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株式投資のものさし

株式投資のものさし

はじめて株式を買おうとするとき、まず問題になるのは、「何を買えばよいのか?」でしょう。そこで、インターネットで調べてみる、あるいは雑誌を買って銘柄探しを始めることになります。あるいは、証券会社のレポートを読み、証券会社の担当者に銘柄をたずね、さらに、株式投資の先輩に相談する人もいるでしょう。

このような努力は、無意味ではありません。暗中模索だとしても、知識は次第に蓄えられるからです。しかし、注意していただきたいのは、このような形で見つけた銘柄に、いきなり投資するのは問題があります。このままでは、他人の意見をそのまま受け入れているだけだからです。自分でしっかりと投資対象の中身を吟味しなければ、投資の力はつきません。

また、他人任せは、大きなリスクを負ってしまうことが少なくありません。投資では、自分自身の投資方針、そして自分自身の投資基準をしっかりと作ることが大事です。

ウォーレン・バフェット氏の考え方

その際に参考にしたいのは、株式投資により世界有数の富豪となったウォーレン・バフェット氏の考え方です。バフェット氏の研究者によれば、彼の投資哲学は、

  1. 長期投資
  2. 企業価値を重視
  3. 集中投資

に集約されます。このうち、①長期投資と③集中投資は、当てはまる人と当てはまらない人に分かれるのですが、②起業価値を重視ということについては、どの投資家にとっても異論がないでしょう。

そこで、まず「企業価値の重視」による投資に注目してみましょう。実は、バフェットは、この件について、彼の大学の先生だったベンジャミン・グレアムの考え方を踏襲しています。
グレアムの基本的な考え方は、企業価値を把握し、それよりも安い株式に投資するべきだというものです。1万円の価値がある企業の株式が、市場において5千円で取引されているのなら、その株式に投資するべきだとします。

企業価値をどう測るが問題

企業価値をどう測るが問題

当たり前のようですが、難しい問題があります。一つは、①企業価値をどう測るのかという問題、そして②株価が本当に企業価値を反映するのかという問題です。このうち、②の問題については、グラハムは、「時間がかかるとしても、株価はかならず真の価値に近づく」と考えていました。理論というよりも信念です。チャールズ・ダウ(ダウ指数の創設者)の理論である、「ダウ平均はすべての事象を織り込む」に相通じるものがあります。

では、①問題である株式の価値はどのようにして評価したらよいのでしょうか。そのヒントをくれるのが、「理論株価」という考え方です。通常、私たちが目にする株価は、取引所での売買を通じて決まった株価で、インターネットや新聞で確認することができます。これに対して、理論株価は、文字通り理論的に導き出された株価のモデル(ひな形)です。そのモデルはたくさんありますが、最もシンプルなものは、「株式価値は、投資家(株主)が将来受け取るキャッシュフロー(利益)の現在価値」と定義します。現在から将来にかけて会社が稼ぎ出す利益(株主の利益)を、いまの価格で評価したものが理論株価です。

この考え方は、次の式で表すことができます。
理論株価=一株当たり利益/金利
企業が毎年稼ぐ利益(一株当たり利益)を、金利で割ったものが株価になるということです。この式によれば、たとえば毎年100円の一株当り利益を稼ぐ企業があり、金利が1%であれば、
10000円=100円/(1%)
の計算で、理論株価は10,000円になります(なお、分母の1%は0.01として計算)。

もっとも、このモデルは企業が毎年同じ利益(この例では100円)を稼ぎ続けることを前提としています。すなわち、企業利益の増減など、現実に起こりがちなことさえ考慮されていません。ただ、このモデルは、私たちに、株式の価値は、将来にわたる企業利益と、金利が大きく影響することを教えてくれます。企業利益が拡大すれば(式の分子が大きくなれば)株価は高くなり、また金利が高くなれば(式の分母が大きくなれば)株価は下落するということです。利益と金利が、株価を決める大きな要素なのです。

一株当たり利益

一株当たり利益

株価を評価するには、最初に企業が稼ぎ出す利益をしっかりと見極める必要があります。その際に、投資の観点からは、一株当たり利益に注目します。企業の当期純利益を発行済み株式数で割ったもので、EPS(EarningPerShare)とも略されます。

EPSは投資家にとって最も重要な要素なので、様々な角度から分析がなされます。EPSの大きさは、ストレートに株価を決めるちからがあるからです。さらに、株主の投資が報われているのか、あるいはその株式は投資すべきかどうかを図るためにもEPSが使われます。とりわけ、EPSをROEやPERという指標に組み込むことで、投資の成果や株式の価値を知る具体的な手掛かりが得られます。

ROEは” Return On Equity”の略であり、「株主資本利益率(自己資本利益率)」と言われます。また、PERは、”Price Earning Ratio”の略であり、「株価収益率」と言われます。今回のコラムでは、まずPERについて、詳しく見ておきます。

PERは、次の式で求めます。
            PER=株価/一株当り利益
 PERは、株価が、一株当り利益の何倍になっているかという指標です。たとえば、一株当たり利益が100円の会社の株価が1000円であれば、は、次の通り10(倍)です。
10倍=1000円/100円

このPERは、どのように使うのか。一般的には次のように説明されます。すなわち、PERが10倍であれば、株価は一株当り利益の10倍です。つまり利益を10年積み上げれば、投資資金に追いつく。言い換えれば、その株式を買ったら、投資資金を回収するには10年かかるということです。すなわち、PERが10倍ならば、今の株価は、10年先までの利益を買っているんだという見方です。

