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医薬品(2017年2月)

バイオは国策テーマ「iPS細胞」ノーベル賞がきっかけ

東京証券取引所では上場した各企業を、基本的に最も売上高が大きい事業を基準に33業種に分類している。その中でも東証1部に上場している銘柄を業種ごとに算出した指数が「東証業種別株価指数」で、主に時価総額の大きい銘柄に左右されやすい。ここから業種ごとの動向を読み取れるため、株式市場全体を見るにあたっても重要な指数と言えよう。今回は「医薬品」に焦点を当てる。

「医薬品」とは

「医薬品」に分類される銘柄は全部で66銘柄、そのうち東証1部は39銘柄。主に人などの病気疾患に対し、治療、診断、予防の目的でつくられる薬品を生産する産業。動物用も対象内だが、現行の上場企業では人用の薬品の取り扱いがほとんど。医師からの処方のみで販売される医療用医薬品と、薬局で販売される一般用医薬品に分けられる。

時価総額トップは武田薬品

「医薬品」の時価総額トップは武田薬品工業(4502)。株価指数は2015年9月に米国ヒラリー・クリントン前国務長官の特殊医薬品市場における薬価の規制策に関する発言などから2500ポイントを割るも、ディフェンシブ(※~食料品~回参照)セクターとして見直しの目が向かったことで、急落前水準まですかさず切り返した。各社から特許取得などの材料が続出したこともあり、2016年上期も前年の医薬品関連人気が継続。しかし8月に小野薬品工業(4528)と米企業が共同開発していたガン免疫治療薬「オプジーボ」の臨床試験結果が振るわなかったことでマザーズ市場を中心にバイオベンチャーの地合いが悪化。また、11月にも厚生労働省の中医協(中央社会保険医療協議会)によるオプジーボの薬価引き下げを受け2300ポイント台まで下落した。足元では再度浮揚力を増しつつあり、2600ポイント程度まで回復を見せている。

“株価大化け”の可能性秘めるバイオ株

医薬品セクターが2000ポイント台で推移するまでの変貌を遂げたのには、やはり2015年の大化け銘柄となったバイオ医薬品開発企業のそーせい(4565・東マ)の存在が大きい。これを機に、再生医療製品を展開するJ・TEC(7774・JQ)、iPS細胞関連で6月に上場したヘリオス(4593・東マ)など新興市場のバイオ株に片っ端から物色の手が向かった。材料の浮上により株価が刺激されやすく、共同開発研究や製品化に向けた試験販売、特許取得などの取り組みに積極的な企業は将来的な業績拡大が期待され人気化する傾向がある。京都大学の山中教授がiPS細胞の作成でノーベル医学生理賞を受賞して以降、政府が「国策」として支援を行っていることも一段と注目を集めている要因。そのため「ノーベル賞」も相場材料となる。こうした再生医療分野は、法整備も含めて今後大きな市場への拡大が期待されており、2025年には国内市場規模3.8兆円にまで膨らむとも試算されている。

時価総額ランキング上位3位をピックアップ

武田薬品工業(4502)

長らく時価総額トップを張っていたアステラス製薬(4503)を抑え、昨年6月に逆転劇を演じた同社。ここにきての薬品株上昇をけん引している銘柄でもある。きっかけとなったのは、年初早々発表されたがん関連医薬品の研究開発、販売を行う米ARIAD社の買収。その後もがん治療における米Maverick社のT細胞郵送療法の基盤技術開発に関する提携や、米Ovid社との小児てんかん領域での共同開発・販売契約、米Exelixis社との新規がん治療薬の日本におけるライセンス契約、米PRA社との戦略的パートナーシップの拡大など、積極的な事業戦略が評価されている。足元では今3月期通期予想を上方修正するなど業績推移も良好。3.5%の高配当利回りともあり、3月末の配当権利取りまではしばらく関心が高まりそう。重点領域に位置付けている研究開発はオンコロジー、消化器系疾患、中枢神経系疾患、スペシャリティ循環器系疾患、ワクチン。

アステラス製薬(4503)

昨年12月にはがんに対する抗体医薬を開発するドイツのバイオ医薬品企業Ganymed社を買収し完全子会社化。後期開発段階の後退プログラムを獲得し、がん領域のパイプライン拡充を図るなど、同領域を重点的に強化中。円高や国内薬価改定の影響を受けるも、今期業績は増益基調を維持する見通し。主力のグローバル製品である前立腺がん治療剤の実質売り上げが引き続き伸長しているほか、米州、アジア・オセアニアではOAB治療剤が伸長。国内では消炎鎮痛剤、成人気管支ぜんそく治療剤、2型糖尿病治療剤も拡大している。無借金、自己資本比率7割超と良質な財務体質から長期保有の対象となりやすい。カナダの経済専門誌企業コーポレート・ナイツ社が選出した「世界でもっとも持続可能な100社」にも、堂々ランクインしている。

大塚ホールディングス(4578)

精神神経系医療用医薬品に強み。前期業績は減収減益となっているが、研究開発費投資前営業利益は再び成長軌道に乗っており、グローバル製品や採算の良い国内新薬が大きく伸長している。2017―18年に多数の臨床試験の終了を予定しており、中期目線では新製品の育成が一気に加速する見通し。グローバル展開も、販売国拡大に向けて取り組みを強化中だ。直近の注目材料はがん治療薬「キイトルーダ」の発売。小野薬品の「オプジーボ」の類似薬品で、肺がんと悪性黒色腫への適用が認められている。今後の承認次第では様々な種類のがんへの適用拡大も有力。米製薬大手MSDが発売したもので、国内展開に関してはMSDと大鵬薬品が共同販促する。大鵬薬品は大塚ホールディングスの主要事業会社。

おわりに

オバマケア撤廃や国内薬価改定の影響はあるものの、基本的に医薬品は高齢化社会が進む現代では必要不可欠とされ、比較的安定した産業ともとらえられる。また、旺盛な研究開発による技術革新で話題にもなりやすく、バイオ関連などはその最たる例だろう。ただ、バイオ関連は値動きの大きさが魅力の1つだが、上昇するときの勢いも大きい反面、下落に転じた時の反動も大きい点には注意が必要だ。

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