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日本郵政Gの「強み」と「弱み」【第4回】

日本郵政Gの「強み」と「弱み」【第4回】

持ち株会社の日本郵政(6178)と、傘下の「ゆうちょ銀行(7182)」「かんぽ生命(7181)」の郵政グループ3社。巨大企業グループだけにその「強み」と「弱み」のインパクトは大きい。

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規模、知名度、そして信頼感

規模、知名度、そして信頼感

「強み」に関しては、圧倒的な規模感、知名度、そして信頼性にあります。ちょうど、1990年代後半に“不倒神話”が崩壊する前の大手銀行を、さらに大規模化したような存在感とでも言えるでしょう。とはいえ、民営化される前の「官業としての公共サービス」と、株式を上場して成長や株主価値向上を目指す「民間企業の事業」とでは天と地ほどの違いがあります。

2006年に株式会社化されたといっても、100%国有の状況は変わらず、上場後も政府による3分の1超の日本郵政株式保有が義務付けられています。また、2012年の郵政民営化法改正で、ゆうちょ銀行、かんぽ生命株式の完全処分義務(2017年9月末期限)も廃止されました。

同じ金融業でも、国民から見れば、「暗黙の政府保証」が付いているようなもので、一般の民間企業と同じ土俵でビジネス展開するのでは、「官業による民業圧迫」との批判が付きまといます。

民業圧迫批判から制約も多い

民業圧迫批判から制約も多い

そうした懸念を背景に、民営化後も日本郵政グループの経営には、いくつかの“足カセ”がはめらています。これが、グループの「弱み」ということになります。

ゆうちょ銀行は、預金受け入れ額や貸出業務が厳しく制約されているため、預金で調達した資金は貸し付けに回せず、有価証券で運用しています。いわば巨大な投資信託のようなものです。かんぽ生命も、契約限度額や簡易保険以外の保険商品販売に制限があり、ともに経営の自由度が高いとはとても言えません。

ゆうちょ銀行の預け入れ限度額大幅引き上げに向けた動きも見られますが、競合企業の反対もあって、実現は容易ではなさそうです。

そして、公共性の観点によるユニバーサルサービス義務も、民間企業として見るなら、大きなコストアップ要因となっています。例えば、郵便局以外に民間金融機関のない市町村が約24ありますが、おいそれと「赤字解消のために閉鎖」とはいきません。別記「表」は郵便局数の推移です。

郵便局数の推移
年月 郵便局数 前年比
2005年3月末 24678局 ▲37局
2006年3月末 24631局 ▲47局
2007年3月末 24574局 ▲57局
2007年10月1日(民営化時) 24540局 -
2008年3月末 24540局 ▲34局
2009年3月末 24539局 ▲1局
2010年3月末 24531局 ▲8局
2011年3月末 24529局 ▲2局
2012年3月末 24514局 ▲15局
2012年10月1日(統合時) 24537局 -
2013年3月末 24525局 △11局
2014年3月末 24511局 ▲14局
2014年末 24490局 (▲21局)

公社時代の減少から民営化後は下げ止まりに転じています。14年3月期の「ユニバーサルサービス維持費用」は、1873億円とも試算されています。

もちろん、ドイツや英国など諸外国の郵政事業にもこうした制約はあり、それを乗り越えて成長をたどる企業が多いようですが、12年の法改正によって、ユニバーサルサービスの範囲を金融2社にも広げたのは、世界でも珍しいようです。

おわりに

株式上場を機にこれらの制約の緩和も求められます。もっとも、全国津々浦々に張り巡らせた郵便局網は、もちろんマイナス面ばかりではありません。地銀などほかの民間金融機関との連携など新たなビジネス展開を行う上での武器にもなりえます。以前に大手証券の発行したレポートでは、今回は上場しない日本郵便を“眠れる獅子”に例え、「ネットワークの活用に成長の余地あり」としていました。いかにして「弱み」を「強み」に転化できるか。民間企業としての創意工夫が問われていると言えるでしょう。次回は、NTT、JRなど他の民営化企業の系譜を見てみます。

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