その上で、一般に、PERは、株価の割高・割安を示す指標として使われます。同じ業種の株式ならば、PERが5倍の株式は、PERが30倍の株式よりも、割安に放置されていると見るのです。PERが5倍というのは、投資家がその企業の実力を十分に評価していないということ。逆に、PERが30倍というのは、投資家がその企業について楽観的に見過ぎていると考えます。したがって、ほかの条件が同じなら、PERが30倍の株式よりも5倍の株式の方が魅力的ということになります。

PERが全てではない

PERが全てではない

ところが、現実の市場では、同じ業種の中でも、高いPER株式の価格が一段と上昇する一方、低いPER株式の価格がそれほど上がらないといった現象が、しばしば見受けられます。これはどう考えたらよいのか?

私見ですが、PERは次のようにも考えられるのではないでしょうか。PERが10倍の株式に投資するということは、投資家が今後10年間にわたり、いまの一株当り利益が継続すると見込んでいる結果だと解釈してみます。そうすると、PERが5倍の株式は、投資家が、今の一株当り利益は5年しか続かないとみているということになります。逆にPER が30倍ならば、投資家はその企業の一株当り利益が30年間続くと期待して買っていることになります。すなわち、PERが5倍の株式よりも、PERが30倍の株式の方が、投資家には魅力的に映っているということになります。だとしたら、PERが5倍の株式よりも、PERが30倍の株式が活発に買われても不思議ではありません。

とりわけ、長い期間の利益を期待しているのであれば、足もとの利益の変化に対して、株価は敏感に反応するはずです。PERが30倍の銘柄であれば、当期の利益の増加がわずかでも、30年分を積み上げれば大きな変化になるからです。逆に、PERが5倍の株式は5年分の利益を見込んでいるにすぎないとみれば、足もとのわずかな利益の増加は、30年分の利益の増加に比べてわずかです。したがって、足もとで同じだけ利益が増える見込みだったら、PERが5倍の株式よりも、PERが30倍の株式の方が価格の動きが大きくなるとみることができます。

相場のリスク

相場のリスク

ただし、同時にリスクも考える必要があります。PERが30倍ということは、30年分の利益を織り込んでいるということでした。しかし、30年先まで見通すことは、簡単ではありません。遠い将来に何が起こるかは、誰にもわからないからです。一方、PERが5倍ということは5年先までの利益だけを見込んでいることになります。一般に、5年先までの利益の見通しは、30年先までの利益の見通しよりも、実現の可能性が高いでしょう。すなわち、PERが5倍の株式の方が、30倍の株式よりも、期待が裏切られるリスクが小さいと言えそうです。

相場は、ハイリスク・ハイリターンかローリスク・ローリターンです。高いリスクをとれば、大きな利益が得られるかもしれませんが、逆に大きな損失を被ることもあります。そこで、損失を小さくしようとしたならば、利益も小さくなります。リターン(利益)は、負担するリスク(損失)の大きさに比例するのです。したがって、リスクを大きく取りたくないというのであれば、PERが5倍の企業に投資するのが良いことになります。一方、リスクは大きいものの、より大きな利益を得たいという人はPERが30倍の株式を買うことも考えられます。

このような解釈によれば、リターン(利益)を得るために、リスクをどこまでとることができるかという指標として、PERを利用できることになります。PERは、株価が割高か割安かは示す指標だけではないということです。

この私見は、日経平均株価のPERの解釈にも応用できます。PERが割高・割安を示す指標という一般的な見方によれば、PERが13倍の時は割安だから買いの時期であり、PERが20倍の時は割高だから売りの時期であるということになります。

PERは期待とリスクの関係

>PERは期待とリスクの関係

これに対して、PERが期待とリスクの関係を示しているという解釈からは、13倍のときよりも20倍の時の方が、リスクが高くなったものの、その分だけ高いリターンが期待できる時期に来たということになります。したがって、PERが20倍で売るかどうかは、投資家の姿勢によりけりということになります。リスクを取りたくない人は、投資を手控えるべきでしょう。しかし、リスクをある程度取ることができる人なら、手控える必要はありません。むしろ、高いリターンが期待できる場面として、注目する局面でしょう。

PERが13倍など、株価が低迷しているときには、興味深い事実があります。それは、投資家の多くが、株式はリスクが高いとして取引を敬遠することです。ですが、これまで述べたように、その時はPERが極端に低い、すなわちリスクが歴史的に低いときだと解釈すれば、リスクを大きく取りたくない人こそ、株式投資を検討すべき時だったのではないでしょうか。

むさし証券チーフストラテジスト、北海道大学新渡戸カレッジ・フェロー。北海道大学を卒業後、山種証券(現SMBCフレンド証券)に入社。エクイティ・デリバティブ取引のディーラーとなり、その後、世界最大の穀物商社カーギルでの日本株運用部長、みずほ証券エクイティ部のトレーディング担当部長などを歴任。一時、ベンチャー企業の立ち上げに参画し、上場を果たした。さらに、アジア中心に海外勤務を経て現職。北大でもグローバル人材の育成を行っている。法政大学経済学修士、日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会正会員。著書に、「デイトレード入門」「株式先物入門」「FX入門」「初めての海外個人投資」(いずれも日本経済新聞出版社刊の日経文庫)など。
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