高い銘柄のグループよりも投資成果が小さかっただけでなく、市場全体と比べても投資成果が低かったということになります。

リスク回避でも高配当が有利か

リスク回避でも高配当が有利か

さらに、リスクの観点からも、高配当Pは優れています。リスクを表す指標として「標準偏差」があります。金融理論では、この数値が大きい方が、リスクが高いと定義されています。高配当Pの16.4%に対して、低配当Pは17.8%ですから、高配当Pよりも低配当Pの方が、リスクが高いことになります。

このことは、ベータという項目にも現れています。ベータは、1に近付くほど、市場全体(TOPIX)に近い動きをすることを表しています。この指標は低配当Pの方が高くなっています。したがって、低配当Pは高配当Pに比べて、市場全体の動きに左右されやすいということになります。逆に、高配当Pは、低配当Pに比べて、安定した動きであったと言えます。

以上を総合しますと、高配当銘柄は、長期的に投資をすれば、低配当銘柄よりリターンとリスクの両面で優れていると言えそうです。また、市場全体との比較でも、高配当銘柄は投資成果が良いということがわかります。

したがって、投資銘柄を検討するとき、同じような銘柄であれば、配当利回りが高い銘柄を選ぶべきでしょうね。さらに、先述の通り、収益力の高い銘柄グループに長期投資にすれば、預貯金よりも有利になる可能性が高まります。

投資の徒然

赤字受注はコストの一部

先日、ある製造業の幹部の方とお会いした時、興味深いお話を聞きました。その会社は、同社の製品について、3年半先まで受注済みとのことでした。私は、「業績は好調ですね」と感心しました。

ところが、その幹部のお話は意外なものでした。「実は、注文通りに製造すれば今後1~2年は利益が出るのですが、3年先の注文は赤字になってしまう」と言われるのです。いまの市況環境(資材市況や外国為替相場)のままだったら、3年先は赤字が免れないというのです。

一見、無理をした受注合戦の末に、赤字覚悟のダンピングで受注したのではないかと疑問がわきます。しかし、その会社は、別の観点から受注していたのです。

観点の一つは、長期的に事業を続ける中では、黒字と考えていた注文が赤字となり、赤字と考えていた注文が黒字になることもある。経済や景気の大きな浮き沈みの中で事業を続けるならば、読めない市況に振り回されず、コンスタントに注文をこなす方が大事という知恵に基づくものです。

もう一つの観点は、継続して受注することで、一定の雇用を確保し、ノウハウを継承することができることです。一時の赤字も、長期に高いレベルの業務を継続するためのコストとみているのでしょう。
もっとも、この会社がこのようなスタンスを取れるのは、マクロ経済は読めなくとも、顧客のニーズがきちんと読めること、自社の技術が業界で優位にあること、そして自己資本が極めて厚いというミクロ面での確信があるからです。

株式投資についても、顧客ニーズがあり、技術力(収益力)があり、また自己資本の厚い企業が有望でしょう。このような会社で配当利回りが高ければ、明らかに長期的な投資対象です。また、長期投資を前提とすれば、一時のマイナス・リターンは、収益を得るためのコストと考えられますね。

むさし証券チーフストラテジスト、北海道大学新渡戸カレッジ・フェロー。北海道大学を卒業後、山種証券(現SMBCフレンド証券)に入社。エクイティ・デリバティブ取引のディーラーとなり、その後、世界最大の穀物商社カーギルでの日本株運用部長、みずほ証券エクイティ部のトレーディング担当部長などを歴任。一時、ベンチャー企業の立ち上げに参画し、上場を果たした。さらに、アジア中心に海外勤務を経て現職。北大でもグローバル人材の育成を行っている。法政大学経済学修士、日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会正会員。著書に、「デイトレード入門」「株式先物入門」「FX入門」「初めての海外個人投資」(いずれも日本経済新聞出版社刊の日経文庫)など。
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