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パルプ・紙(2017年1月)

東京証券取引所では上場した各企業を、基本的に最も売上高が大きい事業を基準に33業種に分類している。その中でも東証1部に上場している銘柄を業種ごとに算出した指数が「東証業種別株価指数」で、主に時価総額の大きい銘柄に左右されやすい。ここから業種ごとの動向を読み取れるため、株式市場全体を見るにあたっても重要な指数と言えよう。今回は「パルプ・紙」に焦点を当てる。

「パルプ・紙」とは?

「パルプ・紙」に分類される銘柄は全部で26銘柄、そのうち東証1部は12銘柄。主に木材や草などから製紙材料を生成するパルプ産業と、そこから製紙を行う製紙産業で構成される。上場企業では梱包・包装資材や不織布を手掛ける企業が多く見られる。原油安、電力料金安のメリットにも敏感に反応しやすい。

足元の株価指数動向

パルプ・紙の時価総額トップは王子ホールディングス(3861)。株価指数は日本製紙(3863)と特種東海製紙(3708)の提携から業界内の再編思惑が底流したことに加え、業界トップの王子HDの上期大幅増益を受け、2015年10月に530ポイントまで急上昇。その後、16年1月の392ポイントまで深押しして以降は430ポイント前後でのもみ合いが続いていたが、その後は生前退位にからむ「新元号」をにらんだ物色が印刷株に向かったことで当セクターにも思惑が波及。足元では480ポイント程度までの回復を遂げている。

循環型産業、新素材で花開く

厳しい経営環境が続いていた同セクターも、近年ではようやく日の目を見ることとなってきた。国内の板紙・段ボールの販売拡大、また中国の一人っ子政策緩和や新興国を中心とした衛生用紙、紙おむつ需要の増加で各社業績は改善傾向にある。また既存事業を柱に将来的な成長を見据え、廃材利用や物流ノウハウを生かしたバイオマス発電事業、新素材であるCNF(セルロースナノファイバー)の実用化など新規事業の展開に乗り出している点も特徴的。特に軽量、高強度、低熱膨張といった優れた特性を有するCNFは次世代の大型産業資材として注目を集めており、繊維業界(※前項参考)におけるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)同様、輸送機用構造部材や人工血管などの医療用途、二次電池セパレーターへの応用などが期待されており、現在は各社が量産体制の構築を進めている。国内では星光PMC(4963)の大株主である日本製紙(3863)が幹事を務める産業技術総合研究所コンソーシアム「ナノセルロースフォーラム」が、実用化に向けて情報共有、意見交換、研究開発連携などを率先して進めている。

時価総額ランキング上位3位をピックアップ

王子ホールディングス(3861)

CNFの画期的な製法を確立し、量産化に向けて昨年12月には王子製紙富岡工場内に実証生産設備を完工。これまでは製造能力の限界から使用用途やサンプル量を制限せざるを得なかったが、当設備の稼働により今年1月から本格的なCNFサンプル提供が開始されている。4月には従来の天然増粘剤に比べ10―100倍の粘度を誇り、透明度も高いCNF増粘剤「アウロ・ヴィスコ」を販売予定。今後は独自製法が持つ高い生産効率および高品質の実証も併せて進め、その他用途にも幅広く応用展開していくことを目指す。なお、昨年10月にはCNFの透明連続シートの生産設備も導入、こちらも17年度後半に稼働を予定している。

日本製紙(3863)

CNF製造技術開発には07年から本格的に着手しており、13年に山口県岩国市に年間生産能力30㌧の実証設備を設置。昨年には世界で初めて機能性CNFを使用したヘルスケア商品を実用化した。昨年5月に宮城県石巻市に設備能力年間500㌧の世界最大級のCNF量産設備を建設することを発表しており、17年4月の稼働開始を予定。また島根県江津市に食品、化粧品向けに年間生産量30㌧(将来的には同100㌧)のCNF量産設備の設置を計画、設備の完成は17年9月を予定する。さらに富士工場にもCNF強化樹脂の実用化推進のため実証生産設備を新たに設置するとしており、17年6月の稼働を予定している。このほかタイにおける木質バイオマス燃料生産実証設備の設置を発表するなど新規事業に積極的。事業化実現の際は年産8万㌧規模の商業生産設備を設置することを想定している。

大王製紙(3880)

CNF関連ではあまり名前が挙がらない同社だが、昨年4月に三島工場内にパイロットプラントを設置し稼働。省エネルギー型CNF製造プロセス研究開発を加速させ早期の事業化を図る。 現在はサンプル供給量や供給先を増やし様々な用途開発を進めている段階だが、量産化時には経済産業省のロードマップ目標である製造コスト1000円以下になる見込み。また複合材料の製造に適したドライパウダーCNF供給に向け今春に乾燥設備の設置、20年には商業プラントの建設を計画している。これまでにCNFとパルプ繊維を複合化したCNF高配合の成形体や、CNFを利用した多孔質の人工骨補てん材の開発に成功しており、製品化が期待される。

おわりに

主に自動車産業などへの応用が期待されているCNF。昨年12月には自動車分野におけるCNF軽量部品の導入実証や性能評価・検証を行う環境省のプロジェクト「NCV(Nano Cellulose Vehicle)」も始動しており、上場企業ではトヨタ紡織(3116)やデンソー(6902)、ダイキョーニシカワ(4246)などが参画している。20年までにCNF強化樹脂を導入するとしており、この先相場テーマの再燃が読まれる。

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